第91話 記者会見配信

 トカゲの楽園の9階層。

 出てきたのは火を吐くトカゲ。


「ファイヤーリザードだな」


【別名、バーナーとかライターとか呼ばれている】


 シロガネが嬉しそう、尻尾を振って近寄りブレス合戦を始めた。

 ブレスは拮抗してる。


 俺はファイヤーリザードの背中に飛び乗り、キャメルクラッチ。

 背中には炎は吹けないからな。


【妻を返せ】

【監禁してる人を解放しろ】

【いいかげん違うことを言えよ】

【犯罪者は配信をやめろ】

【それもあったな。馬鹿の一つ覚えだが】


 おっと、キャメルクラッチ。


「シロガネ、けん制ありがとな」

「わふん」


【アンチよ。何か面白いこと言えよ】

【無理だって、返せと、配信辞めろと、氏ねしか言わない】

【くそっ、こんなの間違ってる】

【現実を受け止めろよ】


 キャメルクラッチ、ボキっとな。


【ノアフォロが記者会見開くぞ】

【それはニュースだな。アンチとの対決が見られるのか】

【一般人は入れないだろう。まあ記者にもアンチはいるが】


「記者会見は初耳だ。討伐をサクッと終わらせないとな」


【背中ががら空きのバーナートカゲなんか目じゃない】

【一般人いれて記者会見してくれないかな】


「それはいいことを聞いた。俺がそういう記者会見をやってやろう」


 キャメルクラッチ、ボキっとな。


【それは面白そう】

【どこでやるの?】


「会場はどこにしよう」


 キャメルクラッチ、ボキっとな。


 弥衣やえが首を振った。


弥衣やえからNGが出ました」


【ヤエちゃんには頭が上がらない】

【たぶん会場を抑えるのが難しいんじゃないか】

【会場は今日明日じゃだめだ】


「仕方ない、配信で我慢してくれ。コメントの疑問になるべく答えよう」


 キャメルクラッチ、ボキっとな。


【アンチを総動員するぞ。拡散だ】

【逃げたら承知しないぞ】


 キャメルクラッチ、ボキっとな。


【奴をぎゃふんと言わせてやる】

【今までの配信でもぎゃふんと言わせられなかっただろう。無駄な努力はやめるんだな】

【生暖かく見守ってやろうぜ。こういう奴は面白いことをしでかしてくれそうだ】


 キャメルクラッチ、ボキっとな。

 いつの間にかボス部屋だ。

 どうせでかい火を吐く奴なのだろう。

 中に入るとボスは全身が炎に包まれていた。


 ええと。


【ヤエチャンネルを見たけど、おっさんの困り顔は珍しい】

【今度こそおっさん死ぬか】

【モンスター頑張れ】


「じゃじゃーん、こんな時は魔力イレーサーDX」


 弥衣やえが前に使ったアイテムを出して来た。

 俺はその粉を掴むと、豪快にボスめがけて投げた。

 ボスに魔力イレーサーDXが掛かると炎が消えた。


 チャンス。

 キャメルクラッチ、ボキっとな。


【だろうな。こんな落ちだと思ったよ】

【くそう、おっさんはどうやったら死ぬんだ】

【ダイヤドラゴンクラスを100体ぐらい持って来ればかな】


 よし、今日の討伐は終り。

 モンスターの素材の換金をを終え、家に帰り、配信のセッティングをする。


「記者会見配信を開始する」


【きた、待ってた】

【面白い問答を期待する】

【わくわく】


「じゃあ、ひとり1問な」


【記者会見ぽい】

【家族返せよ】


「知らん」


【知らんにワラタ】

【そんなのじゃ駄目だ】

【よし、俺が。何故監禁するんですか?】


「札束と健康の檻を作ったから、そこに閉じ込めたくなったからだ」


【くそう、返答は変わらずか。監禁を認めますか?】


「札束と健康の檻で監禁してる」


【そんな聞き方じゃだめだ。アンチよ、もっと頭使え】

【ヤエちゃんとはどこまで進んでますか?】

【おま、それを聞くか】


「そりゃあもう、色んなとこまで進んでるよ。ぐっちょり、ぬれぬれってものよ」


【くそう、俺はもうだめぽ】

【そんな質問するから】

【妻も札束と健康で監禁しているのか?】


「ああ、そうだ。健康でつやつやでテカテカだ。札束のほうは言うまでもないな」


【犯罪を犯してるんだろう。吐けよ】


「俺は悪だ。法にはとらわれない。だからこうして配信ができている」


【くそう、氏ね】


「お生憎様だが。若さを吸い取ってあと何年生きるか分からない。もしかして永遠に生きるかもな」


【警察は何してる】


「お前らの名誉棄損や脅迫、DVなら傷害を調べているんじゃないか」


【いくらだ。いくら払えば家族を返す】


「人身売買はしない。俺は悪だが、悪には悪の美学がある」


【ろくな質問が出ないな。よし、俺が。マスコミを訴えたそうですが、やつらに言いたい事は】


「別にないな。マスコミのことじゃないが、うるさい蠅が何匹いようが気にしない。うんこがあれば湧いて出るような奴らだからな」


【くはははっ、蠅ね。おっとマスコミのことじゃなかった】

【マスコミのことじゃないが、うんこ蠅ね。ぶんぶん飛び回っていらあ】


 それから、色々と質問を受けたが、面白いのはなかった。

 もっと面白いことを言えよと思わないでもない。

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