第9話 ドラスレと共に

「うちのパーティメンバーを紹介するわ。リーダーで前衛の宮原みやはら。前衛の与野よの。回復役の鴻巣こうのす。私と同じく後衛の北本きたもと


 宮原みやはらさんと与野よのさんは男性。

 二人とも屈強そうだ。

 鴻巣こうのすさんと北本きたもとさんは女性だ。

 頭が良さそうに見える。

 みんな若いな。

 20代だろうか。


埼京さいきょうです、カメラが回っているときは悪役ムーブなんでよろしく」

指扇さしおうぎです。交渉役とメカニックを担当してます」


 ドラゴンスレイヤーの面々もよろしくと返してくれた。

 なんでこうなったかと言うと、レベルアップの効果が著しいので、留美るみが呼び寄せたのだ。

 カメラのスイッチを入れる。


「野郎どもやるぜ」


【配信始まった】

【スタートするところかな】

【ドラスレと一緒なんだ】

【ドラスレに加入するのかな】

【氏ね】

【えらそうなのがムカつく。寄生中のくせして】

【前からヤエちゃんに寄生してたりして】

【ヤエちゃん目を覚ますんだ】


 ダンジョンに入る。


「いつもの手筈で行くぜ」

「待った。俺達でやらせて貰えないか」


 リーダーの宮原みやはらさんがそう言ってきた。

 ええと、こういう場合は。


「構わないよ。助けてほしい時はいつでも泣きついていいぜ」

「ああ、その時はバックアップよろしく」


【ドラスレはAランクパーティだぞ。敬え】

【ほんと死んで欲しい】

【藁人形に釘を打ち込みました】


 配信のチャンネル登録者数をみると1万2千を超えていた。

 やっぱり悪役ムーブは正解だったな。


 ドラスレのメンバーがスライムを取り囲む。

 全員でタコ殴り状態だが、あれはちょっと不味い。

 警告を発しようと思ったら、スライムが酸を吐いた。

 全員、回避行動を取ったが、与野よのさんの腕に酸が少し掛かってしまった。


「くそっ、骨が見えてる。エリクサーをくれ」

「スライムの逃げ道を開けろ。逃がしてやれ」


 逃げ道ができてスライムが逃げて行く。

 与野よのさんはというと、腕から白煙が上がっていて、籠手が溶けてなくなり、骨が見えている。

 回復役が何か液体を掛けた。

 顔をしかめてうめく与野よのさん。


【グロっ】

【スライム強い】

【キングスライム辺りだと肉が焼けただれる。骨が見えるのは初めてだ】

【Sランクモンスターってこと?】

【見る限りそうだな】

【普通のスライムに見えるけど】

【カメラの性能悪すぎ。一体何時の製品だよ】

【何かカラクリがあるんだよ。CGだと思う】

【ああ、ドラスレは金で雇われたんだな】


 そのあと与野よのさんはポーションを飲ませてもらっていた。

 みるみる間に肉が盛り上がり腕は元通りになった。


「酷い目にあったぜ」

「エリクサー代の1億円は給料から天引きにしますよ」


 留美るみがそう告げた。

 ああ、あれがエリクサーか。

 1億円もするのか。

 そんなものをスライムごときに使うなんて、勿体ない。


「食らった俺が間抜けだが、そりゃないぜ」

「疑っていたわけじゃないが、Sランク相当だな」


 はへっ、Sランク。

 嘘だろ、連打すれば軽く倒せるぜ。

 余裕のアナウンスするか。


「やっぱり俺がやらないと駄目なようだ。寄生させてやるよ。よく見とけ」


 留美るみが一撃。

 逃げたスライムを俺がボコボコにする。

 気分爽快。


「参ったな。連撃が早すぎて何発殴ったのか分からない。100発ぐらいは目で追えたが」


【どういうこと】

【だな30回ぐらい殴ったように見える】

【てか、カメラ買い替えろ。上手く撮れてないんだろ】


 相棒を馬鹿にするなよ

 おいおい、カメラが悪いってのか。

 それよりSランクってどういうこと。


 まあいいや。

 モンスターはモンスターだろ。

 それ以上でもそれ以下でもない。


 叩けば死ぬ。

 それだけだ。

 強かったらこっちが逃げれば良い。


 それからパーティを組むという1ヶ月の期間が過ぎた。

 ドラスレの連中はレベルが10上がったらしい。

 そんなに喜ぶことなのか。

 レベルなんて飾りだろ。

 強くなっているんだろうけど、ここのモンスターを一撃で倒せるような力じゃなきゃ、凄いとは言えない。


 さて、これから一芝居だ。

 悪役ムーブをかましてやるぜ。

 炎上するがいいさ。

 そして登録者数よもっと増えろ。


 だいぶ楽しくなってきた。

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