第103話 暴行炎上

 第4階層に足を踏み入れた。

 そこは赤茶けた砂の世界。


「あっ」


 見ると弥衣やえのネックレスが切れて落ちたようだ。

 弥衣やえがそれを拾うと、根っこみたいに砂が付いて来る。


「ここの砂って鉄みたい」

「うぉっ、大儲け」

「純度が高ければね」


 俺はペットボトルに砂を採取した。


【砂鉄の砂漠か】

【さすがダンジョン】

【おい、真紀真紀まきまき綺羅々きららちゃんの配信見ろよ。凄いことになってるから】

真紀真紀まきまき綺羅々きららチャンネルから来ました。おっさんは氏ね】


 コメントが凄い勢いで埋まっていく。

 その言葉は全部俺に対しての罵詈雑言。

 うおっ、炎上したか。

 またチャンネル登録者数が増えるな。

 だが、今はダンジョンに集中だ。


 砂が盛り上がり、中から真っ黒なゴブリンが現れた。

 黒って強そうだ。


 ゴブリンが唸ると、ゴブリンの手に10メートルはあるメイスが握られた。

 出来た過程を見てたから分かるが、メイスの材料は砂だ。

 コメントをちらっと見るとやはり罵詈雑言の嵐。


 まあ意見を貰わなくても、ゴブリンが磁力を操るぐらいは分かる。

 メイスが振りかぶられ俺に向かって叩きつけられた。


 アダマン鉄パイプでそれを受ける。

 ずしっときて足が膝まで砂に埋まる。


「うりゃあ」


 俺はアダマン鉄パイプでメイスを払いのけた。

 たたらを踏むゴブリン。

 俺はジャンプ一閃。

 ゴブリンを叩き伏せた。

 ミンチになるゴブリン。


 弥衣やえのボウガンの矢は鉄だからこのフィールドとは相性が悪いな。

 磁力に影響されない矢を作れば良いか。

 何かしらあるだろう。


 今日はこんなところでいいか。

 炎上の理由が知りたくて仕方ない。

 さっきからそれが気になっている。


 ダンジョンから出て、パソコンで検索を掛ける。

 ええと真紀真紀まきまき綺羅々きららチャンネルだったな。

 最新動画を見ると、暴行されましたというタイトルが。

 ぽちっとな。


「おらおらおら」

「きゃあ、やめて。ぐっ、や、め。きゃあ」


 俺が女の子を鉄パイプで連打してる。

 いくら頭の悪い俺でもこんなことがあったら覚えている。

 捏造なんだろうな。

 最近の画像技術は凄いな。

 なんの違和感もない。


 ただ思うにこれは俺がモンスターを連打した映像を使っている。

 炎上ネタを探していた俺はこれ良いじゃんと思ってしまった。

 だって合成かどうかは裁判すれば分かるはずだ。

 痕跡がゼロパーないなんてちょっと考えつかない。

 勝てる勝負だ。

 ここからどう話を膨らまそう。


 おっ、新しい動画が上がった。

 綺羅々きらら、引退するかもというタイトル。

 冒険者辞めないでとのコメントで溢れかえる。

 この女、冒険者らしい。

 動画を見ると全身包帯の痣や傷だらけの女が映っていた。

 ポーションがあれば復活できるかもと言っている。


 ポーションを送りますとコメントが多数出た。

 ポーションを集めるのが目的なのか。

 何だかな。

 三流詐欺師みたいでちょっとがっかり。


 他の過去動画を見てみる。

 大体、Cランクダンジョンで活動しているらしい。

 特にポーションをねだるような内容はない。

 至って普通の討伐動画だ。

 人気が出るだけあって女は可愛い。

 アイドル並みと言ってもいいだろう。


 この女のことは後でなんとかするとして、とりあえず話に乗ってみるか。


「どっかのダンジョンで邪魔な奴がいたっけ。連打して排除したが覚えてない。俺って何か悪いことしたか。前で立ち塞がったら排除するよな」


 そう配信した。

 おー、いい具合に炎上してる。

 とりあえずはこれで良い。


 そして武器工房にお邪魔した。


「おっちゃん、磁気の影響を受けない矢がほしい」

「おっ、ミスリルで作るか」

「消耗品だから安く抑えたい」

「となるとカーボンかアルミだな。矢じりはミスリルメッキが良いだろう」

「うん、それで頼む」


 帰ってきて俺の配信チャンネルをみると、暴行を認めたなとのコメントが多数。

 詫びて死ねとかもう色々な罵詈雑言。

 くくくっ、良い具合だ。

 さて、ここからどう動くかだ。

 お見舞いに行って暴言を吐くのは基本だな。

 それともっと相手のことを知りたい。


 知ればもっと炎上させられるかも。

 くくく、楽しみになってきた。

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