第20話 僕はヘタレですよぉ〜
イグム家救出作戦開始!
ていえば聞こえはいいが、あのですね、結局僕一人でするんですよ。僕一人で。
けど、確かにこのままでは馬車が危ない。
どれぐらいの距離をこのスピードで走ってきたかは知らないけど、馬車の車輪がもつかどうか。
もったとしてもこの馬車、馬二頭で引っ張ってるんですよ。だから片方の馬がばてるとバランスを崩して馬車が横転してしまう。
しかも後10分も走れば街に入ってしまう。
そうなれは被害がどれだけ出るかわからない。
幸いここは街までの直線一本道。
「アイ、自動運転再開及び安全ロック解除」
「リョウカイ、アンゼンロックカイジョシマス」
「アイ、あの馬車に5メートル距離を置いて横付けで並走して」
「リョウカイ」
「光様、何をするんですの」なにか心配そうに言うメイル。
僕はハンドルを離すと後部座席の後ろに移動するとある物を二つ取り出した。
「な、なんだねそれは?」とタイル王。
「これはゴミ袋です」
「ゴミ袋?」イメイラ妃が聞いてきましたよ。
えーっ、以下略で、てここは略してはいけないか。
馬が暴走していた時大人しくさせる方法。
馬に光が遮る物で目隠しをする。そうすれば馬は大人しくなるんだとか。これは僕が元いた世界のキャンプ場の管理人から聞いた話なんだけど。まあ、競走馬の馬具(馬の視界を集中させる為の物)があるぐらいだから‥‥信じていいんですよね。
で、このゴミ袋を馬に被せて大人しくさせるんです(上手くいくかわかりませんけど)
で、どうやってて思います。これがアニメやラノベの主人公ならカッコよく馬車に飛び移り馬に被せて一件落着、てなるんですけど、
これを僕がやるんですよ!この僕が!
けどね、けどね、好きな子にあんな顔をされたら頑張ろう!て、気にもなりますよ。
僕はインカムをつけるとメイルに運転席に僕が助手席に移動しました。そして助手席側のウインドを開けるとそこから体半分を出します。つまり箱乗り状態です。
「ひ、光様!なな、何をするんですの!」
「何て、向こう側に飛び移るんですけど」
「光!何を考えている!」
「やめなさい光様!」
タイル王とイメイラ妃は驚いてますよ。けど一番驚いていたのはメイルなんです。しかしね、誰かがあちら側に飛び移らないと馬車は止まらないんです。正直、僕は嫌です。死ぬ程怖いです。よく昔?の暴走族の人は箱乗りなんてできたなと思いましたよ。
「アイ、馬車との並走を間隔1メートルまで近づけて」
「リョウカイ、チカズケマス」
4WD車は馬車との距離を1メートルまで近づけると並走した。
「ガガガガガ!!!!」と馬車の車輪の音が車内にまで響き渡ります。
「光様!やめて下さい!他の方法を考えましょう!」
メイルが言うと後部座席のタイル王達も頷く。
ありがとうメイル。僕も‥‥‥嫌だよおおおお!怖いよおおおお!しにたくないよおおおお!と心の叫び声は出さないで、
「しかたないよ。僕は男なんだなあ」
と、また何処かで聞いたセリフを吐くと‥‥
飛びましたよ。隣の馬車まで飛びました。ええ、飛びました!
