第174話 発情ウサギ

 ラブリーネスト、11階層。

 いたのはパラサイトウルフとピンクのウサギだ。


【可愛い。ウサギと戯れる子犬。絵になる】

【このウサギは毒持ちじゃないだろうな】

【分からんぞ】


「モチ、このモンスターを知ってるか」

「エストゥラスラビット、別名が発情ウサギだにゃ。特殊なフェロモンで人間もモンスターも発情させてしまうにゃ」


【それは怖いな】

【ガスマスクがあれば平気かな】


「ガスマスク装備」

「了解」

「装着完了」

「はいですにゃ」

「完了ですわん」


 進み始めたところ、

 弥衣やえ綺羅々きららがおかしくなった。

 フラフラして服に手を掛けて脱ぎ始めた。

 この階層は危険だ。


【おっ18禁サービスタイムか】

【確保隊がいなくて良かった。ウホな展開を見せられたら汚染される】

【ヤエちゃんと綺羅々きららの貞操が】

【処女じゃないから】

【いや分からんよ。おっさんヘタレ説を信じたい】


 俺は弥衣やえ綺羅々きららを両脇に抱えて、戦線離脱した。

 モチとキナコは平気なようだな。


「しっかりしろ」

「まだ頭がぼうっとする」

「アルコール中毒より酷い」


「ここからはCGの時間だ」


 俺はアダマン鉄パイプを構えて、ひとり特攻した。

 肉片になっていく、発情ウサギとパラサイトウルフ。


【虐殺映像】

【CGと言えども気分が悪い】

【実際は何が行われているんだろうな】

【ロボットとかドローンとかで掃討していると思われ】


 パラサイトウルフの数が多い。

 数の勝負なら負けない。

 オラオラ、連打だ。


【教育に良くない動画です】

【討伐映像なんてみんなこんな物】

【実際はラブリードッグとウサギが死んでいるのですね。なんということでしょう】


 やがて、ボスの扉までで、動いている者はいなくなった。


【また楽園がひとつ壊滅しました】

【ダンジョンコアさえ無事なら復興するよ】

【CGが終わったらしい】


弥衣やえ綺羅々きらら、元凶は退治した。大丈夫そうか」

「この濃度なら」

「うん、酔っぱらったような感じ」


 急ぎ足でボス部屋に入った。

 ボスはピンクのパラサイトウルフ。

 危険だ。

 酸を塗ったボウガンを連射。


 弥衣やえ綺羅々きららは下着姿になっていた。

 ふぅ、危なかった。


【お色気シーンが寸止めかよ】

【18禁は不味い。垢バンされる】

【下着姿堪能した。これだけで十分】


 ポータルに登録してダンジョンを出る。

 買取場に行き、ピンクのウサギの死骸でまともそうなのを出す。


「こいつはくるな。勃起不全の治療薬に良いかも知れん」

「追加で採取とかしないから」

「死骸があればガスマスクは作れる。採取依頼を出すさ」

「そうしてくれ」


 パラサイトウルフを使った襲撃計画。

 それが気になって仕方ない。

 何か手掛かりがないか。


 フレンドリーベルが何となく心に引っ掛かった。

 あれって前のスタンピードの時に一斉蜂起させたよな。

 機能はそれだけか。

 あれが危険な物という認識は間違ってないはずだ。

 ただどうやって訴えよう。

 闇魔法が使われてますと言ったところで、闇は安らぎ、精神を安定させますとか言われそうだ。


 仕方ない。

 地道にファントム活動するか。

 檻に入れられたパラサイトウルフに精神魔法を掛ける。

 暴れ出すパラサイトウルフ。

 飼い主はおろおろしているが、助けを呼ばない。

 くっ、檻があるとこんな事態になるんだな。


 俺は精神魔法を辞めた。

 大人しくなるパラサイトウルフ。


 これではパラサイトウルフの数を減らせない。

 困った事態だ。

 鍵はフレンドリーベルにあるようだから、これを調べるか。

 光魔法で消し去ることができるというのは分かっている。


 闇魔法の専門家がいればいいのにな。

 ホームページで多額の報酬を餌に募集した。


「俺は闇魔法師だぜ。闇に染まった左手がうずく」


 闇魔法師だという男が訪ねてきた。


「お引き取りを」


 こんなの詐欺師だろう。


「いくら払える。俺は高いぜ」


 別の男が来た。


「フレンドリーベルを作れますか」

「おう作れるぜ」

「じゃあ、試しに作って下さい」


 何の変哲もない鈴を渡した。


「ほらよ」

「光魔法。詐欺ですね、お帰りを」

「詐欺呼ばわりするのか。金払え」


 呪い解放。


「くっ、寒気が。帰る」


 引っ掛かったのは詐欺師ばかり。

 闇魔法からのアプローチは失敗した。

 俺の浅知恵じゃ駄目か。

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