第108話 マグネットトレント

「おっと新手のモンスターか」


 砂漠の中に黒い木が立っている。

 幹も葉も全て黒い。

 こんなの何かあると思わない方が不自然だ。


「たぶんトレントの亜種だな」


【間違ってたら赤っ恥だな】

【まあトレントだろう】

【トレントは固定砲台って事だが】


 いきなりトレントから砂鉄の砲弾が飛んできた。

 俺はアダマン鉄パイプ一閃。

 砲弾を粉々にした。


【早すぎて見えん】

【食らったのか。カメラの視点は地べたじゃない。おっさんは死んでないな】

【迎撃したのか】

【だが、これは期待できる】


 命名マグネットトレントから砲弾が雨のように発射される。

 弥衣やえ達にちらりと目をやると、魔鉄の盾に隠れてた。

 シロガネは機敏にステップを踏み避けている。


 俺はアダマン鉄パイプを縦横無尽に振り迎撃する。


【砂埃で何も見えん】

【視点は倒れてない。まだおっさんは生きてる】

【ピンチなのか。今度こそにっくきおっさんが死ぬのか】


「ふっ、レールガン」


 そっちが遠距離攻撃ならこっちも遠距離攻撃だ。

 魔法を駆使した電磁砲が鉄の砲弾を撃ち出す。


 当たったのか。

 撃ちまくればそのうち当たるだろう。


 そして砂埃が晴れた。

 マグネットトレントの幹には大穴が空いている。

 なんだ楽勝だ。


【レールガンって何だよ】

【過去動画見て来い】

【今回も駄目だったか。トレントの防御が弱いのがいけない】

【おっさんの鉄パイプは万能か】

【次に期待だ】

【お前ら暇だな。無駄なのに】

【無駄じゃない。祈れば。いいや呪えば、きっと願いは叶う】


 さあ、久しぶりに、レールガン撃ちまくるぞ。

 マグネットトレントを見つけては先制攻撃した。

 射程は圧倒的にこちらの勝ちだ。

 マグネットトレントは砲弾が砂鉄の塊なので、射程が短いのだろう。

 空中で砂鉄がばらけないのが不思議だが。


【トレントはもはやカモだな。買取映像が楽しみだ】

【あんなやらせ映像が楽しみなのか。面白い映像を流せ】

【つ過去動画、綺羅々きららちゃんレイプ事件】

【あれは何かの間違いだ。だっておっさんは捕まってない】

【合意の上だったりしてな。綺羅々きららちゃんはファンを失いたくないから、嫌がった演技をした】

【そんなことがあるもんか】


「心は嫌がっていても、体は正直なんだぜ」


【くあー、許さん。地獄に送ってやる】

綺羅々きららちゃんファンが刺しに行くかもな】

【特攻してった奴いたよな】

【あれは子供だろう。今度は大人だ】

【おっさんがやられるイメージが湧かない】

【SNSに書き込むんだ】

【結局そんなことだけか】


「頑張って盛り上げてくれたまえ。悪口は読めない体質だが、気を落とさないように」


【難しい漢字とか読めないんだ】

【アンチが罵詈雑言にふり仮名を必死に振っている映像が浮かんだ】

【あはは、悪口にルビは振らないだろう】


「ルビ振ったら読むかもな」


 マグネットトレントをたくさん倒したので、今日は上がった。

 さて買取タイムだ。


「魔力を込めると磁力が発生する木片は、需要があるかもな。モーターとかリニアとか、とにかく売れそうだ。だが、マグネタリウムを抽出する方が効率は良いかも知れん」

「結局は駄目ってこと?」

「結論を言えばな。でも1本のトレントから、マグネタリウムが100キロで、1000万は堅いだろう」

「美味しいモンスターってわけか」


【またふかしてやがる】

【突っ込む気も失せる】

【マグネタリウムを使った新製品が出ているのを知らないのか】

【嘘言うなよ】

【つhttps:○○△△.html】

【ほんとだ。もう新素材を使った製品が出てる】

【これをおっさんが採取してるって証拠があるのか。研究してマグネタリウムを作ったのかも知れないだろ】

【そうだ。おっさんはどこかの記事でそれを知ったのに過ぎない】

【これだからアンチは、自分の妄想しか信じない】


 マグネットトレントを弥衣やえ達にも倒せるように考えないと。

 ボウガンの貫通矢との射程勝負じゃ分が悪い。


 バリスタを発注するか。

 武器工房を訪ねる。


「バリスタをひとつ頼む。装填は自動がいいな」

「俺は武器は作るが、そこまでの大物は難しい」

「できないの?」


「なんだその目はやってやるよ。その代わり一億な」

「それぐらい軽いよ」


【一億のバリスタか。本当かな】

【どうせCGだろ】

【CGでもかなり金掛かるぞ】

【段ボールで作って、矢をCGで映し出す】

【そんな素人が作った物なんかすぐに見破られるな】


 とりあえず、弥衣やえ達にはバリスタを運用して貰おう。

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