第116話 薄赤い瞳の女性

この溶岩の池の先に、HP爆弾があるのを‥‥‥チーがプリム宝石があるのを感じているのに!

やはり、こう言った時は、邪魔が入るものなのか。


そう! 僕らの目指す、目の前にあるトンネルの入り口の前には、女性が立っていた。


「お前達を、この先へは通さない」


女性はまた、僕らにそう言うと、僕に顔を向けた。

その顔は目鼻口が綺麗に整えられた‥‥‥美女‥‥‥その瞳は薄赤い色をしている。溶岩の池が瞳に映ったのではなく、純粋な薄赤い色。


「しかし‥‥‥」


何故なんだろう、その瞳はまるで‥‥‥


「‥‥‥生がない」


そうなんです。まるで死んだ魚の目のような、光が無いような目。そして、視点は僕らではなく、遥か向こうの、何処かわからないような場所を見ている様な感じだ。


「そこを退いてくれないか! 僕らはこの先に行く必要があるんだ!」


けど、やはりと言うか、女性は何も言わず、その場から退こうとしません。

まるで、僕らの前に巨大なトラサクがあるかの様に。けど‥‥‥

けど、その顔は、不機嫌そうな顔ではなく、寧ろ、僕らに頼んでいるかの様な顔色をしてます。


「チー、マー、もしかして彼女は‥‥‥」


「うん」とチーは頷きます。


「僕も‥‥‥そうだね」マーも頷きます。


「そうか‥‥‥やっぱり彼女は‥‥‥」


「「うん!」」


「ラスボスなんだ」


「「‥‥‥えっ⁈」」


「いやあ〜、そうだと‥‥‥えっ?」


この瞬間、僕はチーとマーに顔の両頬に、ドロップキックを食らいました。



◇◇◇◇



その頃、ベルガー城では、彼女達専用の4WD車に強制的にもどされたメイル達が、城に到着しだしていた。

それを城の出窓から見ていたミリアが、「何故?」てな顔をして驚き、城から出てきました。


「いったい、どうしたのですか!」


城の建物の目の前に止まる、青色のメイル専用の4WD車は、ドアのロックを解除した。

ドアが開くのが分かると、メイルはドアを開け勢いよく飛び出してきて、


「光様、何故この様な 事を!」


まるで置いてけぼりを食らった子供の様な顔をして、怒りながら言います。

そこに城から急いで降りてきたミリア。

ミリアは、どうして戻って来たの様な顔をしてますよ。

そりゃあそうですよね。ミリアにもスマホを持たせてあるんですから、連絡も無くいきなり4WD車(僕以外の)が、城に戻ってきたのですから。


「メイル‥‥‥様、どうされましたのですか」


「あっ! ミリア様、どうもこうもありませんわ! いきなり車が城に戻りだしたんですわ!」


「えっ? どうして?」


「私が知りたいですわ!」


メイルがまだ怒り収まらないで、ミリアに話しますよ。で、ミリアは冷静に考えます。

そして、


「メイル様、少しは冷静になって考えましょう。何故車が勝手に城まで戻って来てしまったかを‥‥‥」


「そんなの決まってますわ! 光様の仕業ですわ!」


「えっ⁈」


ミリアはまたまた驚きます。てっきりメイルが4WD車が勝手に戻った原因を知らなかったのでは、と思っていたのですからね。

けど、実際はメイルは、何故車が戻ってしまったのか、誰がそれをしたかはわかっていたのです。


「では、何故怒ってらっしゃるのですか?」


「光様は私達、婚約者を大事にしてくれる気持ちはわかりましたわ。けど、私はあの方の婚約者です。私も‥‥‥私も幾ら危険が付いてきても光様の力になりたい、側にいたいのです!」


メイルは両腕を腰に添え、鼻息を荒くして言ってきますよ。そんなメイルの言葉に共感したのかミリアもですね、


「そうですわ! 私も光様の力になりたい! 何時も側にいたいですわ!」


「ミリア様! 光様が戻って来たら私達で説教しましょう!」


「はい! メイル様!」


ここで、結託したメイルとミリアですが、僕が戻って来たら、癒してくれるのではなく、説教ですかぁ。うむ〜〜〜っ、この場に僕が居ないのが不幸中の幸い?ですがね。



◇◇◇◇



その頃イレイとクリエラさんは、移動中の4WD車の中で、目を覚ました。


「‥‥‥こ、ここは?‥‥‥」


「あっ! イレイ姫様。目を覚ましたんですね」


先に目を覚ましたクリエラさんは、イレイを見て言います。けど、クリエラさんの顔は何か悲しそうな顔をしてます。そして後ろにいる女性兵から聞いた事をイレイに告げます。

それを聞いたイレイは、


「‥‥‥私のせい‥‥‥」


それだけ言うと、自分せいだと思い込むイレイは下を向いて泣いてしまった。

その時、イレイの胸ポケットからスマホがポトリと落ちた。そしてイレイはスマホの着信アリのランプに気づくと、スマホをひろいます。


「‥‥‥光からのメール」


僕はあの時、赤色の4WDのを見送る時に、イレイのスマホにメールを送っていた。


[イレイ、このメールを見る前は君は、怒っているのだろうか。それとも、根が真面目すぎるから泣いているのだろうか。勝手にこの様な事をして、ごめんなさい。けど‥‥‥僕は君らに、イレイにこれ以上危険に巻き添えしてもらいたくない! だから‥‥‥、けど心配しないで下さい。僕は必ずイレイ達の、イレイの元に戻ります。]


イレイはスマホを抱きかかえます。そして、また涙を流します。けど、その涙は先程の涙とは違い、僕の事を信じる、まるで嬉し涙に近い様な涙がイレイの頬を流れました。


「必ず無事に帰ってきて‥‥‥光」



◇◇◇◇




チーとマーにお叱りを受けた僕は


「冗談だって」


「こんな時に冗談はやめてよ!」


マーがプリプリしながら言ってきますよ。で、チーも頷いてます。


「で、あの妖精付きの妖精は、いったい?」


「それなんだけど、光、‥‥‥多分だけど、あの妖精、主人がいないのでは」


チーが何かを感じ取ったのか、腕を組んで言ってきます。ただ不思議な顔をして。


「主人がいない?、じゃあ、誰が‥‥‥まさか!」

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