第140話 巨人の砦

 今日は巨人の砦攻略。

 砦は小高い丘にある。

 近づいたら、矢や石が降って来るに違いない。

 もっと近づいたら煮えたぎった油とかかな。

 うん、俺にはどうってことはないが、弥衣やえ達にはきつそうだ。

 バリスタでどれだけ通用するか。


【砦ね。ここを迂回してパスするってことはないのか】

【それじゃ面白くないだろ】

【いますぐ侵略を辞めるのです】

【ちょっとまえのスタンピードは巨人被害が多かったぞ。巨人のダンジョンの討伐依頼をやめた弊害じゃないのか】

【巨人を守る会はスタンピードの時に何してたんだ】

【そうだ。巨人を説得してなだめろよ】

【いま急ピッチで言語を解析しているところです。こんにちはは分かりました。クイリリラです】

【そんだけ分かっていれば突撃しろよ。あとはボディランゲージで何とかなるだろう】

【いや。平和に行けるなら平和に行きたい】

【ちょっと待ってみても良いんじゃないか】



 酸を塗れば、砦の壁ぐらいは貫通するだろうけど、撃ち合いは苦戦必至だ。

 弥衣やえ達が取った行動は、植物を身に着けて、なんと言ったかな。

 ええとギリギリスーツだったな。

 おおそれだ。


 それを身に着けてじわじわと接近してる。

 こんなので誤魔化されるものなのか。

 誤魔化せるものらしい。

 俺達は砦の壁に取り付いた。


【おお、ほふく前進】

【基本だよ】

【陣地攻略の基本】


 で酸を掛けて壁に穴を開けて中に侵入。


【入ったな】

【もう中に入れば勝ったも同然】


 通路の角から巨人が出て来たので、綺羅々きららが一閃。

 巨人の腹を斬り裂いた。


「がう」


 背後から現れた巨人にシロガネが噛みつく。

 そしてデスロール。

 肉が千切られ巨人は大量に出血した。


 弥衣やえとキナコとモチが酸の水鉄砲で止めを刺す。

 通路は巨人用なので、戦闘するには十分な広さがある。


 うん、俺の出番はなさそうだ。


【例によっておっさん何もしない】

【逃げないで砦に入った勇気を認めてやろう】

【そうだな。俺なら入る勇気はない】

【シロガネがいれば平気だ】


 通路を辿って食堂に出た。

 巨人が何人もいる。

 巨人達は俺達を見つけると、手に剣を持って斬りかかってきた。


【うん、ピンチだな】

【入口の所で迎え撃て】

【さあ、どうなる】


 弥衣やえはアイテム鞄から、でかいコンクリート瓦礫を出してバリケードにした。

 そしてバリスタも出す。

 砦の中に俺達の砦を作るのか。

 頭良いな。


【体格差を逆に取った戦術だな】

【でかい肉食獣が小さい動物の巣穴に入れないのと一緒だ】

【まあそうなるよな。地の利を活かさないと】


 後は普通の巨人討伐だ。


 砦は頑丈でも侵入されると弱かったみたいだ。


「最初のギリギリスーツが役に立たなかったら」


 俺は聞いてみた。


「ギリースーツね。そんなの霧か煙を起こすわよ。金さえあればそういう物量作戦も可能よ。アイテム鞄があるから運搬は大丈夫だし」


 霧か煙を起こす。

 なるほどな。

 酸素ボンベを背負えば行動可能だしな。

 プランBも考えているんだな。

 俺とは違って賢い。


【うん、ヤエちゃんに任せておけば大丈夫】

【砦は強敵ではなかった】

【CGのおっさんなら連打で壊すんだろうな。見たかった】


 ちょっと見せてやるか。

 砦の中の巨人を粗方殺して、俺達は外に出た。


「ここからはCG。幻想の世界」


 そう言うと俺は、アダマン鉄パイプを構えて、砦に連打。

 砦が侵食されるように壊れて行く。

 そして、最後には平地になった。


【久しぶりのCG。迫力だった】

【建物が壊れる映像ってなんか楽しいな】

【ビル解体映像は俺も好き。地震とかで壊れるのはノーサンキューだけどな】


「ここからは実写」


【あれっ、砦が壊れたままだぞ】

【ダイナマイト使ったんだろ】

【あれは免許が要るぞ】

【ヤエちゃんならやってくれる】

【だな】


 砦の次は何かいな。

 双眼鏡で見ると、ゴザが広げられて、品物が並べられている。


 ああ、市場か。

 これは略奪のし甲斐があるな。


 市場の向こうには街が見える。

 街の向こうはダンジョンの壁だ。

 となると街にボスがいるんだろうな。

 砦を潰したのは正解だったかもな。

 市場で大暴れすると砦と街で挟み撃ちだ。

 馬鹿な俺にも分かる。


 今日の討伐はこんなので良いだろう。

 ダンジョンから出ると、巨人を守る会が、『クイリリラ』巨人と仲良くなれる魔法の言葉とか言っている。

 本当にそうか。

 今度試してみよう。

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