第204話 いじめっ子

 いじめられっ子の十条じゅうじょうを覚えているだろうか。

 彼女は俺の家のダンジョンで修行して、物凄く強くなったらしい。


 いじめっ子が男を呼んで来ても返り討ち。

 この学校で一番強いんじゃないかと言われ始めている。


「スケ番なんて流行らないぞ」

「陰陽師の真似して鬼憑きとかいうとそのスキルは反則だろうとかも言われます。不良になったつもりはないんですが、返り討ちしていくうちにそうなってしまって」


【なんちゃって陰陽師のいじめられっ子登場】

【武闘派陰陽師か。漫画とか小説にありそうだ】

【鬼の力を借りるのな】


「暴走族とかヤクザが出て来たら厄介だろう」

「そういう時は、コボルト、ケットシーとか言うと手を引きます。」


 コボルトとケットシーが恐怖の代名詞か。

 温厚な種族なんだけどな。


【8000人ぐらいいるんだって。そりゃ怖いわな】

【本当かどうか分からないが、寄生スキルで守られている設定もある】

【身体能力からして違う。それがレベル上げに励んでいるんだろう。強いのは当たり前】


「ほどほどにな」

「ちょっと意固地になっている子がいるんですよね。呪いの力を借りれませんか。過去動画見ましたよ」

「18禁なのに」

「親にIDを貸してもらいました。それより呪いを」

「軽くならいいか」


【呪いという名の完全犯罪】

【悪辣だな】

【ほんと呪いは勘弁して】

【経験者か】

【ぷーくすくす。呪いなんか信じているんだ】

【俺は信じる】


 十条じゅうじょうといじめっ子がたむろしている、カラオケボックスに行った。

 扉の窓から中を覗く。


「いたか?」

「ええ、やっちゃってください」

「呪い」


 ちらちらと窓から覗く。

 いじめっ子達は寒いと両手で自分の肩を抱いた。


 うん、悪寒がするだけの効果に収まって良かった。

 癌まで行くとさすがににな。

 十条じゅうじょうがドアを開けて中に入る。


「てめぇは呼んでない」

「おん、まゆきらてい、そわか。呪いを掛けた。極寒の呪いよ。解いて欲しければもう虐めはやめるのね。私以外を最近になって虐め始めたのを知ってるよ」


 十条が手を組んで呪文を唱える。


【でた、なんちゃって陰陽師】

【うん、虐めは良くない】

【呪いは恐ろしい】

【ドラマだから】

【そういうのは興ざめする。実際にあると思って見るのが良いんだよ】


「くそっ、呪いを解きやがれ」

「くそが、お前が呪われろ」

「鬼の力なんか借りやがって。鬼に食われていなくなっちまえ」


【女の子らしくない乱暴な言葉】

【不良だからね】

【演技上手いよね】

【顔にモザイク掛かっているけど、迫真の演技が伝わってくる】


「陰陽師はいじめられっ子の依頼なら誰からも受ける」


【おお、啖呵切って】

【こいつらまだ降参してないけど】

【一生苦しめってことか】


「くそっ、降参だ。もう誰も虐めない」

「ストレスが溜まったらダンジョンに行きなよ。モンスターを叩いてるとストレスなんか吹っ飛ぶから」


【ゴブリンをタコ殴りにしているスケ番達】

【18禁展開になりそうだな】

【ゴブリンによる性被害の報告はない】

【種族が違えば美醜も変わる。交わることはない】


 呪い解除っと。


「悪寒が治まったぜ」

「酷い目に遭った」

「もう、あんたには関わらない」


【一件落着か】

【面白くない終わり方だ】

【キャットファイトで服がはぎ取られるのを期待してた】

【そんなのならんだろ】

【後ろで頷いている底辺おっさん】

【やめろ、カメラが上下すると酔うんだよ】


 カラオケボックスを後にしてなんか良い事をした気持ちになった。

 悪役ブームじゃなくてムーブが出来てないな。


「呪いを使って虐められた奴の仕返しをしてやったぜ。ひとり頭10万円の依頼で、200万も儲かった。チョロいぜ」


【あれっ依頼を受けている場面なんかないけど】

【そういう設定なんだよ】


「なぁ、十条じゅうじょう

「何か分からないけど。はい、師匠」


【このぐだぐた感が好き】

十条じゅうじょうはモザイク掛かっているけど、きっと美少女】

【女優なら美少女だろう】

【個性派とか演技派とかはちょっと外れているのが多い】


「これからも、いじめっ子を呪って金を依頼人から毟り取るぜ。依頼を受けてなくても憂さ晴らしでいじめっ子を虐める」


【ヤングファントムとは正反対だな】

【実際は金は取ってないだろう】

【中学生が10万円ももっているわけない】

【お年玉とか集めたら余裕だと思うぞ】


 ちょっと悪役ムーブが弱いな。

 舐めろとか言って棒のアイスとか舐めさせたら良かったかな。

 モザイク掛けたらきっと勘違いして悪役っぽくなるかも。

 次の時はアイスを奢ってやろう。

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