第55話 ヒーリング

「コツ、コツ、コツ、コツ‥‥」


「‥‥‥誰かが近づいて来る‥‥」


アルベルがチィーユに言うと二人は警戒します。


「コツ、コツ、コツ」


足音が止まりアルベルの前に姿を現しアルベルは魔法石火の入ったランタンを自分の目線の高さまで持ち上げ相手を照らすとそこには


白いネグリジェ?いや薄い肌着の様な白いドレスで髪がお尻の辺りまで伸ばした若い女性が立っていた。



◇◇◇◇




僕の前に現れた牢獄の中にいたのはなんと、ガルバディ帝国の王の''ブレイク王''とその娘''ミリア姫''だった。

しかし何故?二人がこの様な牢獄にいるのか


「ミリア姫、あなたは何故この様な場所に‥‥‥」


そう僕が言いかけると、ベッドの方から弱々しい声で


「‥‥‥ミ‥ミリア‥そこに‥‥誰かいるのか」


そうベッドで寝ていたブレイク王が言うとミリアは直ぐにベッドのとこに戻ると


「大丈夫ですか、お父様」


「‥あ、ああ‥‥」


とブレイク王。

ミリア姫はそんなブレイク王を見て今にも泣き出しそうな顔をするが‥‥‥両手で拳を作ると涙をこらえてブレイク王を見つめます。

けど‥鈍感な僕でもわかりますよ。

ミリア姫は心の中では物凄く泣いている事が。


そして僕は見てしまいました。

ベッドから出ているブレイク王の右手を‥‥

それはまるで‥‥まるで、骨と皮だけしかない細々とした手。



◇◇◇◇



アルベルの前に立つ一人の女性にアルベルは


「‥‥‥ノウス‥だとすると」


アルベルが女性‥‥ノウスと言うと、ノウスの横から小柄な少し太った男性が顔をだします。


「アルベル様、この様な場所で何をされているのですか?」


「お前には関係ないだろ!デーブル!」


「そうですね。しかし何があったんですか?兵達がなんだか右往左往してますが‥‥」


そうデーブルが言うとノウスの横から今度は体を出します。そして一瞬顔をニタッと笑うと階段をを降り始めます。

そしてアルベルの横に並んだ時、


「デーブル!お前はここになにしにきたんだ!」


アルベルはデーブルを睨み付けるとデーブルはニタニタとした顔で


「例の物、アルベル様の故郷の方に送りました」


「‥‥そうか‥」


「しかしここの場は悪いですね。どうです私の妖精、”'場の妖精ノウス''でこの場を良くしませんか?」


またニタニタとした顔でアルベルに言います。




◇◇◇◇




「マー、なんとかブレイク王達を助けだせないのか?」


僕の左肩に乗っているマーに聞くとなにか唸ってますよ


「光、この牢獄、扉がないんだよ‥‥‥」


「えっ!」


そうなんです。僕も牢獄をぐるりと見渡しますが‥‥確かにありません。

いったいどうやって入ったんだ?


「ミリア姫、この牢獄にはどうやって入りましたか?」


失礼な質問だがとりあえず聞いてみたが

ミリア姫はクビを横に振ると


「わかりません。気づいたらここに居たので」


やはり分からないか‥‥‥と僕が悩んでいると僕の肩に乗っているマーが、こいつも悩みながら


「光、今のスキルは本当に2つなの?」


「うん?そうだけど、いきなりなんだい?」


「うん‥?」


やっぱり悩んでますよマー。

あれ?この光景はどこかで‥‥‥‥‥‥‥‥

そうだ!チーがスキルを聞いた時だ!

そういえばまだマーの僕へのスキルあるかないか聞いてなかった。


で、聞いてみました。


「マー、もしかして僕にスキルが」


「‥‥‥うん、光に出てるよ。1つ」


やっぱりそうですか。スキルが付きましたか

で、どんなスキルなんだい


「‥‥‥うんと、ねえ、‥‥‥ヒーリング」


「ヒーリング?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る