第152話 自信

イレイの「必ず助かる」その言葉に、僕に希望の道が見えた。いや、イレイが導いてくれた。今の僕の状態から、イレイが女神の様に感じられた。


だが‥‥‥


この先にはクレパスが、巨大な口を開けたクレパスが待ち受けている。そこをどうするか?


「光‥良く聞いて‥‥」




◇◇◇◇




「悪亜、今なんて言ったの?」


イレイ達は驚き、悪亜にもう一度たずねる。


「光はクレパスを飛んで、こちらに来ようとするわ。けど‥‥‥今のままでは確実に失敗、下に落ちるわ!」


真剣な面持ちで悪亜は三人に話す。

その言葉に三人は愕然とします。

ミリアは膝まづき、顔を両手で覆って涙し、メイルは悪亜に「どうにかならないの!」と涙を流して詰め寄ります。


「悪亜‥その言葉を言う事は、何かあるんでしょ‥‥」


イレイは悪亜を睨みつけます。しかしその瞳は僅かな願い、光が助かる方法があるんだと、信じる瞳。


「ええ! あるわ! それは‥‥‥」



◇◇◇◇



「光‥良く聞いて! あなたは前方のクレパスを飛ぶのよ!」


「えっ! クレパスを飛ぶ!」


一瞬僕はイレイが冗談を言っているのでは?と思った。だが、イレイの言葉は、冗談には聞こえなかった。


「クレパスを飛ぶ? 無理だ!落ちてしまう!」


僕はいくらこの4WD車のスピードを出してもあのクレパスを飛び切ることは出来ないと思った。いくらイレイが飛べると言っても。


「悪亜が言ったの! 五百年前のあなたが‥‥光が飛べると!」


「五百年前の僕が‥‥けど‥」


やはり信じられない! 自信がない!


「信じて!私の言葉を! 信じて!光の両親が作った4WD車を!」


「えっ⁈」


僕はこの場面で何弱腰になっているんだ!

僕はどうしてこの4WD車を信じてあげれないんだ!

僕はどうして愛する人の言葉を信じてあげないんだ!

そう!それは‥‥自分の弱い心が、この世界に来る前の弱い自分がまた現れ始めたからだ!


「光様! あなたならできますわ!」

メイルの言葉が‥‥


「光様! あなたなら必ず!」

ミリアの言葉が‥‥


「光! 信じなさい!」

悪亜の言葉が‥‥


そして‥‥


「光! あなたなら出来るわ! だって見えるですもの! 私と、いえ、私達とあなたが共に住む未来が!」


イレイのいや、みんなの言葉が、僕に希望の‥‥勇気を奮い起こさせる。だから出来る。いや必ず助かる!そして約束通りに、みんなの元に帰るんだ!


「アイ! このウイングの角度調整はオートでできるのか!?」


「ハイ! デキマス!」


僕はアイにクレパスを飛んだ時の乱気流のサポートを頼んだ。これだけの車体からはみ出るほどのウイングだ!今はダウンホースをタイヤにかける為に前に倒しているが‥‥マイナス側に起こせば少しは飛ぶことが出来るはず。


「光、スキルは一回使用できるはずよ!」


「わかった! イレイ、ありがとう!」


徐々にクレパスに近づく4WD車。

アイが言う、


「アトゴヒャクデクレパス!ノコリヨンヒャク、サンビャク、ニヒャク、ヒャク‥」


僕はめい一杯アクセルを踏んだ!

そして‥‥‥


「ゼロ!」


勢いよくクレパスを飛び出した4WD車。

そして僕はスキル【瞬間移動】を使った。

五百メートル先へ飛べと。



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