第117話 主人のいない妖精
「主人がいない妖精だって⁈」
僕は驚くと同時に、何故と思った。
妖精付きになった妖精は、主人がいなくなると同時に消えてしまう。いや、消えると言うよりは、居なくなるの方が正解か。
そして、消えてしまうのは、主人と出会ってから別れるまでの記憶‥‥‥。
記憶を無くした妖精は、また、別の場所で違う妖精として生まれ変わり、ゼロからのスタートになると、以前、チーとマーに聞いていた。
だが‥‥‥今、僕らの目の前に居る妖精は、主人がいなくても、現存している。
これには、チーもマーも驚いていた。
そして、僕はチーに聞きます。何故主人が居ない妖精が、消えずに居るのか? と。
チーは他人事ではない様な、哀しそうな顔をして言います。
「彼女が居なくならない理由‥‥‥それは、まだ主人が生きていて、主人の依頼を実行している。そしてもう一つは‥‥‥」
チーは言葉を詰まらせます。そしてまた言います。残酷な言葉を。
「主人が死ぬ前に、依頼を受け、そして主人が死んだ事を知らず、今も依頼を護り続けている事」
「なんだよ!それって! だったら‥‥‥だったら、その主人が亡くなったのを知らない妖精は、主人の依頼をずっと護り続けないといけないのかよ!」
「そう、自分の命が尽きるまで‥‥‥」
チーはそう言うと、目の前に立ち塞がる、彼女‥‥‥妖精を見ます。
僕は彼女を見て思います。そんな彼女を助けたいと。
するとマーが、
「光! 今君は彼女を助けたいと思っただろう! けどだめだ!」
「何故だめなんだよ!」
「彼女自身が選んだ事だからだ!」
「はあ? 違うだろ! あれは主人の命令でいるだけだろう!」
僕はだんだんとムキになってきましたよ。
けど、マーは、
「確かにそうかもしれない、けど、命令を出した主人を選んだのは彼女だ!」
僕にそう言ってきます。僕は、そんなに冷たかったのかよと、マーを見ると、マーは鋭い目をして彼女を見ますが、その瞳には涙が見えた。
「マー‥‥‥」
そんなマーを見てチーは小さな手をギュッと拳を作ると悲しい顔をして言います。
「光‥‥‥僕も彼女を助けたい気持ちはあるよ! けど‥‥‥僕らには時間がない、光、僕らには多くの人命がかかっているんだよ!」
そんなの僕にもわかっている。わかっているよ! だけど、だけど、やっぱり放って置けない。僕はこう言った性格だから。
僕の真剣な顔を見たチーとマーは
「「はあーっ!!」」
二人同時に、深い溜息をすると
「光だから‥‥‥しょうがないかな」
「‥‥‥そうだね、チー」
この二人の言葉に僕は、何とか出来ると一瞬笑顔になり、
「ありがとう、チー、マー」
僕は二人に頭を下げた。
「だけど、光! 時間がないから、もし直ぐにでもダメな場合は‥‥‥」
「わかってるよ、チー」
そして、僕はまた彼女(妖精)に一歩、また一歩と歩み寄って行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます