第109話 入会希望

 バリスタが出来るまで討伐は休みだ。

 シロガネを連れて街の散策もいいものだ。


 ある日、喫茶店で綺羅々きららがノアフォロの代表と話しているところを見かけた。


「シロガネ、大人しくしてるんだぞ」

「わふ」


 シロガネのリードを近くの電柱に括り付ける。

 そして、俺は喫茶店に入った


 ノアフォロの代表達の後ろの席に座る。


「ご注文は」

「コーヒーをホットで」


 ウェイトレスが去って行ったので、後ろの席の会話に耳を澄ます。


「ノアフォロに入りたいと」

「ええ、その資格はあると思います」


 何の病気か分からないが、悪いのかな。


「ノアフォロの入会資格は癌患者に限らして貰ってます」

「ええ、知ってます。でも」


 綺羅々きららはノアフォロに入りたいのだな。

 綺羅々きららが俺に気づいた素振りを見せる。

 罰の悪そうな顔をした。


 失礼しますと言って、席を立ち喫茶店の外に出て行った。

 どういうことなのか考えたが、分からん。

 まあいいや。

 俺はコーヒーを飲み干すと勘定を払い店を出た。


 俺は綺羅々きららのことを知らない。

 討伐動画を何本か見ただけだ。


 ちょっと動画を見てみるか。

 それと掲示板だな。

 質問してみるのも良いだろう。


綺羅々きららちゃんを見守るスレ32


159

ようやく荒れてたのが通常に戻ったな


160

レイプ事件が衝撃的過ぎた


161

そのワードを書き込むな

またスレが荒れるだろう


162

すまそ


163

俺は綺羅々きららちゃんとノアフォロの代表が喫茶店で話しているのを見たぞ


 俺はそう書き込んだ。


164

嘘言うなよ


165

こういうデマを書き込む奴がいるから


166

証拠を出せよ


 弥衣やえ、ヘルプミー。


167

https:□□△△.jpeg


 カメラは常に装着してるから、その様子も録画しておいた。

 その様子を切り取って弥衣やえがアップロード。


168

うん、確かに綺羅々きららちゃんとノアフォロの代表だ

だが、合成でないと誰が証明できる


169

俺も信じない


170

仮にそうだとしても

おっさんに対する苦情を申し立てたんじゃないか

あそこはDVも扱っているはずだ


171

いよいよ

おっさんが告訴されるのか


 スレの流れが俺の意図したものと違って来た。

 綺羅々きららが病気だと言ってもこいつらは信じないだろう。

 さてどう書き込もうか。


172

綺羅々きららちゃんがノアフォロに入りたがっているって線はないのか?


173

100%ないね


174

それより

おっさんが告訴秒読みか


175

告訴したって事はおっさんにレイプされたって事?


176

お前、その単語は出すな


 うん、どうもスレの流れが思った通りにならない。

 ええと分かっているのは、綺羅々きららは癌並みに悪い。

 そしてノアフォロに入りたがっていた。

 そうか、俺に告訴してもらいかったのだな。

 俺が告訴した奴の何人かは寄生スキルをしてダンジョンで働いてもらっている。

 そんな、小学生の男の子が好きな子の興味を引くみたいなことをしてるのか。


綺羅々きららがノアフォロに入りたがってると思うんだ。どう思う?」


 弥衣やえに聞いてみた。


「良く知らない人だから、判断が下せないわ。でも、心情的にはノーよ。あなたに暴行されたって嘘をつくような人は許せない」


 弥衣やえは反対か。

 でも彼女の状況がいまいち分からない。

 それが全て分かってからでも判断を下すのは遅くない。

 今は退院しているみたいだし。

 急激に悪くなることもないだろう。

 時間的余裕はあるに違いない。


「彼女の事情が分からないうちは判断できないのは俺も同意見だ。よし彼女と仲良くなろう。変装するぞ」

「ばれるんじゃないかな」

「冒険者は変わり者も多い。仮面を付けて行動したらどうかな」

「私も付き合うわ」


「パーティ名を決めよう。ノワールフェイスは暗いイメージだから明るいのが良いな」

「チアフルにしましょう」

「よし、それで良いや。そうと決まれば武器工房だ」



 武器工房にお邪魔した。


「おっちゃん、仮面作ってよ。恰好いいのを希望」

「なんでそういう微妙な線を突いて来るかな」

「仮面も防具だよ」

「そんなこと言うと総ミスリルで作っちまうぞ」

「構わないぜ」

「1000万は掛かるけど良いのか」

「うん、弥衣やえの分も頼む」

「次はまともなのを頼むぜ」


 武器工房のおっちゃんは良い人だ。

 なんだかんだ言って作ってくれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る