第131話 哀しみのクラウド
クラウドは、母の形見、プリム宝石を囮に「自由の翼」の幹部とそれと繋がりのある貴族達を、ホクトルアの山間部に近い、クレバスの地下に集める事に、成功した。
「この場所はまだ、発掘されていないクリスタルが大量にあります。そして、このプリム宝石‥‥‥皆さん、もうお分かりですね」
クラウドが言うと、周りの幹部や貴族が歓喜する。
「これで、現政府、ブレイク王供を倒せる」
「それだけではない! 内乱、そして、近隣国と戦争をすれば、我々と武器商人が儲かる」
「民など、戦争の捨て駒だ! 民が減ればまた女性に産ませればいい!」
『自由の翼』の幹部や貴族は、好き勝手に言っている。
『この、外道供が!』
クラウドは、心の中で怒り、呟く。
「では、このプリム宝石を‥‥‥」
クラウドが言うと、幹部の一人が、
「わかった‥‥‥」
そう言うと、クラウドの左手に乗った、プリム宝石を取らず、クラウドの左手首をギュッと掴む。
「何をするのですか!」
「何を、か! クラウディの息子、クラウドよ! 我々がお前の事を知らないと?」
エミリがクラウドの前に、立ち塞がる。すると、スーッといつのまにか、エミリの両隣に女性が立ち、エミリの腕を掴んだ。「クッ! 離せ!」、叫び暴れるエミリの前に、また一人の女性が、そしてエミリの腹目掛け、「ズドッ!」、空気の塊の様なのが当たる。
「ガハアッ!」
「エミリ!」
叫ぶクラウド。だが、エミリは腹に喰らった物で、気を失いかけていた。そして、貴族の一人が言う。
「この宝石に、魔法で結界が張られていたのを知らなかったのか? 愚かな奴が!」
「結界だと!?」
「お前ら一族は、触ってもなんともないが、我々が触ると」
貴族の一人がクラウドの持つ、プリム宝石に手を出すと、
「バアチッ!」
かなり強い、静電気の様な物が走った。
「そんな‥‥‥」
「つまりは、この宝石は、アウター家以外の者が持つと、こうなるんだよ!まあ、こちらとしては、苦労せずプリム宝石が手に入ったからな」
薄らと笑みを浮かべる幹部と貴族。悔しがるクラウド、そして、
「こいつどうしますか?」
エミリの髪を鷲掴みにして、まるで生首を差し出すかの様に出す、女性達。
「おまえら、妖精付きか!」
クラウドは女性達を睨むと、
「我々の仲間にも、何人かの妖精付きがいてな。残念だったな、クラウド」
「こいつを殺してもいいですか?」
「あん? ああ、いいぞ!」
「では!」
エミリの首を跳ねる構えをする女性の姿の妖精に、クラウドは叫ぶ、
「まってくれ! エミリを殺さないでくれ!」
クラウドの言葉にエミリは苦しみながら、
「ダメ‥‥‥クラウド‥‥‥」
拒むエミリにクラウドは言う。
「こいつに、ここを守らせるのはどうか?妖精付きは主人の指示は、絶対だから‥‥‥」
周りに居た他の奴らは、クラウドを見ると、にやけながら、
「そいつはいいや! 面白い!」
そしてクラウドは頷くと、エミリの側に行きエミリの耳元で、
「エミリ、お前にはここで、死んでほしくない。だから」
「クラウド‥‥私は‥‥どうなっても」
「エミリ‥‥‥僕は君を愛してる。だから‥‥‥」
「クラウド‥‥ダメ‥」
クラウドはエミリから少し離れると叫びます。
「主人の名において言う! エミリよ! この場を護れ!」
エミリの動きが止まる。そして、エミリの心の言葉とは違う言葉が、
「わかりました!主人!」
と。
『私は‥こんな言葉言いたくない! クラウド!』
哀しみの心を殺してエミリを見るクラウド。やがて、クラウド達は洞窟の奥に行くと‥‥‥誰一人戻っては来なかった。
そして‥‥‥五年の歳月が流れた。
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