第70話 殺害予告
9階層は草原だった。
遠くに天幕が張られている。
その数から推測するに1万ほどのゴブリンがいるようだ。
【これは無理だろ】
【今度こそ死んだな】
【同じ台詞を何度も聞いたぞ。それがおっさんの勝ちフラグになっているんじゃね】
【言ったところで結果は変わらないさ。強い方が勝つ】
「ここは俺がひとりやる」
「勝算はあるの?」
「囲まれても平気さ。俺にはこれがある」
そう言ってアダマンタイト鉄パイプを叩いた。
【おー、恰好つけている】
【おっさん、ダサい】
【まあ、見ていようじゃないか】
「一騎駆け、参上つかまつる!」
【足はええ】
【おー、突っ込んだぞ】
俺は向かって来るゴブリンを叩いた。
速くだ。
もっと速く振るんだ。
鉄パイプの振りに音がついた。
パンという音だ。
その音がするとゴブリンが触れてないのにふっとぶ。
【音速超えたのか】
【まさかな。それはさすがに信じられない】
【いや超えているかもな。鉄パイプから炎が見える】
「ヒャッハー」
振るう鉄パイプが炎をまとった。
何が起きているのかわからない。
分かるのは、ゴブリンがミンチになっていくだけだ。
【くそう、気持ちよさげにやりやがって】
【誰か警察関係者いないのか。捜査状況を説明しろ】
【弁護士です。起訴はされません】
【ガセだ】
一直線に陣奥へ踏み込む。
豪華な鎧を着けた3メートルはあるゴブリンがいる。
俺はそのゴブリンに炎の鉄パイプを食らわせた。
くの字になって飛んで行くゴブリン。
そして、周りのゴブリンが散り始めた。
あれが指揮を執っていたようだな。
【終わったな。やっぱりゴブリンはゴブリンか】
【おっさん、ちょっと格好良いかもと思った】
【恰好よくなんてない。ただの暴力男】
【悪に惚れるやつがいるんだよ。厄介なことにな】
ゴブリンは敗走したようだ。
2割ぐらいしか、ゴブリンをやってない気がする。
掛かって来いと言いたいが、逃げて行く奴を追うほど暇じゃない。
天幕を鉄パイプで吹き飛ばすと、天幕で隠されたボス部屋の扉が露わになった。
しばらく待つと
さあ、ボスだ。
ボスは3メートルはあるゴブリンがでかい象ほどの猪に乗っていた。
【こんなのじゃおっさんには勝てない】
【ゴブリン本気出せよ。おっさんのダンジョンのゴブリンはもっと骨があったぞ】
「ふふっ、2手だ。2手で倒す」
【絶対だな。倒せなかったら、1億円だ】
「いいだろ。行くぞ。そりゃ、そりゃ」
まず、象ほどの猪の脳天を唐竹割にかち割って、ジャンプ。
乗っているゴブリンの頭を薙いだ。
首が千切れそうなほど変形。
どうやら首の骨が折れたようだ。
「行ったろ。2手だって」
【早すぎて見えない】
【イカサマに決まっている】
「スロー再生でもしたらいい」
【お前を許さない。殺してやる】
【おー、殺害予告】
【訴えられるぞ】
【お前のせいで家族が離れ離れになった】
【殴られた子供が書き込んでいるのか】
殺害予告した奴が分かった。
両親が離婚したのかな。
「お前のしたことは許されない。ひとひとり自殺に追い込むところだったんだぞ」
【話が見えない】
【おっさんは誰なのか分かっているらしい】
【俺が悪いってのか。殺してやる】
「いいぜ掛かって来い」
ダンジョンからでて来るかなと思って、入口にいると、子供がカッターナイフを手に突撃してきた。
俺は優しく手に手刀を落とした。
カッターナイフが手から落ちる。
「くそう、
「ストレスを虐めで解消していたんだな。それが間違いだ」
「うわーん」
10分ぐらい殴って落ち着いた。
「俺が両親の離婚を元の鞘に納めてやる。だが私立に通う
「そうしたら離婚が無くなるのか」
職場の人間関係が上手くいってない。
母親の問題は酒にはけ口を求めていることだ。
だから喧嘩になる。
父親の就職先を紹介してやろう。
ダンジョンで働かせる。
母親もダンジョンで働かせる。
そして、カウンセラーだったっけあれを紹介してやる。
カウンセラー万能だと思っている。
殺し屋の夫婦もそれで上手くいったという映画を見たからだ。
「ああなくなるぜ。綺麗さっぱりな」
弁護士とコボルトとケットシー達が上手い事やってくれるはずだ。
彼らの癒しパワーは凄いからな。
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