第37話 暴徒
コボルトとケットシー出ていけというデモ行進が始まったのをニュースで見た。
嫌な予感がしたので、彼らのマンションに急ぐ。
そこには鉄パイプ、スコップ、金属バット、バールなどを手に持った暴徒が暴れていた。
コボルトとケットシーは一列に手を繋いで彼らがマンションに来ないように阻んでいた。
くそっ、なんでやり返さないんだ。
コボルトとケットシーは良いように殴られている。
だが、見る限りダメージにはなってないようだ。
「どうしたらいいのか分からない。俺のせいだ。俺のせいなんだ。殴るなら俺を殴れ!」
俺は暴徒の中に飛び込んだ。
そしてひとりひとり、軽く叩いて回った。
ますます過激になっていく暴徒。
暴徒の一人がコボルトを殴った。
コボルトからは真っ赤な血が流れた。
なんで?
さっきまでダメージは無かったのに。
きっと魔力切れだ。
俺からも急速に力が抜けていくのを感じた。
後ろから殴られた。
血がたらりと流れるのが感じられた。
自己回復スキルが効いてない。
何が起こったんだ。
俺は無我夢中で叫んだ。
「うぉーーー!!!!!!」
マンションの窓ガラスが割れ、パラパラと落ちてきた。
俺の周りの暴徒は失神している。
こうすれば良かったのか。
「うぉーーー!!!!!!」
暴徒が無力化されていく。
救急車とパトカーが到着した。
遅いよ。
暴徒と俺は逮捕された。
大人しく聴取に答える。
とりあえずは帰してくれるらしい。
家に帰ると
「大変なの。デモ第二弾が計画されている。暴れたい奴ら来いって書かれてる」
「警察に任せよう。なんとか罪っていうのがあるだろう」
「凶器準備集合罪ね。もちろん通報したわ。でもこの流れは止まらないわ。コボルトとケットシーも無敵じゃないの。もちろんあなたもよ」
「どうしたら良いと思う」
「あれっ、ちょっとこれ見て」
【底辺おっさんは良い人だったんだな】
【コボルトとケットシーを虐める奴は許さん】
【負けないで下さい】
応援してますのコメントの数々。
何が起こった。
「ボス、ボスが良い人だってばらしてしまいました」
そう言って現れたのは
「ありがとな。流れが少し変わったよ」
「ボスが採って来た素材の薬で、どれだけの人が救われたか調べたんです。そして、声を上げてもらうように頼みました」
「それにしてもコボルトとケットシー達は最初のうちは無敵だったんだけどな。あれ何だったんだろ」
「推測だけど」
「教えて
「寄生スキルって寄生される側にデメリットしかないのかしら。もしメリットがあるとしたら、たぶん寄生主を守る機能があるんじゃないかな」
「俺が守ってるってこと」
「だぶん大きなダメージの場合に守っていると考えられるわ。暴徒との一件では限界を超えたのよ」
「なる」
「これは試す訳にはいかないけど、あなたは全てのコボルトとケットシーを守っているのよ。良くない言葉のスキルだけど、とても優しいスキルね。あなたらしいわ」
涙が溢れてきた。
「何だよ寄生スキルって、いつも思っていた。呪いを緩和できる能力が無かったら、きっと
「そうよあなたは立派な人。今回の件は残念だったけど、あなたは悪くない。少し悪ぶっただけじゃない」
「その化けの皮も剥がれたけどな。俺って人間は薄っぺらいのだな。上手く言えないけど、その薄っぺらさが今回の事件を起こしたような気がする」
「自分を責めないで」
「そうです。ボスは立派な人です。色んな事実を表に出してやっていけばなんとかなると思います」
「ちょっと考えさせてくれ」
俺は馬鹿だ。
寄生スキルの本当の姿さえ知らなかった。
知っていればもっとやりようはあったはず、思いつかないが、
はっとした。
俺は何も考えてないじゃないか。
難しいことが起こると
きっと、今後は
いかん。
成長しないと。
素晴らしいスキルが手に入ったんだ。
なんとかやれるはずだ。
俺は気づいた。
誰かに頼ってしまったり、頼りたいという心が、寄生スキルを生み出した。
そうに違いない。
俺は仲間に対して対等にやってきてない事に気づいた。
ぶっ叩くという簡単なことしか俺はやってない。
じゃあ何だというのは思いつかないけど。
何かあるはずだ。
時間はあるゆっくりと考えよう。
もうしばらくグラトニーの体採取でも良い。
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