第18話 再始動

 スキルが多過ぎてパニック。

 契約書の説明聞いたり、役所で書類整えるのにパニック。

 もう知らん。

 スキルなんか追々で良いだろう。


 契約書はうんうん頷いて判子をポンポン押した。

 弥衣やえが弁護士に書類の確認を頼んだから変なことにはならないはず。

 お金は減ったがそんなのは惜しくない。

 ちなみに10億ではちょっと足りなかった。

 250戸のマンションで15億。

 まあこの分だと残りは払えるだろう。


「ここんところ事務仕事で肩が凝ったから、久しぶりにアイアンオークを乱獲する」


【おう久しぶり】

【死んでたらよかったのに】

【遺産相続人に私を指定して】

【愛してる】

【出たな、おばさん】


「私を置いて行かないでくれだわん」

「にゃも同じく」

「じゃあ行くか。ついて来い奴隷共」


 ダンジョンに入りオークの領域に行く。


「おっ、早速オークだ。奴隷達から搾り取った新たな力を見るが良い」


 鉄パイプが黒い光を発した。

 それでオークを殴るとオークは一撃で死んだ。


「ほへっ、こほん。俺様の力を見たか」

「私もパワーアップしたいな」

「よし、みんな一撃を加えてみろ」


 弥衣やえが一撃。

 キナコが一撃。

 モチが一撃。

 隙ができたアイアンオークを俺が一撃。

 いい具合だ。


【これで700万】

【オークの睾丸って高いのな】

【精力剤として有名】

【このダンジョンのオークは特別高い】

【このオークの睾丸から作った薬は黄泉がえり丹。一粒5万円】

【たけぇ】

【エリクサーよりうんと割安。でもエリクサーにはない効能がある。体力回復効果だ】

【ステマ乙】


 寄生は離れていても、効果があるみたいだ。

 それは嬉しい誤算だな。

 悪役ムーブが薄れてきたのを感じる。

 コボルトとケットシー達を助けたからな。

 彼等に何か仕事を与えるか?


 何をやらせたら良いだろう全然思いつかない。


弥衣やえ、奴隷達を搾り取りたい。アイデアを出せ」


【ねこたんといぬたんを虐めるな】

【動物愛護法で訴えてやる】


「うーん、情報を聞いたところでは頭は良さそうで器用なの。どんなアルバイトでもこなしそうだけど、不安もあるわ」

「いくら俺が悪党だからと言って色々な所に迷惑を掛けるのは違う。そんなの俺の悪の美学に反する。奴隷達を使って迷惑行為をしているなどという悪評は我慢ならん」

「だよね。となると会社で社員にするしかないんじゃない」

「うむ、俺の会社なら、多少手荒に扱っても問題ないか。よし、閃いた。介護事業だ。彼らにヘルパーの資格を取らせよう。くくくっ、介護の重労働に恐れおののくがいい」


「いいかも。彼らは人間より力があるし癒し効果があるから」


【介護かぁ。なんというか悪党らしくないな】

【盗みをさせたりして】


「くくくっ、俺様がそんなちっぽけな悪に手を染めると思うか。やるなら遺産丸ごとだ。奴隷達には愛想を振りまいてもらって、相続人になるように仕向ける。完璧な計画だ」


 やらんけど。


【やっぱり悪党だ】

【だな。氏ね】

【素敵。痺れる】

【遠大な計画、いいわ】

【こういうことをいう奴らがいるから】

【だけど相続人になると合法なんだよな。騙したりしない限り】

【悪辣だな】


「おっとオークが来た」

「任せて、てやっ」

「とりゃですわん」

「にゃ」


 弥衣やえ達が一撃加えるとオークの注意は弥衣やえ達に移った。


「熱い棒をお見舞いしてやるぜ。そして終わったら弥衣やえにもな」


 やはり一撃で死ぬオーク。


【700万円のモンスターが赤子の手をひねるようだ】

【俺は明日このダンジョンに行くぞ。こんなに稼げるなら見てられない】

【やめとけ死にたいのか。ドラスレチャンネルだとこのダンジョンのモンスターはどれもSランクらしい】

【それ本当か? 疑わしいな】

【信じないなら、信じなくてもいい】



 今日はオークを100頭狩った。

 ええと7億か。


「諸君7億の儲けだ。ではバリュー」


【謎の言葉】

【バイバイとアデューを組み合わせたものだと思われる】

【ださいセンスだ】


 カメラのスイッチを切った。

 ああ、アデューだったか、ちょっと恥ずかしい。

 このままバリューで押し通そう。

 とりあえず食費は稼いだ。

 ちなみにダンジョンの素材は協会に売る分には税金は掛からない。

 協会が税を取っているからな。


 まあ確定申告は税理士に丸投げだな。

 ああいうのは難し過ぎて説明だけで三日は頭痛がする。

 金があることは良いことだ。

 弥衣やえにはほんと世話になっている。


弥衣やえ、給料はどんと1億だしてやろう」

「えー、そんなに良いの」

「もちろんだ。俺には弥衣やえがいないとどうにもならない」

「えへへ」


 弥衣やえが照れている。

 カメラの前では褒めないが、普段もっと褒めないとな。

 俺がアルバイトしてた頃は叱られてばかりでほんと嫌になった。

 ああいう行為を俺はしない。

 そう心に誓った。

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