第197話 写生大会
探偵ごっこは今日は休み。
象ヶ丘自然公園での写生大会。
「写生大会なんてだるいぜ。
と
「よせ」
【何か気づいているリーダー】
【おっさん臭だろう】
【加齢臭な】
「うん、やっておく」
「ほら、
「行こうぜ」
「なっ、リーダー」
「だがよ。ああ、もう。ああ、そうだな」
【煮え切らないリーダー】
【リーダー失格だ】
「よし頑張って描いちゃうぞ」
俺は手に絵の具を塗った。
それで手形を押す。
【意味わかんねー】
【きっと、再提出だろう】
【いや、やる気のない先生なら通る】
【賭けしようぜ】
【通らないに1票】
【じゃあ通るに】
【停学に】
【職員室呼び出しに】
【女の子に惚れられる】
【願望書くなよ。破り捨てられるに】
次は足形だ。
靴で絵を描く。
ぐひゃひゃ、傑作ができた。
次は葉っぱを絵具で貼り付けよう。
最後は公園銅像の顔に絵の具を塗って魚拓。
おっと、俺のを忘れてた。
俺のは傑作にしないとな。
線を1本描いた。
それだけ。
意味が分からんだろ、それが良い。
【抽象画にしても酷い】
【アートのつもりじゃね】
【さあ提出だ】
「先生、描けました」
「ほう見せてみなさい」
先生の顔が曇る。
なんて言おうか考えているのか。
絵を裏返し名前を見て頷いた。
「時間内はみんなといるように」
【受け取ったぞ】
【お叱りの言葉もない】
【あれで良いのか】
【名前見て納得してたな】
【不良が怖い先生だと見た】
【事なかれ主義反対】
【つまらん】
【これは傑作だ。だがマイナス100万円の価値だぐらい言えないのか】
暇なので
「一本線だけの絵を提出したけど何にも言われなかった」
「提出すれば良いみたい。でも赤点に近づくけど」
【赤点という結果か。みんな外れたな】
【ヤエちゃん、絵が上手い】
【いや、アートだと考えるとあの絵でも点数は貰えるんじゃね】
【どこがだよ。落書きだぞ】
【言い切れるのか】
「さっきの絵はスマホで撮影しておいた。それをポチっとな」
【どこへ送ったんだ】
【知らんよ】
【早く説明しろ】
「ほら送られて来た」
アンテナショップに俺の絵の複製が並んだ画像が写る。
【あの絵が1000円。狂っている】
【買っている写真もあるぞ】
【サクラだよ】
【コボルトとケットシーはもれなくおっさん信者】
【写真集が懐かしいな】
【そんなこともあったな】
【大量捨てられたんだよな】
【うんうん、ヤエちゃんフィギュアほしさにおっさんは捨てられた】
「あれは悪夢だったな」
【でもコボルトとケットシーが拾ってくれたからいいじゃん】
【今回は捨てられはしないな】
【そもそも買わない。フィギュアでも付かない限りは】
「葉っぱを貼り付けた絵が良いかも」
「返却されたら、あげるよ」
【おっさんの名前じゃないから無理じゃね】
【そうだな。不良たちの所に返却される】
【ドジにもほどがある】
「
「うん」
絵具を接着剤に葉っぱを貼り付ける。
うん、良い絵だ。
【確かにちょっと良いかもとは思った】
【葉っぱを貼り付けただけだぞ】
【うん、俺も良いかもと思った】
【絵とは言えないけどね】
【5枚のうちならこれが確かに一番まし】
おっと、ゴブリンがいるじゃないか。
スタンピードの時のハグレか。
ファントムの仮面を被ってバールで叩きのめした。
持っていた画用紙に緑色の血が付いた。
みると何だがいい形だ。
「題して断末魔。追加で提出しよう」
【断末魔って先生が呪われそう】
【うん、呪われそうな絵だったね】
【ハグレゴブリンが出るなんてな】
【スタンピードの生き残りだからしゃあない】
【強さは猿ぐらいだから。成人男性なら無傷で倒せる】
断末魔という絵を追加で提出した。
先生は露骨に嫌な顔をした。
ゴブリンの血が臭かったか。
すまん。
「血で書くのは臭いと知った」
【油絵とかも臭いぞ】
【独特な匂いだな】
【ゴブリンの血ほどじゃないだろう】
【赤点確実だな】
赤点のひとつやふたつ、気にしない。
でも、断末魔はいい出来だと思うんだ。
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