第50話 食い破る

 寝ずにアイアンモンキーの対処を考えた。

 水魔法だ。

 火で駄目なら水だ。

 でかいプールみたいな水魔法なら殺せるだろう。


 レッツ、離便児リベンジ


「さあやるぞ」


【キタ、待ってた】

【蹂躙希望】

【底辺おっさんのシナリオは勝ちパターン一色だけどな】

【かっこいい所見せて】

【ワクワク】


「水魔法、プール並」


「キキッ! キキー!」


 焦ったようなアイアンモンキーの声。

 木ごと水で包んでやった。


【うほっ、最強】

【おっさんが強いのは当たり前】

【これは凄いな】


 アイアンモンキーは水に包まれなすすべなく溺れた。


「よし、弥衣やえとキナコとモチは死骸の回収だ。待てよ、これ持って帰って怒られないかな。ばい菌だらけなんだろ」

「焼いちゃえば」

「そうか、魔石と何か残るだろう」


 水で包んで殺した死骸を山にした。


【大漁、大漁】

【CG言っている奴みないね】

【ところで映像の検証は終わったのか】

【うちのほうで検証したら加工の後は見られなかったぞ】

【ここに来るアンチは少し数が減ったね】

【アンチの発言はムカムカするんだよ。特に根拠のない奴】

【訴えられた奴が多数出てビビってると思う】


 それで、山を燃やした。

 後に残ったのは魔石と骨とキラキラ光る金属だろう粉。

 これは使えるかもな。

 持って行こう。


 買取場に行く前に電話する。


「もしもし、行ってもいい?」

『駄目だ。感染のリスクは犯せない。素材ならこちらから取りに向かわせる。グラトニーマテリアルの供給は止められないからな。それと血を採取させてくれ』

「そう、なら今日のサンプルも箱に入れておく。血液検査は初めてだ。痛いの?」

『ちくっとするだけだ』


「酸を持ち逃げした馬鹿が出たにゃ」


【大変だ】

【あの酸でテロを起こされたら堪らないぞ】

【おっさんの優しさが裏目に出たな】


「どいつだ?」

浦和うらわ吹上ふきあげという奴にゃん」


 あー、捏造番組のプロデューサーとスタッフじゃないか。

 寄生スキルで何かできないかな。

 逃げた奴の顔を思い浮かべて寄生スキルで食い破るイメージをする。

 手ごたえあり。

 食い破った感じがある。

 なんか体がおかしい。


 俺は熱を測って問題ないのを確かめてから鏡を見た。

 若返っている。


【初めて見るけど、おっさん若い】

【はたちでも通用するね】

【恰好良い】

【イケメンだな】


 ええと、浦和うらわ吹上ふきあげの若さを吸い取ったのか。

 そして、老人の顔をして、浦和うらわ吹上ふきあげが戻ってきた。


「「申し訳ありませんでした」」


【すまんで済んだら警察は要らない】

【こいつらの顔は見覚えがあるが、こんなに老けてたか】

【大急ぎ過去映像みた。たしかに歳とっている】


「俺は今回の処置を謝らない。あの酸はそれだけ危険なんだ」

「もう元には戻らないってことですか?」

「そんな」


「エリクサーなら治るかもな。エリクサーが出たら使ってやろう。それまで真面目に働け」

「「はい」」


 他の雇われた奴は二人が老けたのを見て絶句した。

 浦和うらわ吹上ふきあげは泣いている。

 どういうことか他の奴らに説明した。

 絶句する社員。


【寄生スキルって恐ろしいんだな】

【でもそれだけの事をした】

【エリクサーで治すそうだから、やっぱりおっさんは優しいよな】


 弥衣やえが息を切らせて駆け付けた。


「配信見た。ほんと若返ってる。これで私達お似合いね」

「効果が続くか分からないから、あんまり期待するなよ」


【若返ったのか。羨ましい】

【でも効果が続くか分からないんだろう】

【おっさん、もう一回顔見せて】


「おう」


 俺は頭のカメラを外して自分を撮影した。


【イケメンね】

【結婚して】

【モデルになれるかも】

【芸能人並みだな】


すぐる、若いうちに楽しまないと、色々と行きたい所があるんだぁ♡」


【行ってらっしゃい】

【応援してる】

【ナイスカップル】


「そうだな。じゃあ行くか」


 カメラを止めて弥衣やえとの逢瀬を楽しんだ。

 どこに行ったのかは秘密だ。

 エッチな行為はしなかった。

 年齢が突然元に戻るかもしれないからだ。


 弥衣やえが写真を撮りたがったので、プリクラなるものをやった。

 俺の若い頃の写真と比べると今のほうがイケメンだ。

 年齢以外のものも吸い取ったに違いない。

 よっぽどのことがない限り今回の技は使わない。

 そう心に誓った。

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