第78話 シロガネ活躍

 8階層にやってきた。

 8階層は深い森。

 風切り音がするので前方を見ると蔦にぶら下がってオークが移動してた。


「何だよこれ」


【ターザンオーク】

【対空装備必須だな】


 相手のオークは槍を何本も背中に括り付けている。

 オークの身長は高いから、人間が使う投げ槍でも子供サイズに見える。


「お~らお~ら~」


 奇妙な掛け声をしてターザンオークが槍を振りかぶって投げてきた。

 俺は鉄パイプで投げ槍を薙ぎ払った。


【おっさんの防御は平気と】


 弥衣やえ達はボウガンを撃つが当たらないので、マシンボウガンに切り換えた。

 スパスパスパっと矢が発射される。

 弧を描いて移動するターザンオークには当たらない。

 シロガネが焦れた。


「ワオン」


 シロガネは見てろよとばかりに走って行き、樹を使って三角飛び、ターザンオークに食らいついた。


【あー、シロガネは反則だ】

【三角飛びされたら、樹がある範囲はシロガネの方が機動力がある】

【蔦にぶら下がっているとある程度軌道は読めるからな】


「よしよし、よくやった」


 口周りを真っ赤に染めたシロガネを褒める。

 ペロペロは勘弁な。


「そろそろ、慣れてきたかも」


 弥衣やえ達のマシンボウガンも当たり始めた。

 だよね。


【所詮、蔦にぶら下がったオークだからな】

【まあ、ボウガンの敵じゃない】

【連射されたら当たるよな】

【シロガネに全て任せてもいいぐらいだ】


「どっせい」


 俺は樹の根元に蹴りを入れた。

 カブトムシでもいないかと思ったからだ。

 ぶっちゃけ暇だったからな。


 おー、オークが落ちてきたよ。


【虫みたいに落ちて来るの草】

【カブトムシかよ】


「もくろみ成功。結果オーライ」


【もくろみじゃないじゃん。結果オーライって言ってるし】


「細かいことは気にすんな」


【やることがないからって遊んでるな】


「見てるだけというのは暇なんだよ」


【あれっ、あそこボス部屋の扉じゃね】


「おう、本当だ。このフィールド以外に狭いな」


 ボスはブーメランオークだった。

 オークの手が素早く動き、百ものブーメランが色んな方向から俺達を襲う。


「わふ」

「よし、取って来い。全部だぞ」


 シロガネがブーメランを全てキャッチ。

 俺にはブーメランオークが涙目をしているように見えた。


【これは悲しいな】

【全部キャッチされたらたまらない】


「シロガネ、やっていいぞ」


 シロガネが、ブーメランオークに食いついた。


【あっけない終わりだ】

【ここのボスのブーメランは対策が難しいんじゃなかったか】

【キャッチされて終わりだものな】

【おっさんなら鉄パイプで全て叩き落としてた】

【そうだな】


 9階層は砂漠。

 砂の中に隠れているという落ちかな。

 どうしよう。


「わふん」


 シロガネが砂の中からオークを引きずり出した。

 シロガネの鼻を誤魔化せないからな。


【やっぱりそういう落ちか】

【犬系の匂いを嗅ぐ能力は馬鹿にできない。アタッシェケースの中の麻薬すら嗅ぎ当てる】

【だよな】


 シロガネがくんくん嗅ぎまわって前足で砂を叩く。

 弥衣やえ達がボウガンを放つと当たったのか砂が動いた。

 シロガネが死んだオークを掘り出す。


 連携ができているようで何より。


【狩りのお供は犬に限る。猫じゃこうはいかない】

【猫は孤独なハンターなんだよ。ネズミ捕りの名人だ】

【モチとキナコは嗅ぎ分けられないのか】


「キナコ、モチ、隠れている場所が分かるんじゃないか」

「近づく時は忍び足にゃ。でもそれをやっていると、シロガネに先を越されてしまうにゃ」

「拙者もわかるのですが、シロガネ殿の方が早くてですわん」


「一杯敵は隠れているだろうから、競争したらいい」


 何だか潮干狩りみたいな雰囲気になった。

 熊手の代わりにボウガンだけど。

 貝の代わりにオークなのは言うまでもない。


 ボス部屋まで誰も攻撃を食らわずに辿り着けた。

 ボスはオークファラオだった。

 呪いを掛けてくるらしいが、解呪スキルもあるし、第一に攻撃範囲に近づく必要がない。

 ボウガンで簡単に仕留められた。


【サクっといったな】

【呪い強いんだけどね】

【デバフと変わらんだろ。解呪できるし】


「お疲れ」


【おつカレー】

【カレーお替り】

【俺もお替り】


 このダンジョンは弥衣やえ達にちょうどいいのかも知れない。

 シロガネは少し反則だけども。

 下層になったらたぶん手こずるさ。

 その時は俺の出番だ。

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