第186話 急展開
パシリ認定されたらしい。
【どうなるんだ】
【無双してスプラッタか】
「そんなん自分で買ってこいよ」
「こいつ、勉強も運動もできないくせに生意気だな」
「締めて現実を分からせようぜ」
「そうだな。一回締めれば言うことを聞くさ」
俺は腕を掴まれ、校舎裏に連れて行かれた。
「今度口答えしたらこうだ」
腹にパンチを入れられた。
ぜんぜん痛くはない。
「いてぇ、タイヤ殴ったみたいだ。鉄板入れてないよな」
「痛い。やめて」
「気のせいか」
【いまいちな展開】
【面白くないな】
【リアクションがいまいち。もっと両方が大げさに痛がらないと】
【虐め配信だというので来ました】
【CGだけどな】
【いや、俺は実写だと信じている】
【実写でサッカーボールが息で飛ばされるか】
「やわだな。とびび蹴り。ぐわっ、膝が割れた。絶対に割れた」
「こいつ、腹筋に力を入れているな。こういうのは呼吸を読むんだよ。そら、吐いた。ぐわっ。くそっ力入れやがった」
「痛い、痛い! やめて! ぐすん」
【泣き真似わざとらしい】
【演技は下手くそだな】
【モーションをCGに置き換えているんだろう】
【演技は本当にやっているのか】
【不良もエキストラがやっている?】
【知らんがな】
【やってそう。でも不良は演技が大げさじやなくて自然】
【俳優ならそうでしょう】
どういう反応が面白いのかな。
「くっそ、手が痛い」
「痛い、やめて。くくくっ」
【あーあ、笑い出したよ】
【不良はエキストラだな。突っ込みが入るでしょう】
【笑いは自然だな】
【うん、おっさんの演技などどうでも良い。エロを寄越せ】
【サッカーボールの時の吐息でスカートめくりできるんじゃないか】
【横からの風じゃめくれないだろう】
【いやCGにリアリティを言われても。面白ければオッケー】
【よし、スカートをめくれ】
「こいつ、変な声を出しやがって」
「とにかくパシリはやらない」
「タコ殴りだ」
殴る蹴るされた。
ぜんぜん痛くない。
「俺、足首捻った」
「俺も手首が痛い」
「俺もだ」
【最強設定はそのままなのか】
【つまらないシナリオだ】
【うーん、不良にボコられて、道場の門を叩いて最強になるとか。そういう設定ならな】
【古典的だが、スポ根展開は鉄板だから外しちゃだめ】
【いまから修正は効かんだろう】
【つまりオワコン】
【ここはエスパー路線じゃないか。能力を隠して生きている主人公が、組織に狙われるみたいな】
【それしかないな】
「もう腹は辞めて。は、腹が痛い。くくくっ」
「ちっ、痣が残ると厄介だ。こんな目に遭いたくなかったら、次は素直に従うんだな」
「次はケツバットしようぜ」
「竹刀もいいな」
【また笑っているよ】
【とにかくここらで新展開を見せろよ。でないともう見ない】
【所詮、素人の動画だろう。なに期待してんだよ】
【正論言われてもな】
【とにかく急展開だ】
【昔の彼女があなたの子供よと言って押し付けて来るとか】
【中学生にか。ワラタ】
あー、いまいちだな。
スポ根路線は駄目だな。
全力を出したらミンチだ。
敵対組織ね。
都合よく出てくるわけないから、こっちで作るしかないのか。
うーん、知り合いでそんな奴はいない。
知り合いはみんなおっさんだ。
買取場や武器工房のおっさんが転校してきたらギャグだ。
ギャグやるなら。
明日はとろろ汁でも持ってこよう。
苛めっ子にこっそり塗るんだ。
きっと面白いリアクションが見れるぞ。
「
購買でパンを買ってひとり寂しく食べる。
【ぼっちか。つまらんな】
【女の子が天から降って来るかもな】
【まさか】
見上げたら本当に女生徒が降って来る。
俺は思いっ切り息を吹いた。
減速する女生徒。
俺は仮面を被り、卵をキャッチするイメージで優しく受け止めた。
「何で死んでないの」
「死にたかったのか?」
「それより何で仮面」
「素顔を晒せないからな」
「その仮面知っているわ。ファントムが着けてたレプリカでしょう」
いや本物だけどな。
収納鞄からさっき出した。
「そうレプリカだ」
「でも校舎から飛び降りた私を無傷で助けるなんて、本物みたい」
【おお、急展開。こんなのを待ってた】
【そのカメラじゃ、仮面見えないけど、ファントムレプリカね】
【女の子のモザイクを取れ。話はそれからだ】
「これに懲りたらもう飛び降りるな。足震えて、漏らしているぞ」
「普通、女の子にそんなことを言う」
【漏らしているのか。マニアックだな】
【ニッチだ】
「俺はヤングファントムだ。だから許される」
「ねぇ、私の彼氏になってよ」
【ヒロインが登場か。ヤエちゃんとの三角関係展開?】
【ドラマっぽくなってきた】
【ファントムの名前を騙るのか】
【ヤング付いているならギリセーフ】
「私は孤独を愛する男。断る」
「じゃあ弟子にしてよ」
「弟子なら良いぞ」
【弟子で好き好き路線か】
【ちょっと続きが楽しみだ】
「私、
「いいぞ実演してやる」
「やった」
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