第130話 父の亡骸

二日後、父クラウディの亡骸は屋敷に無言の帰宅をした。

軍、政府が中心になり、母エミリアがなくなった時以上の葬儀がおこなわれた。

そして、クラウドは父クラウディが言った、


『貴族、人の上に立つ者は、民の幸せを一番に考えなければならない』


を、葬儀の後にその言葉の意味を知る。


父の葬儀中、クラウドは涙を見せる事はなかった。エミリはクラウディの最後の別れの時にまるで、体の一部をもぎとられたような切実な痛みが心の中を巡った。そして泣いた。

クラウドはそんなエミリを支えていたが、父クラウディの最後の別れの顔を見ても、悲しみが湧いてこなかった。


葬儀が終わり暫くすると、メイドがクラウドの所に来ると、


「クラウド様に、何人かの民が面会を申し込んできているのですが‥‥‥」


「僕に面会?わかりました、今行きます」


クラウドは直ぐに、何人かの民が待つ部屋に行く。

部屋に入ると、そこには小さな子供が一人と母親だろうか、と、8人の民がソファーに座っていた。

そしてクラウドが部屋に入ってくると、

部屋に居た人達は、直ぐにソファーから立ち、クラウドに深々と頭を下げる。


えっ?と一瞬驚くクラウドと、横に居たエミリ。そして、この部屋に集まった、民達は言います。


「私達はクラウディ様に助けられた者達です」


「助けられた? そんな事父さんから一言も‥‥‥」


そして、民達は言います。

あの内乱の争いで、命を助けてもらった事を。

殆どの貴族は、自分の身を守る為に兵を動かしていた事を。

しかし、クラウディだけは民の為に兵を動かした事を。

内乱後の土地を自ら指揮を執り、また援助をし、復興に勤めた事を。


そして‥‥‥二年前の母エミリアが亡くなった日、父は、民達を守り、戦っていた事を知るクラウド。エミリアの命が後、僅かと知ってても、一人の命よりも、多くの人の命の為に、戦っていた事を。


クラウドは思った。自分が今まで考えていた愚かさを。母が亡くなった日、僕は母さんだけしか見てなかった。‥‥‥しかし、父さんは、全ての民を見ていたんだ。と。


クラウドはメイドを呼ぶと、


「すみません、この人達を父が眠る葬儀場まで案内を、お願いします」


「クラウド様‥‥‥わかりました。皆さまこちらへ」


メイドは、民達を葬儀場まで案内をした。

その時、小さな女の子がクラウドの前に来ると


「今度は、クラウド様が私達を護ってくれるの?」


と。クラウドは一瞬、躊躇するが、その小さな瞳を見ると、子供の目線まで腰を落とすと、


「ああ‥‥今度は僕が、君達を護ってあげるからね」


クラウドは女の子の小さな頭を優しく撫でると、女の子は笑顔を見せて、


「うん! ありがとう、クラウド様!」


そう言って、親の所へと行った。


「‥エミリ」


「なあに、クラウド」


「父さんの気持ち‥‥‥全てではないけど、わかったよ」


クラウドがそう言いながら立ち上がると、エミリはニコリと笑顔を見せて、クラウドの腕にしがみつきます。

そんなエミリを見て、クラウドは決心します。


「エミリ、僕に力を貸してくれるかい?」


「クラウド‥‥喜んで」


そして、クラウドとエミリは、クラウディを暗殺した、「自由の翼」に潜り込んだ。

だが‥‥‥。



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