第134話 コンダラ

 巨人のダンジョン第2階層。

 茨フィールド。

 茨のトゲはバーベキューの鉄串ほどある。


 フィールド自体が有刺鉄線の塊みたいなものだ。

 だが、巨人の皮膚は厚いのかものともしない。

 ここの巨人はソォンジャイアントだな。


 地の利は向こうにある。

 俺なら連打連打で切り開くけどな。

 さて、綺羅々きらら弥衣やえはどうするか。


【この辺りから苦戦するんだよな】

【この茨、強敵だ】

【採取しても二束三文だし、泣きたい場所だ】

【茨は入って来るなと言っている。巨人の討伐をやめろ】

【おっさんは。どうするかな。酸で溶かすと言う手もあるが】


「どうする」

「一時撤退ね。私が剣で薙ぎ払って進むのもありだけど、重労働はちょっとね」

「酸で溶かすのは、時間と手間と価格が合わないわ」


 で、弥衣やえが俺に野球で使ってる整地ローラーを作ってよと言ってきた。


「整地ローラーって何?」

「これよ」


 写真を見た。


「ああ、コンダラね」

「正式名称は整地ローラーよ」

「何でコンダラって呼んでるんだ?」

「アニメで重いコンダラって歌ってたらしいわ」

「おお、じゃあコンダラで合っているじゃん」

「とにかくお願い」


 こういう時は武器工房だ。


「おっちゃん、コンダラ作ってよ」

「あのな、ここは武器工房だ」


 おっちゃんが少し涙目だ。


「武器になるよ。ゴブリンとかイチコロだ」

「くっ、そりゃあ、これでゴブリンとか殺せるけどよ、武器じゃないだろ。……ぶつぶつ」

「俺ならコンダラで撲殺も出来る。魔鉄で作ってよ」

「1000万だ」

「おう」


 結局作ってくれるんだよな。

 魔鉄製のコンダラが出来上がった。


 なんと弥衣やえ達はシロガネに整地ローラーを引かせたのだ。

 シロガネは毛が針金で皮膚も厚い。

 茨など、どうってことはない。


【シロガネに茨を処理させる作戦か】

【焼き払うと思ったのにな】

【生木はわりと燃えにくいぞ】

【巨人のいる場所を環境破壊するな】


「シロガネちゃん。頑張って」

「わふぅ」


 綺羅々きららの応援にシロガネが応える。

 シロガネはパワーがあるな。

 整地ローラーを引っ張って走り回っている。

 何だか楽しそうだな。


 酸も試してみた。

 うん、酸でも溶ける。

 ただ大規模散布は勿体ない。

 整地ローラーの方がコスパが良いからな。


【茨が硬いのが功を奏したな】

【針金みたいだからな。弾力がほとんどない。整地ローラーでなぎ倒せば、ぺちゃんこだ】

【巨人討伐をやめろ】

【気づいたんだが、おっさんは何もしてない】

【整地ローラーの金を出したんだろ】

【調べたら、10万から20万ぐらいだった。特注でも40万ぐらいだろ】


 茨が無ければ巨人などどうと言うことはない。

 ただし、整地ローラーで茨が無くなるわけではないので、足装備は重装備になる。

 ソォンジャイアントは鉈を武器としてた。

 巨人も茨は皮膚に刺さらないが、顔とかにトゲがくるとうっとうしいらしい。

 それを薙ぎ払うための鉈だ。


 整地作戦は上手くいった。

 地の利が失われれば、討伐は容易い。

 シロガネが久しぶりに走り回って嬉しそうだ。

 巨人の肉をたんまりと与えた。


 茨フィールドを抜けた。

 そこは暗闇のフィールドだった。

 ライトの光も吸収してしまう。

 対策が必要だ。

 なので、討伐を中断して、ダンジョンから出る。

 巨人を守る会は相変わらずいる。

 暇な奴らだ。


 さて、俺も何かアピールしないとな。


「巨人は外来植物を持ち込む悪い奴だ。この茨を見てみろ。こんなのが大繁殖したら、歩くのも難儀する」

「根拠のない嘘だ」

「だが、本当にそうか。ダンジョンの外にこの茨が繁殖してないとどう証明できる?」


 俺は巨人茨の被害を訴えた。


【うちの近所、これが生えているぞ。鉄みたいに硬くて難儀してる】

【おっさんの嘘じゃなかったのだな】


 そうしたら生えている所があるらしい。

 なぬ。

 口から出まかせだったのに。


 まあ巨人に付いたタネがこぼれれば育つかも知れない。


「酸で駆除できる。コボルトとケットシーを派遣しよう。巨人の侵略を阻止するのだ」


【分かった。場所をメールする】

【巨人の侵略を阻止しよう】

【それは巨人のせいではありません。ダンジョンがやっているのです】

【いいや、巨人が種を蒔いたのだろう】

【まあそう考えるのが普通だな】


 なんとなく巨人茨で巨人イコール悪という考えが少し根付いた。

 こういう路線で行くといいのかもな。

 なにか似たようなネタを探そう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る