第105話 僕は我に帰り‥‥‥

クレバスに落ちたイレイ。

しかし幸いな事に、イレイは垂直に落ちるのではなく、まるで急傾斜の滑り台を滑り落ちる様に落ちていった為、身体を地面に叩きつけられる事ななかった。

そして、イレイは落ちた衝撃で、気を失っていた。


だが‥‥‥イレイは気を失っていたせいで気づいてなかった。


落ちた衝撃で両足を骨折して動けない事に‥‥‥。




◇◇◇◇




イレイのインカムの反応が消えた!


僕に衝撃が走ります。

インカムには万が一の為に、発信機を取り付けてあるんですが‥‥‥

その反応が消えた!

(因みにスマホも繋がりません)

この時の僕は気が気ではありませんです。


だってですね、イレイは婚約者6人の中で一番最初に出会い、一番最初に好きになった人なんです。


この時既に僕の運転する4WD車は、イレイの所まで後残り5キロの所。


「イレイ‥‥‥クッ!‥‥‥車がこんなにも遅く感じるなんて!」


4WD車は山道を下り終え、平地を疾走していた。その速度は100キロ!

しかし‥‥‥僕はイレイが心配で時速100キロで走っているにもかかわらず遅く感じ、しかも運転が荒くなっていた。


「ひ、光様‥‥‥」


「‥‥‥‥‥‥」


「光様!‥‥‥きゃあ!」


アイのサポートをし忘れる程慌てていた為、少しの窪地でも車体が浮いてしまい、クリエラさんが驚き、悲鳴をあげた。


その悲鳴に漸く僕は我に帰り、


「クリエラさん‥‥‥ごめんなさい」


アクセルを緩めると、僕はクリエラさんに謝った。

そんなクリエラさんは、僕に怒るどころか僕の事を心配してくれます。


「光様、私も光様の焦る気持ちは分かります。けど‥‥‥私達に何かあればイレイ姫様を助ける事が出来なくなります」


クリエラさんの言葉に僕は情けなく思った。


そして僕は


「クリエラさん、ごめんなさい。そしてありがとう。‥‥‥今ので目が覚めたよ」


僕がチラッとクリエラさんを見るとクリエラさんもそれに気づき、ニコリと笑顔を見せます。


その時改めて思いました。

この人が、クリエラさんが僕の婚約者であった事に感謝を‥‥‥そして好きになった事に感謝を。


そんな僕がぶつぶつと呟いているので、クリエラさんが、


「光様、何を言ってますの?」


「えっ?‥‥‥うん、クリエラさんを好きで、僕の婚約者でよかったと‥‥‥」


「えっ‥‥‥///(照れ)」


「あっ!」


で、で、ですね〜、僕がクリエラさんに告白じみたセリフを言うもんだから、チーとマーがですね‥‥‥まあ、チーはともかく、マーがですねえ〜、


「ねえ?光、僕とは?、僕とは?」


て、聞いてきますよ。いやあ〜マーさん、あのですねぇ、早くイレイのトコに行きたいんですが‥‥‥

(この時まさかイレイの足が骨折してるなんて‥‥‥僕の馬鹿、馬鹿、馬鹿!)

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