第140話 憎しみだけで
エミリはクリスタルの壁にしがみつき、涙して呟く‥‥‥
「クラウド」
と。
そして僕は思う。僕の心に流れ込んだクラウドの魂の一部に。そう‥‥‥いや、絶対に‥絶対に‥この二人は愛し合っているんだと。
命を掛けてお互いを護るほどに‥‥。
「人の欲が二人をこの様にしたのか‥‥」
僕は‥‥心の中で見た。クラウドの記憶を。
僕は‥‥心の中で感じた。クラウドの気持ちを。
僕は‥‥心の中で知った。 クラウドの本当に愛する人を。
だから、クラウドはこうするしかエミリを護る事が出来なかったんだと‥‥‥。
「悲しすぎるだろ!‥‥‥そして、あいつも!」
僕は振り返り、光の粒の妖精を見た。
今にも消えかかりそうな光の粒を。
そして‥
「お前も主人を愛していたんだな‥‥」
僕が言うと、光の粒の妖精はまるで睨みつける感じがわかるかの様に
「ああ! そうだ! 私の主人は‥私を愛してくれていた! 人を多く殺めても、そんな中でも私を愛してくれていた‥‥」
その言葉を聞いて、チーてマーが怒りながら
「それで光に‥‥」怒りに震えるマー。
「だからこの様な事をしたのか! 無関係の光に!」
チーが怒りながら言う。
「お前らに何がわかるかあ!」
怒鳴りながら言う光の粒の妖精に僕は、
「いや、わかるよ‥‥」
光の粒の妖精は反論する。
「嘘を言うな!」
「嘘じゃない」
「嘘だあ!」
「嘘じゃない」
「嘘だあ! 嘘だあ! 嘘だあ!」
泣き叫ぶ光の粒の妖精に僕は、
「わかるんだよ! クラウドの周りのクリスタルだけが傷付いている。お前、この5年間、毎日クリスタルに攻撃していただろう!」
そう言うと光の粒の妖精は「!」驚く。そして、
「私はこの5年間、こいつを憎む事だけで生きてきた! 現存してきた!」
と。この言葉を聞いて僕は、いや、僕を通してクラウドの魂が言う。
「憎しみだけで現存したと思うな! 今まで現存してこれたのはお前の主人のおかげだ! 生きて欲しいと思う主人の気持ちのおかげだ!」
「見てきたかの様に言うなあ!」
「見てきた? ああ! 見たよ! クラウドの魂を通して見たよ!感じたよ!お前の気持ちも!」
そう、嘘ではない。僕はクラウドの魂を通して見た、感じた。主人の気持ちも、妖精の気持ちも。そして、僕はある所に指を指す。
「あれがお前の主人だろ‥‥‥」
「‥‥‥どうして‥わかった」
驚き、言葉を詰まらせる光の粒の妖精。
僕が指差す所には、そこだけ綺麗に整えられた人骨があった。
そして妖精は「済まなかった」と、一言だけ言うと、その人骨の前で止まってしまった。まるでその人骨に寄り添う様に。
「光、この妖精、どうする?」
チーは怒っていたが、今の姿の妖精を見るとまるで哀れむように言った。
「チー、マー、お前達が一番わかっているんじゃないのか。どうすればいいのかは」
そう、この妖精はもうじき消える。その証拠にこの妖精、主人の名を言わなかった。つまり‥‥主人の記憶も‥‥消えてきている。
僕は言う、
「このままでいいのではないか‥‥‥」
と。チーとマーは仕方なく頷くと僕は、
「ありがとう」
一言だけ言った。
そして‥‥後はプリム宝石とクラウドを救う事だけだ(僕の左腕は後回し)と思った時にそれは起きた。
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