第151話 絶望から希望へ
「私達が光を助ける? 悪亜、どう言うことなの?」
イレイが悪亜に詰め寄ります。そりゃあねぇ、このままでは僕が死ぬと言われたら、詰め寄りたくもなりますよね。で、メイルが
「イレイ、落ち着いて!」
イレイの手を取ると、メイルはイレイの目を見て言います。こう言う場面では、イレイよりメイルの方が落ち着いているんですよね。
で、で、その二人のやり取りを見ていたミリアは、悪亜に、
「悪亜、光様に何かが起こるのですか?」
その問いに悪亜は軽く頷きます。
◇◇◇◇
火砕流から抜け出せた4WD車。
モードチェンジから既に3分は経っていた。
エマージェンシーモードは残り7分を切った。
「残り時間でどこまで逃げ切れる。それにしても、この火砕流はどこまで追いかけてくるんだ!」
そう、この火砕流はまだ追いかけてくる。アイに火山の噴火の規模がどれぐらいか聞きたかったが、噴石の飛来予想などの計算で、余計な容量は残ってなかった。
僕も、ハンドルを握り、固定するだけで手一杯だった。
実際の噴火の規模は、火山の噴火の煙が、成層圏まで達するほど。
それだけの規模の火砕流が、どこまで追いかけてくるか見当もできないでいただろう。
が、最悪は最悪を呼ぶとはよく言ったものだと、僕はアイの次のセリフで思った。
「ゼンポウ10キロサキニ、キョダイナクレパスガあります」
「クレパス? 規模は?」
「ナガサ三十キロ、ハバ最小で九百メートル」
「なあ! 三十に九百だって! 、アイ! 何処かに迂回路はないのか!」
「アリマセン」
僕はこの時、絶望と言う二文字が頭をよぎった。もし迂回路があったとしても、そこを目指している間に火砕流に飲み込まれてしまう。
ここまでなのか‥‥‥ここで終わってしまうのか‥‥‥僕は‥‥‥
「いやだ! 諦めたくない!」
そうだ!僕はイレイ達と約束したんだ! 必ず帰ると! しかし‥‥‥
「しかし、どうすればいいんだ‥‥‥」
僕はこのまま絶望に向かってハンドルを握っているのか! そんなの絶対に嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!‥‥‥
「‥‥ザアッアアア‥光‥ザアッ‥聞こえ」
諦めかけた僕の心に、一筋の光の声が聞こえた。その声は聞いたことがある声。懐かしい声。心を慰めてくれる声。そして僕に勇気を与えてくれる声。
「イレイ!」
「ザアッ‥‥光‥聞こえる」
「イレイ!」
僕はイレイの名を叫んだ。なぜ君がここにいるんだ、の言葉は出なかった。ただ、ただ嬉しかった。嬉しくて涙が出る程に。
「光、時間がないから良く聞いて。今から私の言う通り進んで!そうすれば‥‥‥光、必ず助かるから」
「イレイ‥‥‥うん! わかった!」
こんなに、こんなにも勇気が湧く声を聞いた事はない。こんなにも彼女に会いたいと思った事はない。こんなにも‥こんなにも‥こんなにも‥‥‥
この瞬間、僕の絶望は希望へと、いや、それ以上の物に変わった。
「必ず、いや! 絶対に帰るよ! イレイ!」
「うん! 待ってる!」
僕はイレイの指示通りに4WD車を走らせた。
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