第191話 罰ゲーム

「好きです。付き合って下さい」


 名前も知らない女生徒からコクられた。


【唐突に告白イベントか】

【良いんじゃね。18禁展開希望】

【会って3秒でセックルはAVだけの話】

【暇なおっさん達は喜んでいるぞ】

【俺エキストラのひとりを特定した。声で分かった間違いない。思わずニヤニヤしちまったよ】

【おう、中の人のひとりか】

【素人俳優の底辺おっさんを除いて、全員が俳優なんだな】

【そんなことは分かっている】


「じゃあ友達から。ええと名前は」

「そうね友達から。尾久おぐよ」


 さっそく放課後デートとなった。

 お洒落なデートスポットは知っているけど大人向けだ。

 だから映画館をチョイスした。


「中学生、二人で2000円です」


 彼女は一向に財布を出さない。

 俺は男が払うべきというタイプなのかなと、2000円を払った。

 ポップコーンとコーラの代金も俺が払った。


【貢ぐ君にされてるぞ】

【デートは男が払うべし】

【底辺おっさんにとってこんなのはした金だろう】

【俺は絶対にワリカンだな】


 映画が始まった。


【映画の映像と音声を消すのをやめろ】

【著作権違反はできないからな】

【真っ黒なスクリーンと無音って、修行じゃないんだから】

【キスしろ】


 映画がつまらないので彼女を観察する。

 ポップコーンを食べて普通に映画に見入っている。

 好きな映画だったのかな。

 映画が終わり。


「ノルマ終了、ごめんね。罰ゲームだったの。あなたなんて全然好きじゃないわ」


 映画が終わったらそう言われた。


【振られている】

【底辺おっさんはヤエちゃんがいるから】

【ハーレム物は少しモヤモヤする】

十条じゅうじょうは?】

【おっさんが中学生と付き合ったら犯罪だぞ】


「うん、そう。お疲れ」

「えっ、ちょっとショック。ああ、指扇さしおうぎさんがいるものね。どんな関係」

「一緒に育った。血のつながらない兄妹みたいなものかな」


 設定ではそうなっている。


【女子大生の彼女ほしい】

【血のつながらない兄妹で恋人なんてのは、創作物の中だけだ】

【だな】

【現実は厳しい】


「恋人なの」

「うんまあ」

指扇さしおうぎさんと比べられたら仕方ないのかもね。指扇さしおうぎさんてダメンズウォーカーだったのね」

「そうかもな」


【底辺おっさんはダメンズではないぞ。金は持っている】

【王様並みに家来もな】

【見た目はダメンズ、実際は富豪】

【小説にありがちだ】

【まあ富豪は変人が多い】

【それは言える】


「じゃあね。指扇さしおうぎさんと仲睦まじく」

「ああ、また罰ゲームになら付き合うよ」


 遅れて部室に入った。


「お前、振られたんだってな」


【罰ゲームのことがばれている】

【でも良い展開だ。青春物にありがちだ】

【ここから自殺未遂とかストーカーに変貌とか、そういう展開が良いな】

【タークなのは青春物にはそぐわない】


「うん、振られた」

「彼女ができたら、連れて来いよ。みんなで仲良くやろうぜ」


【18禁展開か】

【最近の中学生は進んでる】

【ダンジョンができてから、少子化に歯止めが掛ったってな。生命の危機がセックスを助長させるらしい】

【ほうなるほど】


「その時は」


 弥衣やえを連れて来たら、こいつらボコボコにされるな。

 そういう展開も面白いが、やっぱり俺がボコボコにしたい。


【ヤエちゃんは淫乱?】

【たぶん姐さんの誕生だな】

【そういう展開か】


「良い所に連れてってやる。その代わりお前がお金を払うんだぞ」


 怪しい飲み屋ならノーサンキュー。

 どうやって断ろう。


「年齢制限があるような場所には行けないんだ。出入り禁止なもので」

「行ったことがあるような口ぶりだな」

「じゃあ、試しに行ってみる」


 やっぱりだ。

 キャバクラに連れて来られた。


「ええと、底辺おっさんは出入り禁止です」


 黒服にそう言われた。


【出入り禁止なんだ】

【世直しとか言ってやらかしたからな】

【ボッタクリバー、殲滅とかやったから】

【ここはボッタクリじゃないだろう】

【中学生に酒を飲ますのかと因縁を付けそう】

【あり得る】


埼京さいきょうお前何をしたんだ」

「おじさんが全てやったんだよ。ボッタクリや酒の詰め替えなんかの店もボコボコにしたから」


【嫌な客だ】

【姿が変わっても要注意人物なんだな】

【店側に情報が行き渡っているらしい】


「おじさんというと指扇さしおうぎの父親か」

「そんな感じ」

「出入り禁止じゃ仕方ないな」


 そうそう、面白動画撮りたいんだけどね。

 中学生とかに酒を提供なんてのを摘発したいが、もう無理か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る