第98話 キャンペーン
人は生きているだけで悪発言が物議をかもしている。
【また炎上しそうなことを言うから】
【一生懸命生きている人を否定するな】
【ゴミ捨てだってルールを守ってやってます。それなのに死ねというんですが】
【ほらみろまたアンチが湧いて出た】
「生きていること自体が悪なんだよ。牛が食う飼料でどんだけの人が飢えないで済むか知っているか」
【おっさんが知ったかしている】
【菜食主義です。なんか文句ありますか】
【牛なんか高くてもう何年も食ってない】
「いや、牛は食ってなくてもビニールは使っているだろ。あれは最後埋め立てるか燃すかだ」
【知ったかだな】
【議論をすり替えたな】
【牛のことはどこ行った】
「とにかく人間は地球に迷惑を掛けて生きている悪なのだ。だが俺は悪を否定しない。悪を背負って生きる男なのだ」
【恰好つけてるな】
【早い話、物を大事にしてゴミを出さない生活をしましょうと言いたいのだな】
「俺と部下以外はな」
【おっさんが特権階級を気取るのか】
【許せん】
【人間が生きているだけで悪発言を取り消して謝罪しろ】
「俺は悪だから言いたい事をいう。悔しかったら告訴したまえ」
【くっ、告訴したいが、誰かやってくれ】
【普通に考えておっさんに勝てないだろ。あの発言は理に適っている】
【勝てないわけないじゃないか。早く死ねと言っているんだぞ】
【言ってない。人間が生きているだけで悪だとしか】
【そうだ。悪を背負う覚悟はあるかと言っている】
「悪の自覚のない悪党が一番始末に負えない」
【言いたいことは分かるけどな】
【言い方がな】
【全人類を悪というその傲慢さ。地獄に落ちろ】
「全人類は悪、まさしくその通りだ。何かキャンペーンをやりたい。CMでも作ろうか。人類はこれだけ悪行を重ねているって」
【やってみそ】
【おっさんならやるぞ】
【そんなCM流されたら自殺者が急増するぞ。ただでさえ生きているのがつらい奴が多いんだから】
「それは可哀想だな。つらい奴らを虐めるつもりはない」
さてどうしよう。
【消費が悪だとか。ゴミを出すのが悪だと言って自殺者が増えるのか?】
【増えたら責任とれるのか】
「そうだ。懸賞金を掛けよう。悪を成敗したら金を払うのだ。俺以外の悪は滅ぶべし」
【具体的には?】
「ゴミをいかに減らしたかを報告してもらい、俺が途上国に支援するのだ」
【ゴミ拾いとかにも出すのだよね】
「10億円規模を考えている」
【くっ、持っている奴はこれだから】
【騙されないぞ。人間悪発言を謝罪しろ】
【ゴミ減らすキャンペーンいいんじゃね】
「ゴミをグラトニーに食わせたいから、俺の所に持って来たらいくらかお駄賃を払う」
【発言の謝罪はどうなった】
【無駄だよ。おっさんは聞く耳持たない】
「謝罪などしない。ゴミを集めてどれだけ人間が罪深いか発表するつもりだ。それで俺の発言が的をえているか分かるだろう」
グラトニーの養殖場に様子を見に行った。
グラトニーの飼育場所は、魔力イレーサーDXを塗られた壁で仕切られている。
今は試行錯誤の段階らしい。
ゴミをたくさんやったり、適度にしたり、少なめにしたり、増える条件を探している。
「どうかな」
「ダンジョンが産みだすというか、召喚するまで待つのが早いみたいです。幸いダンジョンの別の所に持って行くと、数が少なくなったとダンジョンが勘違いして召喚してきます」
「別の場所に持って行くとなにか問題は?」
「元の場所に帰りたがるだけです。でもそこは魔力イレーサーDXの板で囲えば逃げ出せません」
「よし、ゴミをどんどん処理するぞ」
「ゴミに触れると有毒な物質など吸い込んだりしますから、それが問題ですね」
「封印みたいな物があるといいのだが」
「ありますよ封印スキル」
「俺も持っているかな。封印スキル発動」
おお、発動した。
でこのままグラトニーに食わせると。
封印ごと食ったな。
「それと解毒スキルを使えば更に良いかと」
「分かった手配する」
ゴミってのは予想以上に厄介だ。
有毒ガスまで出すとはな。
「私達は1時間ですけど、1日中、ゴミ山の中で仕事している人もいるんですよね。何か装備が開発できないかと」
「グラトニーマテリアルの匂い消しがあるから、あれを使えば有毒ガスも消せるかも。でも、たぶん研究しているような気がする」
「そうですね。たぶん開発中でしょう」
空気中の有毒物質の解毒か。
心の片隅に置いておこう。
ダンジョン素材で良いのがあるかも知れない。
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