第139話 左腕‥‥‥
僕の目の前に転げ落ちる、左腕。
僕は誰のだ?と、床に落ちた左腕を凝視し、
両腕を動かそうとした時、
「左腕の感覚がない! まさか!」
僕は恐る恐る左側を見ると、あるべき所にあるべき物が無かった。
「僕の左‥‥‥腕?」
僕がそう自覚したと同時に、無くなった左腕の所から痛み以上の痛みが、そこを中心に体全体に走った。
「僕の‥‥‥う、う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
左腕を切り落とされた所から、大量の血が地面に流れ落ちる。そして何かに押しつぶされそうな痛みが‥‥それ以上の痛みが僕に襲いかかる。
「ガッアッ! なんだよ! なんだよ! なんだよ! なんだよ! なんだよ! なんだよ!」
僕は叫ぶ。痛みを誤魔化すために。だが無理だった。それどころか気を失いそうになる。僕は直ぐに【リペア】と【ヒーリング】を自分に掛けたが、傷は塞いだが、腕は再生しなかった。そう、切り落とされた腕を拾い、もう一度【リペア】をかけるしかない。
僕が左腕を拾おうとした時、
『あなたはまだ‥‥生きているのですか?』
僕の頭の中に響く声、テレパシー‥‥妖精なのか?
『私の主人を殺しておいて』
殺した? 僕が? 話が見えない。いったいコイツは何を言っているんだ。
『だから私はお前を殺す! いや、お前の中のあいつを殺す!』
殺す? 僕をかあ! 何故、何故僕を殺そうとする? ‥‥‥そういえばあいつ、なんて言った? “僕の中のあいつ”と言った。
あいつ? あいつて誰だ? あいつ‥‥‥
あいつ‥‥あいつ‥‥‥
「‥‥‥ハアッ! あいつは‥‥クラウドか!」
僕がその名を呼んだ時、僕の心に何かが流れ込んできた。記憶、感情、想い‥‥‥
クラウドの魂の一部が僕の心に流れ込んできた。
「‥‥‥そうか‥‥‥だからか‥」
僕は気づいた。あいつは‥‥‥クラウドは守りたかったんだと。そして奴も、僕の目の前にいる、あの光の粒の妖精も。けど‥‥‥
「光いいい!」
僕の背後の方から心配しそうにチーが、叫びながら走って来た。マーと、そしてエミリも。
「光、無事で‥‥‥光! その左腕‥‥‥」
「チー‥‥それ‥僕に対しての‥嫌味?」
僕はチー達を見ると、少し安心したのか、張り詰めた緊張が少し解れ、膝を地面に落とした。
「光‥大丈夫?」
心配そうに涙を浮かべて僕を見るマーに僕は、
「マー‥‥あの左腕‥‥凍らせてくれ‥‥」
マーは軽く頷くと、落ちた左腕に氷の魔法を掛けた。僕はそれを見ると、一先ず安心した。
エミリは5年間、結界の為にこの場に踏み入れる事が出来ないでいたので、周りを見ていた。そして、僕の背後にある、クリスタルの壁を見て、エミリは自分の目を疑った。そして、一歩、また一歩と壁に近づくと‥‥‥
「あ・あ・あ‥‥‥なぜ‥なぜ‥‥」
エミリはクリスタルの壁に両手を着くと、まるで目の前に恋人が居る様な目をしてクリスタルの中に閉じ込められた人を見た。
そして‥‥‥
「‥‥‥クラウド」
と、涙を流しながら呟いた。
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