第124話 エミリ、なのか?
僕は走った。無我夢中で走った。母、エミリアを忘れるぐらいに。そして、気づけば、あの蔵があった場所に来ていた。三年前に焼け落ちた蔵があった場所は、今は薔薇の花が咲く綺麗な庭になっていた。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、母さんがいない今、こんな場所」
息を切らしながら涙を拭い、近くに落ちていた棒を拾うと、僕は薔薇の庭目掛け、棒をふり下げようとした時、
『やめてえーーー!』
エミリが僕に追いつき、叫んだ。
その叫びに一瞬、僕は動きを止める。
だが、
「止めるなエミリ! こんな庭、こんな庭!」
『落ち着いてクラウド! この庭、誰と一緒作ったの。思い出してクラウド!』
エミリは僕に叫ぶ。そう! この庭は母さんと一緒に作った唯一の庭。僕は両膝を地面につけうつむいて、そして、泣いた。
それは、何もかも忘れそうになるぐらい、泣いた。
そんな僕の姿を見て、エミリは思う
『こんな姿では、クラウド、あなたを』
あなたを抱けはしない。
あなたを抱いて励ますことも出来ない。
あなたを抱いて頭を撫でてあげる事も出来ない。
あなたを抱いて愛し合えも出来ない。
『クラウド‥‥‥クラウド‥‥‥』
エミリが涙を‥‥‥光の玉から一雫が地面に落ちると、光の玉は「カッァ!」と眩しいぐらいの光を放った。
僕は後ろを振り向くと、眩い光が。
「エミリ! なんだ? エミリ!」
僕は両手で目を覆い隠す。
暫くすると眩しさが和らぎ、その光の中に人影が見えた。
「誰? エミリなのか?」
「‥‥‥クラウド‥‥‥」
「えっ! ‥‥‥か、母さん‥」
光の中に立っていたのは、エミリアの姿に似た、いやエミリアより若い美女が立っていた。
「母さん?、いや‥‥‥違う! エミリ‥‥‥なのか?」
僕が言うと美女は、
「クラウド‥‥‥これで、やっと、あなたを慰める事が‥抱いて慰める事が出来る」
美女は僕目掛けて走り、そして抱きつきます。そんな僕は、いきなり抱き着かれて固まってしまいます。
「母さ‥‥‥エミリなのか?」
「クラウド、クラウド! そう、私よ! エミリよ!」
エミリは答えます。姿は母、エミリアに似ていた。白銀の長い髪。スレンダーな容姿。身長は僕は、今は175ぐらいか、しかしエミリは160ぐらい。ただ違うとしたら、若さか。どう見ても、僕と同じぐらいか、それよりも少し上ぐらいの若さ。
「本当に、エミリなのか?」
「ええ、そうよ。これでやっとクラウドを抱けるわ!」
「えっ? ええ! だ、抱くだって!」
「えっ!/// あっ! 違うわ! うん、そう! 慰めるの!」
「あっ! 慰めるね、うん///」
僕とエミリはお互いを見ると顔を赤面させた。
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