第187話 なんちゃって陰陽道

 十条じゅうじょうの机に花瓶が飾られてた。

 そして落書きが。

 古典的だな。


 俺はニヤニヤしている女生徒の机とそれを入れ替えた。

 名付けて、机燕返し。


 ついでにニヤニヤしている奴の顔にマーカーで落書きした。


「おん、まゆきらてい、そわか」


 十条じゅうじょうが何やら手を組んで唱える。

 アドリブを利かせたのか。

 おお、雰囲気出てる。


 さっき虐めてた奴のひとりと机を入れ替えた。

 一瞬の早業だ。


「あれっ、私の机が」


 苛めっ子が慌てている。


【つまらん】

【これから面白くなるんだろう】

【序盤だよ序盤】


「きゃはは、それ受ける」


 苛めっ子達が仲間の顔を見て笑っている。

 そして、自分もかと気づいて鏡を見る。

 それて慌てて顔をこすり始めた。


【なに? なにやったの】


「顔に落書きしたんだよ」


【モザイク掛かっていると顔の落書きが良く分からん】

【ええと、呪術でやったことにするのか】


「このゴミ箱やりやがったな。どうやった」

「私の陰陽道を恐れよ。おん、まゆきらてい、そわか」


 はいはい、リクエストね。

 俺は風より早く動き、苛めっ子達のスカートをめくった。


「きゃー」

「ちょっと、スキルに目覚めたってこと?」

「くっ、スキルぐらいで良い気になるな」

「でもやばいよ。なにされるか分かんない」


【おいモザイクで見えないんだが】

【モザイクが今日ほど恨めしく思ったことはない】

【呪術設定か。見えない速さで動けば透明人間か】

【CG確定だな】


「そっちが手出ししないなら、陰陽道は使わない」

「くっ」


 苛めっ子は十条じゅうじょうを無視することに決めたようだ。


【ちょっと設定に無理がある】

【あんまりおもしろくないな】

【モザイクが邪魔だ】

【必死だなわら】

【女子中学生のパンチラは価値がある】

【お巡りさんこいつです】


 とりあえずこれで良い。

 授業が終わり、十条の様子を見に行くと、苛めっ子に囲まれてた。


「おん、まゆきらてい、そわか」


 ヤングファントムの俺を見て確認した十条が手を組んで呪文を唱える。

 俺は苛めっ子の腕を折った。


「ぎゃー」

「あー」

「痛い。許して」



 ポーションを掛けて元通り。


【暴行罪で逮捕】

【ついにおっさんが罪を犯したな】

【でも映像に折った瞬間が写ってないぞ。カメラがぶれただけだ】

【お前ら馬鹿か。CGの映像では罪に問えない】


「おぼえてろ」


 苛めっ子達が去って行った。


「師匠、師匠みたいになりたいです」

「よし、ここに行って俺の紹介ですと言え。ダンジョンでのアルバイトは儲かるし。レベルが上がって、鉄パイプで殴られたぐらいではなんともないぞ」

「はい」


【パワーレベリングするのか】

【まあそれが手っ取り早い】


 さて、帰るか。

 教室に戻るとパシらせた奴らが待ち構えてた。


「ダンジョン行くぞ。お前は荷物持ちだ」


 こういう展開もいいな。

 そして、危機が訪れ、覚醒する。

 もう既に覚醒済みなんだけどな。


【こういう展開は良いかもな】

【ハプニング希望】

【エロ希望】

【ダンジョンにエロを求めたらいかんだろ】

【サキュバスとか出て来ないかな】


「嫌だけど」

「来なかったら分かっているだろ」


 俺は渋々頷いた。

 武器はいつも使っている鉄パイプだ。

 それを取り出した。


「お前、その鉄パイプ血がついているじゃないか」


 パシらせた苛めっ子達がビビる。


【おお、早くも正体露見か】

【なんか面白い答え希望】


「ふひひっ、やだなペンキだよ。ペンキに決まっているじゃないか」

「不気味な奴だな。なんで学校に鉄パイプを持って来てる」


【座布団、1枚持っていけ】

【おっ、鋭い突っ込み】

【どう言い訳するのか】


「き、近所のチワワが吠えるのが怖くて。鉄パイプなしじゃ通れない」

「チワワが怖いのか。心配して損したぜ。ビビらせるなよ」


【俺はチワワはあの震えが怖い。死にそうなんだもの】

【そうだな。今にも倒れそうって感じ】

【そういう意味じゃ怖いかもな】

【小型犬の方がキャンキャン吠えるイメージ】

【大型犬は吠えなくても怖い。吠えても怖いけど】

【そこで中型犬ですよ。安定の可愛さ。大き過ぎず、小さ過ぎず】

【中型犬にも勝てる気がしない】

【犬の話は盛り上がるな】

【動物人気は根強い】


 苛めっ子達とダンジョンに行くことになった。

 こいつらのお手並み拝見といこう。

 面白い映像が撮れるといいな。

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