第107話 新たなスキルの予感

イレイが‥‥‥あのイレイが‥‥‥クレバスに落ちた。しかもクレバスは先程の揺れで、開いていた口が‥‥‥閉じてしまった。


僕は女性兵の連絡を受けると、その場に膝まづき、愕然とした。

そして‥‥‥自分に対して、いや、自分の力の無さに対して怒りを覚えた、


「光様! とにかく今は、早くイレイ姫様が落ちた場所へ!」


クリエラさんが僕の背後から、まるで僕に喝を入れるように言ってきます。


『‥‥‥そうだ‥‥‥こんな所で気落ちしてる場合じゃない!イレイの所に‥‥‥』


僕はゆっくりと立ち上がると、クリエラさんにお辞儀をした。


「クリエラさん、ありがとうございます。もし、クリエラさんが居なかったら‥‥‥僕は‥‥‥あのままでした」


そんな僕を見てクリエラさんは僕に笑顔を見せます。そして、


「私は貴方の婚約者です。貴方が困っている時は、私も貴方の力になりたい」


その言葉に僕は何かが吹っ切れた様な感じがしました。

で、思いました。


『この人を‥‥‥いや、僕の婚約者みんなを‥‥‥この世界の人達みんなを幸せにするんだ』


と‥‥‥。


「行こ! クリエラさん。イレイを助けに!」


僕はニコリと笑顔でクリエラさんに言います。


「光様‥‥‥ハイ!」


クリエラさんも笑顔で僕に力一杯に答えます。


「イレイの場所に案内して下さい!」


僕は女性兵に言うと、女性兵も笑顔で


「ハイ! 光様! 走って案内しますので、後についてきて下さい」


と、走り出した。

僕とクリエラさんは後に続きます。


しかし‥‥‥人の心はそんなに簡単には変われるはずはない。

僕は走りながら、自分に、自分の力の無さに悔やんでいた。そして‥‥‥思っていた。


『落ちた場所に行っても、イレイをどう助ける?‥‥‥クレバスは閉じてしまっている。僕のスキルでは傷や病気を直せても、イレイを救出する事が出来ない‥‥‥どうすれば。情けない‥‥‥僕は情けない‥‥‥なぜこの様なスキルしか持ってないのか‥‥‥」


僕は自分を戒めていながら走っていた‥‥‥その時、


「どっくん‥‥‥」


何かが僕の心臓を焚きつける‥‥‥


「どっくん‥‥‥どっくん‥‥‥どっくん‥‥‥」


いや‥‥‥焚きつけるではなく‥‥‥まるで‥‥‥まるで、心臓を中心に力が湧き上がる様な。


「どっくん‥‥‥どっくん‥‥‥えっ!」


そして‥‥‥僕は感じた。





新たなるスキルの力を‥‥‥


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