第129話 一報‥‥‥

軍からの一報が届いたのは、クラウドが20歳の誕生日を迎える前の日だった。

かなりの慌てぶりでクラウドを探すメイドはクラウドを見つける。


「クラウド様ああ! 漸く見つけましたああ! 軍から手紙がああ! クラウド様に!」


「えっ? 僕に、軍から?」


クラウドは書籍室で何かの書類を書いている最中。その横にエミリも居て、何事か! という表情で、メイドを見ます。手紙をメイドから受け取ると、クラウドは直ぐに封を開けて、手紙を読みます。エミリも横から顔を覗かせて、手紙を見ます。そして‥‥‥クラウドは呆然とし‥‥‥


「父さんが‥‥‥死んだ‥‥」


「えっ! 嘘でしょう?」


エミリは驚き、呆然と立ち尽くすクラウドから手紙を取ると、手紙の内容を読みます。


『貴殿の父、クラウディ=デ=アウター総指揮官は、◯月◯日、ホクトルアの南部にて‥‥』


「暗殺され‥‥死亡が確認された!」


エミリが最後の部分を読むと、信じられない様な顔をして、クラウドを見る。

呆然と立つクラウドにエミリは、


「クラウド! クラウド! クラウド!!!」


クラウドの肩を持つと、クラウドを揺さぶる。我に帰るクラウドに、一瞬、ホッとするエミリにクラウドは、


「父さんが死んだ‥‥‥いや、暗殺!」


クラウドの父、クラウディが亡くなった事は、直ぐに屋敷や周りの人々に知れ渡り、深い悲しみに包まれた。ただ、クラウドだけは、母親の一件以来、クラウディを憎んでいた。これは父が母を寂しい思いをした、当然の報いだと、クラウドは思っていた。

しかしクラウドの最後の肉親。父を殺した者への怒りは収まらない。しかし‥


「父さんが殺されたのは、当然だ!」


まだ、父への憎しみが消えないクラウドは、心にもない言葉を発すると、エミリは、


「クラウド‥‥ごめんなさい」


クラウドに謝ると、いきなり顔をきつくすると、クラウドの右頬を


「パァーン」


エミリは平手打ちをした。唖然とするクラウド。


「クラウド‥‥貴方のお父様は、貴方が思っている様な、残酷な方ではなかったのよ!」


エミリはクラウドをまた、睨みつけます。クラウドも我に帰ると、エミリを睨みつけて、


「どうして、お前にわかるんだ!」


と。


そしてクラウドはエミリの顔、目を見ると、エミリの目から涙がこぼれ落ちた。初めて見るエミリの涙。

クラウドは戸惑う、エミリの涙に。

クラウドは後悔する、エミリに言った言葉を。


「エミリ‥‥‥ごめん」


クラウドは下を向くと、エミリになんて事を言ってしまったんだと、自分を恨んだ。

そんなクラウドを見たエミリは、


『クラウド、貴方は優しすぎるから‥‥‥』


クラウドに抱きつくと、涙を誤魔化す為、クラウドの胸に顔を埋めると、エミリは、


「‥‥‥クラウド、貴方のお父様からは言わないように言われたけど‥‥‥やはり、知るべきだわ」


エミリは二年前の話をします。クラウドの父から教えられた事を、クラウドには話さないように言われた事を。


そして、クラウドは知る。父が自分の為にしてきた事を。クラウドを護る事を。


「いま‥‥‥さら‥‥‥父さん‥‥‥」


そう呟くと、自分に抱きつくエミリを、抱き返すクラウドは、自分に怒りを覚え、天を仰ぐと


「ちくしょおおお!!!」


と、叫んだ!



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