第150話 火砕流からの脱出

火砕流に光の4WD車が飲み込まれて、2分近くが経った。

イレイ、メイル、ミリアは自分の胸元で手を組み、一心不乱に祈った。


「「「光が無事に帰って来るように」」」


と。

しかし悪亜だけは、火砕流の恐怖を知っていた為、絶望感に近い心境でいた。


『火砕流に飲み込まれてから2分以上‥‥‥妖精の結界があっても、もう出て来ないと。光‥‥早く、早く出てきて!』


悪亜は火砕流を見つめ、焦る気持ちを抑えながら心の中で叫んでいた。




◇◇◇◇




エマージェンシーモード(リミッターが外された状態)の4WD車のアクセルを目一杯踏んだ。


「キーーーイーーーーン!」


甲高い音が辺りに響くと、4本のタイヤが勢いよく回り出すと、砂煙をあげてタイヤが空回りをする。すると今度はグリップが急に回復し、4WD車は勢い良く走り出した。

それは急加速するジェットコースターに匹敵するほど。

光達はシートに叩きつけられる。


「グゥッ!」


しかも緩い下り坂になっている為に、あっという間に150キロは越え、そこから更に加速する。


「ハンドルに手を置くのがやっとだ!」


光は心の中で叫んだ。喋りたくてもGが凄く歯を食いしばらなければ耐えられない。後部座席のクラウド達を見る余裕は皆無だ。


「この火砕流から出るまでの辛抱!‥‥」


火砕流から出るには一、二分ぐらいか。ただ光達には、その一、二分が三十分ぐらいに感じられた。


そして、


「ブワアァァ!!!」


火砕流の煙から勢いよく飛び出した。




◇◇◇◇




イレイ達が光の無事を祈っている間、悪亜は火砕流の方をまだ、見ていた。


「あなたの(五百年前の光)残したメッセージを聞いて希望はでるわよ。けど‥‥こればかりは実際に自分の目で見ないと信じられないの‥‥‥」


そう呟く悪亜。

確かにあれだけの火砕流を目の当たりにしたら、希望も絶望に変わってしまう。


が‥‥‥


悪亜がじっと火砕流を見つめた時、煙の中から何かが飛び出てくるのが見えた。悪亜は目を凝らすと、それは車だと直ぐにわかったが、


「なにあれ! 形が違う!」


悪亜は叫ぶと、双眼鏡を使い覗いた。その叫びにい、イレイ達は、「どうかしたの?」と悪亜を見る。

そして‥‥‥


「‥‥‥光!」


悪亜が叫ぶと、メイルが悪亜の持っている双眼鏡を奪い取り、


「どこ! 悪亜! どこ!!」


「あそこ!」


悪亜は指を指す方をメイルが双眼鏡で見ると


「‥‥‥居た! 光様! イレイ! ミリア! 光様は無事よ!」


メイルは悪亜に飛びついて喜びます。イレイとミリアは涙を流し喜んでます。


「ちょ、ちょっと! 喜ぶのは早いわよ!」


「「「えっ⁈」」」


驚く三人に、悪亜は言います。


「このままでは、光は確実に死ぬわ!だから私達が光を助けるのよ!」


と。



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