で、上手く飛び移ることが出来ました。上手く?すみません違います。飛び移る時に御者が座り馬を操るとこの腰掛けに頭を打ちました。
「光様あああ!」とメイルが叫びます声が聞こえます。僕は大丈夫と左手をあげます。が
『痛いです。涙が出るほど痛いですよ』
ここはメイルに背を向け見られない様にできたのはラッキーでしたが‥‥‥‥‥‥
「あれ、ない、ない、ないですよお!」
そうかんじんのゴミ袋がないんです。で車の方を見るとメイルが握ってたのがゴミ袋です。
で、僕が飛び移る時メイルがやめさせようと僕に飛びついたんですね。けど間に合わなかったが、ポケットから出ていたゴミ袋には間に合ってしまいました。
で、で、次の作戦を考えましたよ。だってそんな悠長に考えてる余裕はなかったんです。
アイが
「アト3キロデマチニハイリマス」
と言いましたので。
で、僕はアイに
「アイ、馬車の前方に出て馬車を塞ぐ様に走ってくれ。車間距離は5メートルぐらいで」
「リョウカイシマシタ」
4WD車は速度を上げ馬車の前に出ると
「僕がいいと言うまで車間距離をゆっくりと詰めてくれ」
「リョウカイ」
車間距離を詰める4WD車。けどね4WD車が馬車の前に出ると僕の身体中にタイヤが跳ねた小石が当たりますよ。
「いて!いて!いて!いて!いて!」
で、4WD車が車間距離1メートルを切るぐらいでアイにこの車間距離を維持するように言います。
そして
「後方フォグランプ!オン!」
「リョウカイ」
すると車後方に取り付けられた四つのフォグランプが点灯。昼間でもかなり明るい物を使用していためそのライトに馬は驚き速度を落としましたよ。もしこれが驚いたと同時に急に止まったら僕は馬車から放り投げ出され馬車も大破してたかも。
ほんと、この様なことは勘弁してほしいですよ。今だに手足がガクブルです。
で、止まった馬車の所までメイル達が戻ってきました。
「光様!!!!」とメイルは叫びますが僕は「メイル!」と叫んで駆け寄りたかったんですが‥‥‥すみません。恐怖で身体がすくんで声も出ませんでしたよ。ハイ。
なんとか馬車から降りた僕にメイルが駆け寄ると僕に飛びつき、
「光様!光様!光様!光様!光様!」
と叫びながら僕に抱きついて‥‥‥‥‥‥
メイルは僕に抱きついて泣くんです。この時て本当に言葉が出ないもんなんですね。抱きついてきたメイルに何とか出た言葉が、
「ごめんなさい」の一言。
それを聞いたメイルはまた僕にギュと抱きついてきました。
この時に思いましたよ。僕はもうメイルの心の一部だと。そしてメイルも僕の心の一部だと。
「メイル、本当にごめんなさい」
「‥‥‥そう思うならあんな無茶はやめて」
僕は小さく頷くとまたメイルに謝った。までは良かったんですけどねえ、メイルの「あんな無茶」で僕が今していたことを思い出したら全身の力が抜けましたよ。
ええ、ええ、認めますとも、認めますとも。
『僕はヘタレですよぉ〜弱いですよぉ〜』
なにせメイルに抱きつかれたままその場で座り込んでしまいましたからねえ。
「光様、光様!大丈夫ですか!」
「お、お、思い出したら力が抜けたあ」
「‥‥‥えっ‥‥‥光様、クスクス」
急にクスクスと笑うメイルに僕は「?」ですよ。
で、タイル王が車から降りて馬車の中のイグム家の人を見てます。
「大丈夫だ!気を失っているだけだ!」
「‥‥‥良かった」と僕は呟きましたが馬車の方はもう走らせる事が出来ないほど痛んでいたので、(しかも馬二頭もどっかに逃げていきましたし)
しかたないので車のルーフボックスが二つあるんですがその上にさらにキャンプ用品を積んで荷台を空けました。で、運転席にはメイル。助手席にはイグム家の一人娘のミレン=ド=イグム。荷台にはイグム伯爵夫妻に乗ってもらいました。3人ともまだ気がついてなかったので。
で、僕は積んであった原付モンキーに乗ります。このモンキー、もとは50ccなんですけどこれも死んだオヤジがエンジンを載せ替えていじってます。
なにせこのモンキー、ハンドルが折りたためるのでこの4WD車の荷台なら余裕で乗ってしまいます。
で、で、僕はモンキーで、残りの人は車で城まで戻る事になりました。
(本当にこのあとが無事に終わりますように、て、終わらないような悪寒)
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