第144話 牧場

 第3階層に入った。

 見渡す限りの草。

 なんの草かと言えば牧草だ。

 普通の4倍サイズの牛が草を食んでいる。


 そして、巨人の牧童が見える。

 巨人の牧童の武器は角笛だ。

 あれで殴ってくるのかな。

 いやいや、超音波攻撃かも。

 超音波はちょっと防げないな。

 鉄パイプの連打でいけるかも知れないが。


【牧場だね】

【牛も巨大サイズだ。象ほどはあるかな】

【どういう攻撃をしてくると思う?】

【うんこ攻撃】

【反芻攻撃】

【角突きという奴はいないのか】

【牛べろべろ攻撃】

【牧童の意味は?】

【この長閑な風景を壊すのですか。恥を知りなさい】


「やるよ。法律で禁止されない限りは」


【まあそうだな】

【法律違反で禁固刑を受ければ牢屋行きだ】

【巨人を守る会のロビー活動はどうなんだ】

【難航しているな。一般国民は巨人は恐ろしいものだと思っている。俺もそう思う】

【おっヤエちゃんが行った】


 バリスタが発射される。

 牧童巨人、カーボーイジャイアントは、角笛を吹いた。

 牛たちが集まってカーボーイジャイアントを守る。

 なんだよ、超音波じゃなかったのか、がっくりだ。


【牛の装甲が厚いな】

【脂肪が厚いんだろう】

【なら刺さるんじゃないか】

【皮が厚いんだろ】


 綺羅々きららが大剣を牛に叩きつける。

 牛は角で受けた。

 うん、器用な牛だ。

 いや、カーボーイジャイアントが指示を出したのか。


 俺なら連打で突破するな。

 シロガネが突撃。

 牛の喉に噛みついてデスロール。

 他の牛が援護に入った。

 跳ね飛ばされるシロガネ。


【牛、強いな】

【酸の貫通弾がある】

綺羅々きららにもな】


「ファイナルスラッシュ」


 綺羅々きららの一撃は牛の角を斬り飛ばした。

 切断面から白煙が上がる。

 うん、じれったいな。


 俺は素早く動いて牛の角を掴み、全ての牛を捻って転ばせた。


【念力か】

【CGくさいんだよな】

【おー、この隙に綺羅々きららちゃんが止めを刺した】

【ヤエちゃんと、シロガネもな】


「シロガネ、念力ご苦労様」


【念力の時に画像が乱れるんだよな。CGと切り換えているくさい】

【でも実際に止めを刺しているぞ】

【なにが真実なのか知っているのはおっさんだけだ】


「全て真実だよ。あの巨人ノミの市の品物が嘘だったというのか」


【あんなのは金掛ければ作れる】

【そうだな。俺はおっさんを信じるよ。中年は労わらないと】


 おっと牛が起き上がった。

 また角を捻って転ばす。


 段々と止めが刺されていき、最後にカーボーイジャイアントが討ち取られた。


「よし、巨大牛のバーベキューだ。ただで振る舞うぞ」


【やった。食いに行く】

【不味いかもな】

【大きいのは大味ってのが定説だから】


「味は食ってみてのお楽しみだ」


 次のフィールドを少し覗いた。

 野外に黒板と机があり、巨人たちが勉強してる。

 学校かよ。

 これは楽勝そうだな。

 だが牛の例もある。

 弱そうに見えて強いかもな。


 とりあえず、今日の討伐は終りだ。

 ダンジョンを出て広場で巨大牛の死骸を出してクレーンで吊り上げる。

 そして解体ショーが始まった。


 肉になってしまえば普通の牛だな。

 まずは俺が味見。

 バーベキューコンロで肉を焼きあげる。

 味付けは塩コショーとバターだ。

 うん良い匂い。

 パクリといった。

 甘みがあって柔らかい。

 毒の気配はしない。


 もっとも毒があればキナコとモチが気づく。

 彼らはそういうのに鼻が利くからな。


「食ってよし」


 集まった群衆が肉を食べ始めた。

 みんな笑顔だ。

 肉を食うと無言だが笑顔になる。


 巨人を守る会の人間が恨めしそうにみてる。

 食いたきゃ食ったらいいのに。

 俺は気にしない。


【ゴチになりました】

【あざす】

【結構良い肉だった】

【熟成してないのにこの美味さだと、適切にやれば】


「まだ、巨大牛の死骸はたくさんある。売り出す予定だ」


【巨大牛は実在したな。あれを作り物という奴はいないだろ】

【いや分からんぞ。人魚のミイラだって作られた物だ】

【おっさんを俺は信じるよ】


 コボルトとケットシーに良いお土産になった。

 あの牛を生きたまま捕まえて、畜産できないかな。

 普通の人には無理か。


 カーボーイジャイアントは生かしても良いような気がする。

 ダンジョンコアを討伐したら、牧場フィールドは保護区にしよう。

 金さえあればそれぐらいできる。

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