第106話 心の中の叫び

「あと1キロだ!」


僕は叫びました。

そして、僕は心の中で叫びます


『イレイ! 無事でいてくれ!』


何度も‥‥‥何度も叫びます。


そして、残り500メートルを切った時、それは起きた。


「見えた! あそこだ!‥‥‥なあ!」


イレイの赤い4WD車が肉眼でも確認出来た時


「ゴッ‥‥‥ゴゴゴッ‥‥‥ゴゴゴオオオ!」


物凄い地鳴りと共に地面が揺れた。

それは、僕が4WD車を運転しても分かる程。


しかし僕は4WD車を止めず、先へと進み、イレイの4WD車の所に辿り着いた。

いつの間にか揺れは治まっていた。

だが‥‥‥そこにはイレイと女性兵の2人の姿はなかった。


「イレイ‥‥‥どこへ行ったんだ!」


イレイ専用の4WD車のアイに聞くが、イレイの反応が消えた場所しか分からなく、それ以上の場所は分からないと。


「どこなんだ! どこなんだよ! イレイ‥‥‥」


すると‥‥‥小高いハゲ山の様な場所の方から女性兵が一人、息を切らせながら、此方に走って来ます。


「ハアッ ハアッ ハアッ‥‥‥ひ、光様、ハアッ ハアッ ハアッ、姫様が、ハアッハアッ イレイ姫様が‥‥‥大変です」



◇◇◇◇




クレバスに落ちたイレイはまだ気絶をしていた。

そして‥‥‥夢を見ていた‥‥‥。


『ここはどこかしら‥‥‥私は‥‥‥』


そこは何もない真っ白の世界‥‥‥

草も木もない‥‥‥地平の彼方まで真っ白の世界。

そんな世界に一人佇たたずんでいたイレイは‥‥‥


『‥‥‥私は、どうして‥‥‥ハアッ! そうだわ! 熱感知レーダーに反応があって、そこに行く途中‥‥‥行く途中‥‥‥』


イレイは思い出そうとするが、その先の記憶がまるで思い出せなく、頭を抱えて思い出そうとしていた。


すると突然、イレイを覆いかぶさる様に霧が周りを呑み込んで行った。


『なあに? なあに? どうして霧が?‥‥‥』


イレイは急に不安になり


『光‥‥‥光‥‥‥たすけて』


僕の名を叫びますが、僕は現れません。



『光‥‥‥たすけて‥‥‥光』



僕の名を再び叫んだ時、イレイが立つ下の白い地面から、白い腕が何本、いや何十本も、まるでタケノコが生えてくる様にニョキニョキと生えて来た。

そして‥‥‥その腕はイレイの両足を掴むとズリズリとイレイを地面に引きずり込もうとしていた。


『いや、いやあーー! 誰か! 誰かたすけて! 光‥‥‥光!』


イレイの足が半分白い地面に引きずり込まれた時、



「はあっ!‥‥‥」


周りをキョロキョロと見渡すと


「ゆ、夢だったんだ‥‥‥」


気を失っていたイレイ。だが‥‥‥


「ここは‥‥‥いっ、痛い、な、なに?」


目を覚ましたイレイは両足からかなりの痛みが走った。

そして足を動かそうとするが‥‥‥動かない。動かそうとすると痛みが足全体に走る。


「私はどうなってしまうの‥‥‥」


突然の暗闇、突然の痛みがイレイを恐怖へと突き落とす。


「こ、怖い‥‥‥私は‥‥‥光‥‥‥光‥‥‥」



◇◇◇◇



「イレイに何があったんですか!」


僕は息を切らせて来た女性兵の両肩を掴むと女性兵を揺さぶりながら聴き直します。


「イレイ、イレイに何が‥‥‥」


「い、痛いです光様!」


「光様!落ち着いて下さい!」


痛がる女性兵と僕との間に割って入って止めるクリエラさん。それに僕は気づくと、


「えっ!‥‥‥あっ! ご、ごめんなさい」


僕はクリエラさんと女性兵に謝った。


「光様が冷静でいないと、イレイ姫様を助ける事は出来ません」


きつく言うクリエラさんだが、顔は僕を心配してくれる顔でいます。


「クリエラさんの言う通りだよね、ありがとうクリエラさん」


僕がクリエラさんにお礼を言うと顔を赤面させ、


「///うん、いいんですわ光様///」


と。


そして僕は女性兵に聞きます


「イレイは?‥‥‥」



女性兵は答えます。そして次の瞬間、僕はイレイが落ちた場所へと走っていた。


「イレイ姫様が落ちたクレバスが閉じてしまった」


と。

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