第17話 アイアンリッチ
アイアンオークの領域の更に奥。
1階層の扉があった。
俺はボス部屋の扉に手を掛けた。
扉は軋みながらゆっくりと開く。
部屋の中央にボス敵の杖を持ったメタルゴッドリッチが椅子に座ってテレビを見ていた。
お前なんか神の名前を冠するほどじゃない。
アイアンリッチで十分だ。
今からお前はアイアンリッチだ。
部屋の奥の壁一面にコボルトとケットシー達が鎖につながれている。
ピクリとも動かないのは生命活動が停止されているからだそうだ。
意識はあるのだが瞬き一つ出来ないらしい。
食料節約のためらしいがむごいことをする。
待ってろ、いま助けるからな。
「無粋だな。ノックぐらいしたらどうかね」
「あんたと話すつもりはない。捕らえているコボルトとケットシーを解放するなら別だがな」
「美味い奴、もうダンジョンの散策は良いのか。私にデザートをふたつも運んできてくれるとは、餌として称賛に値するな」
「問答無用」
俺は駆け出した。
「これだから人間は。まあいい。銃弾」
魔法を使ったのが分かった。
俺の目はクルクルと回転している銃弾がこっちに向かって飛んで来るのが見えた。
だが、あまりの速さに避けられない。
腹に、食らってしまった。
やはり死ななきゃ生きられないようだ。
「ふむ、しぶといな。メインディッシュ並みかな。銃弾、銃弾……銃弾」
銃弾の雨が向かってきた。
スローになって、銃弾が良く見えた。
俺は鉄パイプで当たる銃弾だけ弾いた。
が、何発か食らってしまった。
アイアンリッチはすぐ目の前だ。
「くたばれっ」
鉄パイプを振りかぶり、振り下ろした。
だがそれはフェイントで俺は右に行くと見せかけ左にステップした。
俺の鉄パイプを持った腕が取られて、一本背負いされた。
俺は空中でくるりと回って着地して、コボルトとケットシー達に向かって大ジャンプした。
「派手に飛んだな。もっと抵抗してみせろ」
「頼む。騙されたと思って呪いに寄生させてくれ! 呪いが楽になる! 寄生!!」
呪いにと言ったのはこう言わないと拒否されるからだ。
実際は違う。
騙すみたいですまん。
俺は心の中で謝った。
うぉー、1000人はいる彼等から呪いの力やら、筋力などあらゆるものがひとりにつき数パーセント分が入ってくる。
撃たれた弾丸が銃創からひねり出された。
痛みさえなくなっていた。
自己回復スキルを持っているのが30人はいるらしい。
3%ずつでも100%近くなる。
第二ラウンドと行こうか。
俺は鉄パイプに呪いの力を込めた。
鉄パイプからはもやではなくて、黒い光が出ている。
「ほう、呪いの力を使うのか。アンデッドである我に効くと」
「だっしゃららぁぁぁぁ」
ジャンプ一閃、アイアンリッチに鉄パイプを振り下ろした。
アイアンリッチはそれを杖で受けた。
鍔迫り合いになった。
呪いが杖を伝わってアイアンリッチを蝕む。
「何の呪いだ」
「コボルトとケットシーに掛かっていた神の呪い3000%だ。とどめだぁぁぁぁ」
俺はアイアンリッチの肋骨を連打。
呪いに掛かったアイアンリッチの肋骨にひびが入り、最終的には心臓部である核を壊した。
倒れたアイアンリッチの頭蓋骨を連打。
中にある魔石を取り出した。
「勝った。死んで生きた」
「おめでと。コボルトとケットシー達に揉みくちゃにされてみたい」
【俺もヤエちゃんにもみくちゃにされたい】
【笑顔のヤエちゃん素晴らしい】
【おっさんは死ね】
【リッチに殺されれば良かったのに】
【リッチごときに勝って、おっさんは何をいい気になっているんだか】
【ええとリッチは推定Cランクだな】
【やっぱ、おっさん弱ぇ】
【言ってやるなよ。普通の冒険者だとリッチは強敵だぞ】
コメントをみる余裕ができたので見たら、アンチコメばっかり。
【お疲れ】
【だな、底辺おっさんとしては頑張った】
【でも、おっさんはSSランクを倒したみたいな顔しているんだよな】
【いいんじゃね。人それぞれだから】
コボルトとケットシー達の魔法と呪いが解けて、彼等は自力で鎖を破壊して、無事を確かめ合っている。
「奴隷共、よく聞け。俺が新しい主人だ。貴様らに要求することはただ一つ。絶対に死ぬな。生きて寄生されてろ。食事も住む所も俺が用意してやる。好きに生きるが良い」
【奴隷にしては好待遇】
【悪党がたまに見せる優しさって奴だよ。騙されたらいけない】
【それにしてもそんなに稼いでいたとは。このたくさん人達の衣食住を賄うって相当だと思う】
【気に入ったよ。チャンネル登録させてもらう】
さあ、ダンジョンを出るぞ。
出てからが大変だな。
マンション一棟買い上げないと駄目か。
10億で足りるかな。
中古ならなんとかなるか。
俺だけだと彼らの世話は出来ないだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます