第111話 転移性壊死症

 次の日、俺は弥衣やえに話を聞いた。

 カメラが止まってから飲みに行ったみたいだったし。


綺羅々きららちゃんはね。転移性壊死症なんだって」

「初めて聞く病気だな」

「体のあちこちが腐る病気よ」

「それは大変だな。ノアフォロに入りたがる理由も分かる」

「ポーションを飲めば一時的には良くなるらしいけど、完治には程遠いって。そして、段々ポーションを飲む期間が狭まっているらしいわ。唯一の希望はエリクサーなんだって」


 綺羅々きらら編のエピローグが決まったな。

 エリクサーで治ってハッピーエンドだ。

 そこまで盛り上げの展開が必要だな。

 エリクサーが手に入るまで、ポーションを与えるのは当たり前として、どう悪役として振る舞うか

 ふむ、考えどころだ。

 床のポーションを舐めろはやっちまったけど、口移しとか色々と考えられるな。

 精々、悪逆非道に振る舞うとするか。


 さて、綺羅々きららの事情が分かったことだし、今日も稼ぎますか。

 エリクサーはオークションで手に入れよう。

 弥衣やえが代理人と交渉してくれた。

 後は待つだけだ。


 マグネットトレントの林を抜けて、お次は何だ。

 モグラが土をかき分けて進むような跡が砂にできる。

 大きさ的に跡は20メートル。

 本体は10メートルってとこか。


【モグラかな】

【サンドワームってことも】

【蛇ってのは】

【この大きさだと、おっさん死んだな】

【ドラゴンに比べりゃ小さい】

【あれって捏造だろ】


 叩きゃ良いんだろ。

 アダマン鉄パイプを構えて待ち受ける。

 どんどん加速する地中のモンスター。

 こことばかりに振り下ろそうとしたら、地面が爆発したようになって砂が飛び散り巨体が見えた。


「何だって」


 俺に飛び掛かってきたのは魚。

 形的にマグロだ。

 マグネットツナだな。

 俺はアダマン鉄パイプで飛び掛かって来るマグネットツナの鼻先を叩いて方向を変えた。


【まさかのマグロ】

【時速200キロはあったような気がする】

【何でおっさんは死なないんだ】

【急に向きが変わった感じだ】

【捏造くさいな】


 マグネットツナは再び地中に潜った。

 まあ、体当たりしか攻撃がないなら、別にどうってことはない。


 再び襲い掛かってくるタイミングを見てフルスイング。


「どっしゃらぁ」


 マグネットツナは陸に上げられた魚になった。

 その上に跨り連打。

 仕留めた。

 ふぃ、10メートルはあるな。

 へたなクジラの大きさだ。


 これが食えるのなら、コボルトとケットシーの良いお土産。


 買取場にマグネットツナを持って行く。

 死骸を出すと買取場の床がほとんど見えなくなった。


「大物だ。美味けりゃ3000万はいくな。だが、100匹も持ち込まれると、値段が下がる」

「そこは出荷調整だな」


「結果が出たぞ。美味とのことだ。ただ人間磁石に少しの間なるのがな。マグネタリウムの人体の危険性は今のところ確認されてないが」

「じゃあ、食っちまうか」


 半分の肉を土産にモチとキナコに持たせた。

 そして、俺は綺羅々きららの所に行った。

 カメラのスイッチオン。


「何か用?」

「高級ポーション10本。3千万円相当を用意した。ノアフォロに入れ。これが契約書だ」

「そんなもので私が釣られるとでも」


【そうだ。綺羅々きららちゃんがそんな物に釣られるか】

【金じゃないんだよ】

【帰れ帰れ】


「くくく、そんなことを言ってもいのかな。親しい人に、おっと。これを言うと脅迫だな。俺の配下は何千人もいる。みんな死を恐れない。だから法律など、分かるだろ」


【これって脅迫じゃないのか】

【初めからこれが目的だったんだ】

【そしておもちゃにするつもりだ】

【許さん。拡散してみんなから、綺羅々きららちゃんを応援してもらうんだ】


「分かったわ。これにサインすればいいのね」


【駄目だ】

【俺が助けに行くから、サインする手を止めて】


「もう遅い。契約はなった。寄生スキル。これでお前は俺のものだ」


【そんな】

綺羅々きららちゃん負けるな】


「これで支配したと思わないことね。私は屈しないわ」

「気の強い女は好きだ。くっころとかやってみたい」


【なんかくっころに笑ってしまった。欲望だだ洩れだぞ】

【おっさんが裏で何をしているか誰も知らない。ラブホテル事件とかも捕まらなかったし】

【くぅぅ、今こそネットの力を見せてやる】

綺羅々きららちゃん、俺達がきっと囚われの身から救い出す】


 綺羅々きららに寄生したから、これでさらに安全性が増したな。

 加護があるからエリクサーが間に合うと思いたい。

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