第103話 イレイの行動
イレイの赤い4WD車が現在居る場所は、首都ベルガーから北へおよそ百二十キロ離れた場所。そして、僕の居る場所からは五十キロ離れた場所。
「イレイ、今からそちらに行くから、イレイはその場から離れて」
「光、まだハッキリとは解らないから、もう少し先に行き探索するわ!」
「イレイ、だけど‥‥‥」
僕がもう一度“その場から離れて”と言おうとしたが‥‥‥イレイから先に通信を切ってしまった。
僕としては、イレイと途中で合流してイレイの4WD車にクリエラさんを乗せて自分一人で行くつもりだったんですが‥‥‥
やはり彼女は人の上に立つ身の姫様。
簡単には下がりませんよ。
で、僕は助手席に乗るクリエラさんに
「すみませんクリエラさん。今からイレイの所に行きます」
するとクリエラさん、何か心配そうな顔をします。
「光様‥‥‥イレイ姫様は大丈夫でしょうか?」
「えっ? どう言うこと?」
僕はクリエラさんをチラッと見ます。
「イレイ姫様は昔から自分よりも他人の事を考え、思いやるお人です。今回の件も無茶な行動をしなければよいのですが‥‥‥」
僕もイレイのその、人を思いやる事や、責任感の人一倍強い性格は、プリム小国に居た時から見て来た。
プリム小国の街に行くと街の人達はイレイを見ると誰もが笑顔で挨拶をして行く。その笑顔は作り物ではなく、本当に心から出た笑顔なのは誰が見ても分かる程。
イレイは街で困っていた人を見ると、直ぐに手を差し伸べる程だ。
「このご時世、イレイ姫様の様な方は非常に珍しい。私はプリム小国に暮らせて感謝しています」
と人から言われるぐらいですから。
そんなイレイを少しでも安全な場所へ、と。
だから僕はイレイの元へ急いで行かなければ。
しかし今いる場所は山岳地帯の山道。
「アイ、自動運転をオフ。後、足回りをダウンヒル様に調整及びドライビングサポートを頼む」
「リョウカイ、ジドウウンテンオフ。ダウンヒルヨウオヨビドライビングサポートヲシマス」
僕はアイに指示を出すと、ハンドルを持ちます。
「すみませんクリエラさん。イレイの所に急ぎますのでスピードを上げます」
「えっ?」
僕はクリエラさんに言うと同時にアクセルを踏んだ。
道が砂混じりの砂利道な為、四つのタイヤが砂煙をあげ一瞬空回りをするが
「ジャリジャリジャリ、カカカ、ガガガ‥‥‥」
直ぐにタイヤのグリップが戻り加速する4WD車。
「きゃあ!」
とシートに一瞬体を押さえつけられるクリエラさん。後ろに居たチーとマーも驚いてます。
「クリエラさん、チーとマーも何かに捕まっていて下さい」
そしてアイに聞きます。
「アイ、イレイの居る所までは、どのぐらい掛かる?」
「イマノスピードダト、イチジカンデス」
「わかった」
さらに僕はアクセルを踏みます。
加速する4WD車。
そして‥‥‥“イレイ、無茶だけはしないでくれ!”とハンドルを握りながら心の中で叫んでいた。
◇◇◇◇
その頃イレイは、熱感知レーダーに反応がある方えと赤い4WD車を自動運転で走らせていた。
「アイ、まだ反応はありますか?」
「ハイ、ハンノウハ、ツヨクナッテキテマス」
アイの応答にイレイはもしかしたら見つけたかも、との喜びと僕の指示を無視して先に進んだことへの後悔の複雑な気持ちでいた。
だが、人一倍責任感の強いイレイは“光が少しでも楽になれば”との思いで、先に進む。
けど‥‥‥この行動が僕に取って忘れられない事になるんです。
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