第120話 クラウド=デ=アウター
「クラウド!」
その名を叫び、火の妖精は僕に抱きつきます。
「えっ⁈」
僕は、何がどうなったか分からず、一瞬、硬直した。
そして、妖精の顔が近くで見えた時、僕は思った‥‥‥
『妖精(こいつ)主人が帰って来たと思っているのか‥‥‥』
と。
そして妖精のその顔は、今までの不安が消し去り、安心した顔に‥‥‥涙を流しながら笑顔を僕に向けた。
『帰ってきたんだね。クラウド』
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥
◇◇◇◇
私の主人、クラウド=デ=アウターは、今から五年前に、『この場を護れ』の指示後、姿を表すことはなかった‥‥‥。
そんな私と主人の出会いは、今から10年前のアウター家にある洋館の母屋から少し離れた古びた蔵の火事。その時の主人はまだあどけない表情の14歳だった。髪は白銀の短髪、顔は美少年?だろうか。身長は150ぐらいか。足が長く、すらっとしている。
あの日は嵐が酷く、雷も鳴っていた‥‥‥。
「わあー!、まったく! 急に雨が激しく降ってくるんだもんなぁ」
空が急に暗くなり、ゲリラ豪雨の様な雨が彼を襲いかける。
主人はあの日、蔵の近くの山に、病弱の母親の為に、花を摘みに行っていた。その帰りのこの雨。
「本当に酷い雨だなぁ。少しここで雨宿りでもしてくか」
手に持った、母親にあげる花は無事の様だ。
クラウドはホッとすると、蔵の中を覗いた。
このアウター家の古い蔵は、12畳程の古い建物。この蔵には、いらなくなった家具などがしまってある。
クラウドは、雨がまた酷くなってきたので、蔵の中に避難した。
「久しぶりに、蔵に入ったけど‥‥‥改めて見ると、見慣れない物もあったんだ」
クラウドは蔵の中を探索する。
自分が幼少期に使用していた、木の机や椅子もあった。
「懐かしいなあ」
クラウドは椅子に腰掛けると、机の左の引き出しを開けた時、「カラッ」と音が鳴った。
なんだろう? とクラウドはそれを手に取ると、
「‥‥‥石?」
それは直径5センチ程の石の様な物。蔵の中が暗く、蔵の窓の差し込む、僅かな光りにそれを当てると。
「唯の石‥‥‥じゃない‥‥‥けど、綺麗だ‥‥‥」
それは、光りにあてると、石の中に、七色に輝く虹のようなものが見えた。まるで、それは万華鏡を覗いている様な感じ。それを目の前で、転がすと、中の虹の様な輝きは赤から青に、そして、青から緑に、緑から紫に変化する。
「こんなの見たことない。けど‥‥‥なんでここにあるんだ?」
クラウドは自分の過去を、思い出しながら考えていたが、思い当たる節がない。
「まあ、家に帰ってから調べるか」
と、それをズボンのポケットにしまった、次の瞬間、
「カァッ! ドカーン!」
と、凄い光と地響きが蔵の中までつたわってきた。クラウドは心配になり、窓から外を見ると、8メートルはあるだろう、外の木に、カミナリが落雷したのだ。
その衝撃で、木が燃え出し、蔵の方に火の粉が降りかかり、蔵も燃え出した。
「これ、ヤバイだろ!」
クラウドが、蔵から出ようとした時、何か蔵の床に光る物が見えた。落雷の振動で、何処からか落ちてきたのだろうか?
クラウドは首を傾げながら、不思議そうな目で、その光る物体を見ると、それを拾おうとした。
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