第113話 マッサージ

 マグネットラークの弥衣やえ達だけの砂津波対策が思いつかない。

 しばらく第4階層はやめておいて、チアフルとして綺羅々きららと行動することにする。


 今日もこの前と同じ、獣のごった煮に来てる。

 対戦する相手はヒュージウルフ。

 まあでかいだけの狼なんで、そんなに強くない。


「ここは任せておけ」


 俺はバールでヒュージウルフを殴った。

 ヒュージウルフは死んだ。

 弥衣やえがナイフを手に解体に取り掛かる。


「さすがね」

一重ひとえから聞いたが、定期的にポーションを飲まないと駄目なんだって。で冒険者をやっているのか」

「始めはそうだったわ。でも生きていた証を残したいと思うようになったの」


 半ば生存を諦めているな。


「まるで遺作だな」

「諦めてはないわ。1億貯めればエリクサーに届くもの。今回のモンスターの素材でも200万はいくわ。それを50日繰り返すだけ」

「50日の間にはポーションを何度も飲まないといけないだろ。それと休養も必要だ」

「そうだけど。すこしずつ前進はしてるの。なぜか埼京さんという人がポーションを恵んでくれたし、もう少しなの」


「喋ってないで解体を手伝って」


 弥衣やえがちょっと怒った。

 3人で解体して魔石と毛皮を採る。


 アイテム鞄は1億はする。

 だから、ここには持ってきてない。

 俺達チアフルはCランクパーティだからな。


 少しでも綺羅々きららの病気の進行を遅らせるのは、レベルアップしか思いつかない。

 よし、パワーレベリングだ。


 ヒュージウルフが出たので、俺は前足を叩き折った。

 綺羅々きららが大剣を振り回し、首を落とした。

 これでいい。

 弥衣やえも俺の意図が分かったのか。

 それからはサポートに回った。


「なんかさっきから、私ばっかり止めを刺しているけど」

「生きた証を残すんでしょう。恰好いい所を残さないとね」

「二人に悪いわ」

「いいのよ。平治もそう思うでしょう」

「ああ、俺達の冒険は道楽みたいなものなんだ。もちろん金は稼ぎたいさ。でも命を懸けたりはしない」

「二人ともSランク冒険者みたいね。もう極めたという感じがするわ」


 何体かのモンスターを仕留めては解体し、半日ほどで討伐を終えた。


「分け前も要らないなんて」

「元気になったら返してもらうよ」

「そうね。それがいいわ」


「ありがと。有難く頂戴しておくわ」


 綺羅々きららをスポーツジムに呼び出した。


「お前ら今日はエロい所を見せてやる」


【何だって】

【モザイクなしか】

【大変だ。綺羅々きららちゃんに逃げるように言わないと】


「無駄だ。契約を結んだ以上断れない」


【卑劣な奴め】

【くそう。無力な俺が恨めしい】

【黙って見てろよ。モザイク無し映像キボンヌ】


「もちろん、モザイク無しだ」


【拡散せねば】

【こんなのって許せるか】

【一回も二回も同じだろ】


 綺羅々きららがレオタード姿で入って来た。


【レオタードとはまたマニアックな】

【くそう】

【今度こそ逮捕してやる。特定班はまだか】


「じゃあやるぞ」


 俺はカメラの映像を切った。


【あれっ、放送事故か】

【こんな落ちだよ】


「音声のみでお楽しみ下さい」


 俺が手で合図すると弥衣やえがやって来て、綺羅々きららはヨガマットの上に寝そべった。

 弥衣やえがマッサージを始める。


「くふん、そこ駄目。弱いの。優しくして。あっ、くうん」


 嬌声が流れる。

 俺はゴム手袋を濡らしてぴちゃびちゃと音を立てた。


 そして、マッサージが終わった。

 綺羅々きららには黄泉がえり丹を飲ませて終了。

 カメラの映像を再開した。


【確かにエロかった】

【くそう】

【あー】

綺羅々きららファンが発狂してるな】

【今回のは生々しかった】

【この調子で次も頼む】

【おっさん氏ね。もう許さん】

【氏ね以外のことは言えないのか】

【こんなの合意の上だろ。おっさんが札束で叩いたに決まってる】

綺羅々きららちゃんがそんなことするわけない】

真紀真紀まきまき綺羅々きららチャンネルだけど、調べてみたらおっさんに最初に暴行される前に、再生数が落ち込んでる】

【なにが言いたい】

【落ち目ってことだよ。落ち目のグラビアアイドルがヌードになったりするだろ】

【その発言は許さん】


 そうなのか。

 綺羅々きららの配信は落ち目だったのか。

 それで俺に絡んできたのだな。

 謎がひとつ解けた気分だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る