第26話 ミスリルの水鉄砲
「いい、私が怒っているのは、みんなで戦おうって言わないからなの」
「ごめん。そうだよな俺だけで戦うのは違う。強敵にはみなで立ち向かわないと」
俺は謝った。
自分だけでなんとかするのは違うが、いい方法が分からないんだ。
俺って馬鹿だから。
「でも方法が」
「
「教えて下さい先生」
「いま私たちのパーティに不足しているのは後衛です」
「なるほど」
「ですが、強力な武器は売って貰えない。精々猟銃止まりでしょう。そこで強力な武器を合法的に作るのです」
「どうやって?」
「アイアンスライムの酸です。追い詰めれば酸を吐きます。それを洗面器で受け止めて、水鉄砲で使います」
「おお。それは凄い。でも洗面器が溶けるんじゃ」
「ミスリルは酸に強いと聞いてます。王水でも溶けないのだとか。ミスリルが含んでる魔力のせいだと言われています」
「
「まずはミスリルがあのスライムの酸で溶かされないか調べましょう」
「おうよ」
協会に寄ってミスリルの針金を手に入れた。
魔道具やアクセサリーを作るのに使うらしい。
1グラム10万円ぐらいだった。
ひぇぇ、高いぞ。
ダンジョンでアイアンスライムを追い詰める。
アイアンスライムが震えた。
よし、酸を吐くぞ。
吐かれた酸を避けて、針金だけを酸に突っ込んだ。
見たところ白煙も上がってないし細くなったりもしない。
さすがグラム10万円。
これで散弾はできた。
なんか字が違うような。
まあいいか。
広範囲に攻撃してぶっ殺せるのだから、散弾だな。
俺は魔鉄を作ってもらった町工場に行った。
「ミスリルで作った武器を注文したい」
「こいつは久しぶりの大仕事だ。腕がなるぜ。で武器はなんだ。剣か。それとも槍の穂先か。ナイフか。矢じりひとつとか言わないよな」
「水鉄砲だ」
「なんだって。俺はどうかしちまったらしい」
「それと洗面器」
「こいつは参ったぜ。夢を見ているらしい」
職人は頬をつねった。
「痛っ! 夢じゃねぇ。なんてこった。馬鹿にしてるのか。前に作った魔鉄の鉄パイプはまあいい。鈍器には違いないからな。はっ、洗面器ぃ! 帰ってくれ! そして二度とつらを見せるな!」
「とにかく、理由を聞いてくれよ」
「そんなふざけた注文に理由があるのか。言ってみろ。納得いく理由で無かったら、お前を炉にくべてやる」
「ダンジョンの壁を溶かしてしまう酸を吐くスライムがいるんだ。その酸をミスリルの洗面器で採取して、水鉄砲で使いたい」
「ほほう。不壊と言われるダンジョンを溶かす酸か。そいつは確かに採取できたら凄いな。だが採取には危険が伴うぞ。悪いことは言わねぇ。全身ミスリル装備を作れ。いくらかましになるだろう」
「じゃあ、細菌とかを扱う病院で使っているあれを作ってよ」
「ミスリルの防護服な。職人に対する挑戦だな」
「頼む」
「仕方ねぇ。納得しちまったから。洗面器と水鉄砲も作ってやる。それとサービスで酸を保存しておく容器も作ってやろう。全部で10億な」
「じゃあ、よろしく」
俺はダンジョンで
乱獲したモンスターも戻ってきているしな。
焦る必要なんかない。
ゆっくりと行くか。
もっかの
こいつらは必殺技が硬くなるだけだし、力もそれほど強くない。
危険性が低いし、すぐに増える。
ただ素材が魔石ぐらいしかないんだよな。
それも頭をぷっ叩くと粉々になっちまう事がしばしば。
【オークグループに勝てないからゴブリンで憂さ晴らしか】
【ヤエちゃん達のパワーレベリングに来たと思われる】
【か弱い女生とペット枠を戦いに投入とはクズもいいところだな】
【ゴブリンって金にならないよね】
【まあな】
【そんなことありません。ゴブリンキングなら100万は超えるはずですよ。お金って素敵】
【出たな守銭奴】
頭を叩かないで殺す方法を考えてみるか。
俺はその首に腕を回すと締め上げて折った。
奇麗な殺し方だ。
堅くなると言っても、関節は柔らかい。
首を折るなど造作もない。
個人的には連打で仕留めるのが好きだがな。
【やっぱFランクゴブリンだな】
【底辺おっさんが首を折れるぐらいだからな】
さて、いくらになるかな。
買取場でアイアンゴブリンを出す。
「おお、アイアンゴブリンか。魔石は粉々になってたりしないよな。ドラスレが持ってきた奴は酷かったぞ。何回殴ったらああなるのかって思ったぜ。ちょっと待ってろ1体解体してみる」
電動のこぎりみたいな工具を使って、解体するのを眺めて、しばらく待つ。
「お待たせたな。綺麗なものだ。皮は1万で、魔石が100万だな。皮は時間が経つと柔らかくなって加工し易いが、再び硬くできないんじゃな。魔力を込めると硬くなるとかだったら、100万はいったろう」
死んでから、しばらくすると柔らかくなるのか。
【でたサクラ買取人】
【虚勢を張りたいんだから張らせてやれよ】
コメントは相変わらずだ。
だがそれで良い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます