第68話 デーブルとノウスの初めての出会い
「何故‥‥‥デーブルが‥‥‥この様に」
ノウスはそう言うと、昔を思い出していた。
◇◇◇◇
私ノウスがデーブルと出逢ったのは、今から2年前の事。
彼はアルベル隊のホクトリア地質調査の一人として参加していた。
「アルベル様、この辺りの土地もダメですね」
デーブルが言うとアルベルは
「‥‥そうだな‥‥デーブル、他の者にも伝えてくれ。別の場所に移動すると」
「はい!」
デーブルは他の男女四、五人の調査員達に連絡した。
そしてアルベル一行は別の場所に馬車で移動する。
「‥‥アルベル様‥‥本当にこのホクトリアは私達が生まれる前の緑豊かな大地にもどるのでしょうか?」
デーブルがアルベルに聞くと
「その為に我々が調べまわっているんだ。何年いや何十年掛かろうとも必ず原因を突き止めて見せる。そしてホクトリアを昔の様な緑の大地にしてみせる!」
アルベルが言うと隣にいたチィーユがアルベルの腕にしがみ付きニコリと微笑む。
そんなアルベルの言葉に一行には絶望と言う言葉は皆無だった。
皆、希望を持っていた‥‥‥必ずホクトリアが昔の様な緑豊かな大地になると。
「しかしアルベル様は凄い人ですよね。この地質調査の隊長でもある上、貴族以上の位をお持ちで、しかも王様のご指摘御指南役でもあるんですから」
デーブルがアルベルに言うと馬車に乗っていた皆も、うんうんと頷く。
「そうか?自分ではそう思った事はないがな」
「そうですよ。それに‥‥‥その‥‥チィーユさんですか?チィーユさんとはご婚約されたのですか?」
いきなりチィーユのしかも婚約の事を聞かれたので
「なあぁ!‥‥ゴホン、ゴホン‥‥なにをいきなりデーブルは」
と、咳き込んで慌てるアルベルにデーブルは
「皆も知りたいですよね?」
「「「そうですよ。知りたいですよ」」」
と皆も。
「えっ‥‥‥あっ‥‥‥うっ‥‥‥」
恥ずかしいのか言葉に詰まるアルベルに
「こう言う人ですから、婚約はまだですわよ」
とチィーユ。
「「「えっ〜!チィーユさん可哀想ですよ!もうこのまま結婚してあげればいいのに!」」」
アルベルを除く一同、同意見。
チィーユはうんうんと頷いてます。
「///あっ〜その話は、また、今度な」
アルベルが言うとチィーユは顔をプクと膨れています。
そんな二人を見て、皆クスクスと笑ってます。
すると馬車の御者が
「アルベル様!オアシスが見えます!」
「なに!」
この不毛のホクトリアの大地にいくつかあるとされるオアシス。
そのオアシスが、アルベル達の前に忽然と現れた。
「あそこに馬車をやってくれ!」
アルベルは御者に指示を出すと、御者は馬車をオアシスの近くに止めた。
そのオアシスはまるで‥‥その場だけが別の世界の様に緑溢れる木々を生やしていた。
「以前調べた時にはこの場所にはオアシスは無かったはず‥‥‥」
アルベルが言うとデーブルは地図を見て
「確かに‥‥‥ないですよね。以前はもう少し先にあったはず‥‥‥これではまるでオアシスが移動しているみたいですよ」
「オアシスが移動‥‥‥」
“「チィーユ、何か感じるか?」”
アルベルはチィーユを見て頭の中で言います。
“「ギッシュ、そうね‥‥‥確かに妖精の気を感じるわ」”
“「妖精の気を?」”
“「ええ、けど‥‥‥弱いのよ‥気が。今にも消えかけそう」”
「そうか‥‥‥、デーブル、あちら側を二、三人連れて調べてくれないか。残りは私とこちら側を調べる」
「「「はい!」」」
アルベルの指示で二手に分かれて、オアシスを調べに入った私達。
けど‥‥未だ謎の多いオアシス。
何故、この不毛の地に存在できるのか?
何故、数カ所もあるのか?
何故、場所を移動?しているのか?
他にもわからない事はいくらでもある。
そう思いながらデーブルが調べていると、
「キャアー!!」と女性隊員の悲鳴。
「どうしました!‥‥‥あっ!」
突然地面に開いた巨大な穴に女性隊員が落ちそうになっていた。必死に穴の淵にしがみついて落ちない様にしている。
「待ってて下さい!今助けますから」
デーブルはそう言うと走って女性の元へ。
そして女性の手を取ると‥‥‥なんとか穴の淵から助け出した。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ‥‥‥に、してもなんなんですか?この穴は?」
「さあ?それよりここから離れましょう」
「そうですね‥‥‥‥あっ!」
デーブルが立ち上がろうとした次の瞬間
「カラ‥ガラ‥‥ガラガラガラ!!!!」
デーブルの周りの地面が一斉に崩壊し‥‥
「あああぁぁぁー」
地面の底に落ちていくデーブル。
◇◇◇◇
「カラ‥‥ガラ‥‥」
小さい小石がパラパラと落ちてくる。
その幾つかは、デーブルの頭の上に‥‥‥
「う、うう〜〜ん、どうなって‥‥」
「デーブルさあ〜ん!大丈夫ですかあ!」
デーブルが上を見上げると、光が近くに見えた。つまりそんなに高い所からは落ちてない、て事だ。しかし‥‥‥10メートルはあるか?
「大丈夫です!」
それにしてもここは?いったい‥‥‥
デーブルが落ちた穴の周りを見渡すと‥‥‥
泡白い物が見えた。
「あそこは‥‥‥オアシスの中心辺りか?」
デーブルは泡白い物に引き寄せられるように歩いていく。
「なんなんだ?これは?」
デーブルの前には手の平に載るぐらいの白い球体が浮かんでいた。しかしその光は今にも消えかけていた。
『あなたは‥‥誰?』
「えっ?まさか?妖精なのか?」
『あなたは?』
「しかも‥‥こんなに弱まっているんじゃないかよ!如何すればお前を元気にする事が‥‥‥」
『無理です‥‥』
「無理じゃない!まだ、何もしてないのに」
『私は‥‥この場を守る‥‥妖精」
「この場‥‥‥じゃあ、このオアシスはお前が‥‥」
デーブルが手の平に妖精を載せるが‥‥やはり光が消えかけている。
『早く‥‥ここから‥‥離れなさい』
「何故?」
『私は‥‥もうダメです‥‥ここも長くは保ちません』
「如何したらお前を助ける事が出来る?」
『無理です‥‥ここから‥‥』
妖精が言う言葉にデーブルは怒り出す。
「無理じゃない!何もしてないのに諦めるな!」
デーブルはそう怒鳴ると両手で妖精を抱きしめると‥‥‥デーブルの目からは一雫の涙が流れ‥‥‥ポタリと妖精に落ちた。
『!‥‥この人は‥‥この人となら』
『わかりました。私は貴方の‥‥貴方のだけの妖精になります』
「えっ?」
そう言うと妖精の‥‥泡白い球体はデーブルの手から離れ‥‥デーブルの前で女性の姿へと変わっていった。
それがデーブルとの初めての出会い‥‥‥
そして私がデーブルの妖精付きになった瞬間でもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます