第163話 甘噛み危険

 いつものメンバー復帰で討伐だ。


【嘘だ、ヤエちゃんと、綺羅々きららちゃんが討伐に加わるなんて】

【これは炎上がおっさんから飛び火するな】

【信じてたのに】


「パラサイトウルフはゲスなんだよ。その証拠を見せてやる」


 ラブリーネストの3階層、山フィールドを行く。

 地下に山があるなんて驚きだが、ダンジョンだからな。


 ほら、パラサイトウルフが寄って来た。


「手を出すなよ」


 弥衣やえ達に指示する。

 俺はパラサイトウルフ達を撫で始めた。


「くーん」


 気持ちよさそうな甘えた声を出していても分かる。

 殺気が漏れているんだよ。


「がうっ」


 突然、パラサイトウルフが俺に噛みつこうとする。

 俺はパラサイトウルフの頭を殴って倒した。


「見ただろ。これが本性だ」


【撫で方が悪いだけじゃないか。犬とか猫とかも機嫌悪かったりすると噛みつくぞ】

【執拗に撫でたりした時もな】

【一度甘噛みされそうになったぐらいで殺すおっさんが分からない】


「もう一度やるぞ」


 複数同時に撫でる。

 そして、そいつらが一斉に牙を剥いた。

 俺は殴って退治した。


「ほらな」


【一斉にそうなったのは、群れで生きる生き物だから。犬とは違うけど、そういうこともあるさ】

【おっさんの撫で方が下手だし、愛情がないからじゃね。ペットは飼い主の気持ちが分かる】

【殺すの前提の人には馴れない】


「とにかく、俺はこいつらが嫌いだ。文句あるか」


【嫌いなら無視しろよ。殺すことはないだろ】

【そうだ。命を大事にとか言われて育ってないのか】

【可愛いは正義】


 どうやら、こいつらに何を言っても無駄なようだ。


「虐殺の時間だ。ヒャッハー」


【結局、そうするのかよ】

【ラブリードッグが可哀想でみてられん】

【確保隊の到着はまだか】

【今、2階層だ。明日には追いつく】

【おっさんの討伐より先に確保するのだ】


 肉でおびき寄せ、マシンボウガンで殺す。

 そして、山の頂上にボス部屋の扉が見えた。


 扉をくぐると、やはりでかいパラサイトウルフがいる。

 牙がきらりと光る。


「くーん」


「馬鹿のひとつ覚えみたいに甘えた声だしやがって」


 ハチの巣にしてやった。


【酷い】

【ところで1階層のボス部屋はどうやって討伐したの】

【いなかったらしい。このダンジョン、ボスが復活しないみたい】

【連れ出せるのなら、巨大ラブリードッグに埋もれたいのに】


 ポータルに登録して今日はここまでだな。

 ファントムとして、パラサイトウルフが襲撃討伐するマッチポンプ事件を起こす。


「精神魔法、素直になーれ」

「きゃあ。誰か」


 俺はドアを引き千切った。


「大丈夫か。怪我は? このモンスターめ。成敗」


 パラサイトウルフを撲殺。


「心が痛い」

「ファントムヒール。どうだ」

「良くなりました。ああ、スノーちゃん」

「奴は猛獣なんだ。一度人間の味を覚えると、何度も襲うようになる」

「そんな。でも事実なんですね」

「これはドアの修理代だ」


 10万円ほど置いて立ち去った。

 さて次だ。


「精神魔法、素直になーれ」

「きゃあ。助けて」


 俺はドアを引き千切った。


「大丈夫か。怪我は? このモンスターめ。成敗」


 パラサイトウルフを撲殺。


「ああ、クリームちゃん。あなたなんてことをするんです。クリームちゃんを返して下さい」

「奴は猛獣なんだ。一度人間の味を覚えると、何度も襲うようになる」

「信じません。あなたを器物破損で訴えます」

「とにかく治療をファントムヒール。今回の一連のことは動画にしてある。それを見て再度考えるんだな」

「絶対に訴えます」


 こういう奴が出て来るよな。


「助けを求める声も録音されている。諦めるんだな」

「それは……とにかく納得いきません」

「よく考えることだ」


 そう言って俺は去った。

 弥衣やえに頼んでファントムの弁護士の窓口を作った。

 匿名でも弁護士に仕事の依頼は出来る。

 裁判だって名称不詳でも大丈夫だ。

 刑事には弁護が対応する。

 どうしてもの時は俺が仮面を被って対応することにした。


 概ねファントムの活動は支持されているようだ。

 噛まれた傷が甘噛みと言えないほど深いからね。


 パラサイトウルフ自体は弱いので、死んだ人はいない。

 よし、ファントムのファンクラブにもてこ入れするぞ。

 元偽業者を集めてグッズを作らせる。


 ファントムフィギュアや写真集、カードとかいろいろだ。

 ファントムが捕まるかどうかは人気に掛かっていると根拠はないが思った。

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