第15話 呪いの力

「どうだ。呪いは緩和されたか?」

「ばっちりですわん。一族の悲願がうううっ」

「体が軽いにゃん」


「そう言えば名前は? 俺はスグル」

「私はヤエ」

「キナコですわん」

「モチだにゃん」


 それは犬と猫によくある名前だけど良いのか。

 まあ本人は嫌がってはいないから良いのだろうな。


 よし実戦だ。


 オークに呪いの力を試す。

 呪いが浸透した鉄パイプでオークを打つと、オークは呪いに侵された。

 だが、いきなり振りかぶり流星打を打ち下ろしてきた。

 俺は意表を突かれたので、何の準備もしてなかった。

 鉄パイプで受けるだけが精一杯。

 おろっ、打撃が軽いな。


 呪いの効果はこんなにあるのか。

 俺は鉄の棍棒を払いのけ、オークの脛を強打した。

 一撃で骨が折れるオーク。

 こんなにも弱体化されるのか。

 神の呪いは半端ないな。


 とうぜん頭も一発で終わった。

 となるとコボルトとケットシーは強いのか。

 まあ強くても構わない。

 これから仲間になりそうだからな。


「しかし、何で少ない呪いの力で掛かるのかな」

「一般的に呪いは知性があると掛かり難いと言われていますわん」


 オークは馬鹿なんだろう。

 たしかに知性があるようには見えなかった。

 そうすると俺なんか要注意だな。


「一族のいる場所に案内してもらおうか」

「それがですわん」


 キナコの耳が伏せられた。

 そしてしょんぼり目になった。


「一族の大部分はメタルゴッドリッチに捕まっているにゃん」

「定期的に精気を吸い取られるためにわん」


「そのメタルゴッドリッチは強いのか」

「強いなんてものじゃないですわん。金属でできた骨のアンデッドモンスターで物理耐性、魔法耐性、状態異常耐性ですわん。弱点がないですわん」

「アンデッドに効果があるとされている火や聖属性でも駄目にゃん。おまけに魔法と近接戦闘を使いこなすにゃん」

「長く生きているので知識も豊富ですわん」


 出直した方が良いな。


「よし、二人だけでも外に出てみるか。一族は必ず助ける。約束する」

「出たいですわん」

「出たいにゃん」


「ブラッシングしてあげる」


 弥衣やえは完全に犬猫扱いだな。

 まあ嫌がってないから大丈夫か。


 Wi-Fiの電波が復活する。

 配信チャンネルとSNSを見ると死んだかというコメントで溢れかえっていた。

 カメラのスイッチを入れる。


「死んでなくて残念だったな。些細な放送事故だ」


【なんかモンスターを連れている。いや獣人か】

【ほんとだ。こういうのはかなり好き】

【癒される】


「この二人は、悪の妖精だ。悪戯を神に咎められてこのダンジョンに封印されていた。今は俺の奴隷だ」

「奴隷ですわん。主様がいないと生きていけないですわん」

「同じくですにゃん」


【喋ったぁ】

【何で日本語】

【使い魔にちょうど良い】

【強いのかな】


 コメントが二人に対する疑問で溢れかえる。

 知らんがなという疑問ばかりだ。


「これから仲間になる予定だ。そしてこれが新たに手に入れた力、悪属性だ」


 鉄パイプに呪いを浸透させる。

 黒いもやが立ち昇った。


【ちょっと格好いいと思った】

【鉄パイプじゃなきゃね】

【強そう】

【悪は正義に負ける】

【だな、成敗エンド一直線というところか】


 ダンジョンから出て、家に入る。


「ふんすっ、まずお風呂」


 弥衣やえが張り切っている。


「水浴びは好きですわん。でも、お湯はのぼせると思うので駄目ですわん」

「水浴びなどしなくても死なないにゃん」


「駄目よ、綺麗にしましょうね」


 死んだ目のモチの手を引いて、弥衣やえが風呂場に消えていく。

 覗いたりしないよ。

 紳士だからね。


 しばらくたって、びしょ濡れのモチが廊下に現れたかと思ったら、体を震わして水気を飛ばした。


「酷い目に遭ったにゃん」

「まあなんだ生きろ」


「嫌なことは一瞬で忘れるにゃん」


 キナコはドライヤーを掛けられたのかふわふわで現れた。


「さあてな、二人をどうしようか」

「妖精として登録したら良いんじゃない」


「ええとそれだとどうなるんだ」

「無難なのは、テイマー設定かな」


「服従スキルを持っているのでお役に立てるですわん?」


「それはどういうスキルなんだ」

「使うとレベルが高い方に従ってしまうわん」


 俺にもその力が流れ込んでいるのが分かった。

 数パーセントだけど、俺のレベルはかなり高いので効果は期待できる。

 メタルゴッドリッチは無理そうだが、大抵のものは服従するだろう。


「それと念話のスキルを持っているですわん」


「モチは?」

「疾風スキルと、霊視スキルにゃん」


「どっちもあって困るものじゃないな」


 この調子で一族を従えれば何千というスキルが手に入るに違いない。

 なんとしてもメタルゴッドリッチを倒さないと。

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