第12話 アイアンオーク

 一挙に金持ちになった。

 貯金が3億を超えるともう乾いた笑いしか出て来ない。

 今までの苦労はなんだったのか。

 気づけよ俺。


 だが、過去のことを言ってもしょうがない。

 俺は過去は振り返らない男。


「ふっ、買ってしまったぜ」


 俺の手にはポーションの瓶と最大容量アイテム鞄。

 お値段なんと、1億12万円+1億9,518万円。


【エリクサー買ったのか】

【素敵、抱いて♡】

【氏ね】

【その金を俺に寄越せ】

【妹が病気なんだ。頼むエリクサーを譲ってくれ】


「そんなのは知らんな。俺にどんな関係がある。だが、俺は優しい。一生奴隷になるというのなら、譲ってやらんこともない」


【そうか、じゃあ頼む】


「いいのか。寄生スキルでステータス、寿命、若さ、ありとあらゆるものを奪うぞ」


【血も涙もない奴だ】

【詐欺師は帰れ】

【そうだな。家族を助ける代償としては安いかもな】

【寿命っだって、たった数パーセントだろう。安い安い】

【じゃあお前が立候補してみろよ】


 寿命の件は弥衣やえにそう言えと言われた。

 金品を要求する奴にはそれぐらい言ってもいいそうだ。

 弥衣やえは賢いな。

 俺だったら妹の治療に使うなんて言われたら、エリクサーを譲ってしまいそう。


「どうだ、愚民共、エリクサー羨ましいか? だがやらん」


【お願い頂戴。くれたらパフパフしてあげる】

【落ちが見えた。お前太った男だろう】

【何でばれた】


 さて、雑談はこれぐらいにして、討伐に行くか。

 今日はトカゲより奥へ行く。


 トカゲより奥に行くと2メートルを超える巨体が現れた。

 オークだ。

 手には鉄の棍棒を持っている。

 勝てる気が全くしない。


 弥衣やえ、俺がやられたら迷わず逃げろと言いたいが、悪役ムーブとしては。


弥衣やえ、俺がやられそうになったら、助けを呼んで来い。分かってるな。金はいくら使っても良い。死ぬ気で走れよ」

「分かってる」


 いざとなったら配信で、弥衣やえに来るなと最後のメッセージを伝えよう。

 さて、この金属光沢のオークはどうかな。

 頭を叩きたいが、身長差はどうにもな。

 狙うは脛かな。

 足を折れば、頭の位置が下がるはずだ。


 俺はオークの脛を思いっ切り叩いた。

 くそっ、金属の塊を叩いたようだ。

 手が少し痺れる。

 逃げると思われていたオークは逃げなかった。


 鉄の棍棒を振り上げて振り下ろしてくる。

 鉄パイプで受けたところ、金属音がして、難なく受け止められた。


 パワー的には大したことがないな。

 俺は棍棒をかち上げ、オークの脛を連打した。

 オークは後退。


 やれているぞ。


「プギャャャ」


 オークの脛の骨が折れたようだ。

 オークの頭が下がった。

 だが、オークは棍棒を振りかぶり、炎の残像を残した棍棒で俺を打ち据えた。


 いい一撃を食らってしまった。

 俺の足元の地面が割れてクレーターになっている。

 どんだけの一撃だよ。


 頭がクラクラするガンガン痛いような気もする。


「エリクサーを!」


 弥衣やえの悲鳴に似た声。

 俺は腰のポーチからエリクサーを出して飲んだ。

 オークはと見ると、片膝ついて、体中から蒸気を出していた。

 凄まじい一撃だった。


 だが、隙ありだ。

 俺はオークの頭を連打。

 オークは息絶えた。


【オークの一撃凄かった】

【棍棒の軌道が光ってた】

【燃えてたんだよ】

【嘘だぁ。いくらなんでそれはない】

【大気圏突破じゃあるまいに】


 俺には分かる。

 俺の目には棍棒が燃えて光の軌跡を描いてた。

 オークの特殊能力は流星打だな。

 厄介だ。

 足を折ったら一度飛び退くのが吉か。


「危なかったね」

「あれぐらい俺にはチョロいぜ。俺から解放されなくて残念だったな。今日は特別にたっぷり可愛がってやる」


【このオーク野郎。おっさんこそが醜いオークだ】

【さっきの一撃で死ねば良かったのに】

【あれは光ってただけで大したことはないんだよ】

【地面はクレーターだけど】

【ここの地面は柔らかいんだ】

【オークいくらするのかしらね】

【ますます好きになりそう】

【オーク食べたら精がつくって本当?】

【栄養満点らしいぞ】


 俺はオークを売りに行った。


「こいつはまた凄いな。アイアンオークか。肉は食えそうにないな。皮は良い素材になりそうだが」

「どれぐらいになる?」

「ふむ、睾丸がいくらぐらいになるか、それ次第だな」


 睾丸は500万の値がついた。

 精力回復だけでなく、病人の体力をかなり回復するのだ。

 エリクサーほどではないが万能薬らしい。

 危篤状態の患者が持ち直したという話が入って来た。


 皮は100万の値が、魔石も100万の値が付いた。

 ええと、一体700万円か。

 かなり美味しいな。

 あの流星打を食らわなければだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る