第7話 き、奇怪な

「アト500デバシャトセッショクシマス」


アイが言うと僕は4WD車の速度を落とし、馬車の様子を気にした。


と言うのもこの平坦な道に出てから何台かの馬車とすれ違った。


農作業の馬車、客を乗せる馬車など。

が‥‥‥あたりまえと言えばあたりまえだが4WD車が動いてる馬車を軽々と抜いて行くと


「な、なんなんだあ!あれは?」


とした顔で唖然としていた人を何人も見てきましたよ(て、すれ違う人全員なんですけどね)


「しかしこの車と言う乗り物は凄いな。馬車を軽々と抜いて行くとは。しかも乗り心地は最高だ!」


山道でダウンしていたアレク王が復活して、外の景色を見ながら言っている。


「ですわねお父様。車内もえあこん‥‥‥ですか?これのおかげで快適ですし」とイレイ。


「うむ、そうだな」


と、まあ、少し違う内容が入っていたけど、要は4WD車のオフロード用のタイヤが速度を上げて走ると砂煙を巻き上げ馬車に乗っている人に砂煙をかからないように事前に速度を落として走っていましたんてすよ。


で、止まっている馬車に段々と近づく4WD車。

けど、馬車が止まっている様子が変だ。

遠目から見ても傾いているように見える。


「うん?‥‥‥あれって、もしかして脱輪してんじゃないかな?」


「アイ、前方の馬車をモニターに映して」


「ハイ、モニターニウツシマス」


4WD車を止め、モニターを見ると、

やはり馬車は大きく傾いている。そしてよく見ると大きな窪みに馬車の車輪がはまり完璧に亀‥‥‥ではなく動けなくなっていた。


助けに行くか?どうするか?

う〜ん、このまま行くとイレイの時みたいに兵に剣を突きつけられるからな。けど‥‥‥迷っている時間もないし‥‥‥、


「やはり、困っている人をほっとけないよ」


「イレイ、アレク王、ちょっと寄り道するけど‥‥‥いいかな」


「私達は構いませんよ」

とイレイはニコリと隣のアレク王と一緒に頷く。


「ありがとうございます」


4WD車をゆっくりと馬車に近づけると、少し馬車との距離を置いた所に4WD車を止め車から降り馬車に歩いて近づくと、執事、御者(馬車の運転手ね)、と女性らしき兵の3人が脱輪した車輪を見て話していた。


「この状態ではどうする事も」御者が言うと


「うむ、困った」と女性の兵。


「このまま帰りが遅くなると‥‥‥」と執事。


「「「どうしたものか‥‥‥」」」


げえっ、兵がいるよ。ど、どうしよう。また剣をつきつかれるのかなあ‥‥‥。けど‥困っているし‥‥‥。


で、僕は勇気を振り絞って、


「‥‥‥あ、あのおう、ど、どうしましたか」と恐る恐る聞いて見た。


僕の声に3人は僕に振り向いた。が、見慣れない服装の僕に少し驚く3人は


「見慣れない服を着ているな。貴様」

女性の兵が言う。


確かに今の服装は無地の白のトレーナーにジーパン。靴はスニーカー。


「え、‥‥‥あ、怪しい者ではありません」

またか!また同じパターンなのか?


「そう言う奴ほど怪しいんだよ!」

女性の兵は腰の剣に手を伸ばすと


「本当に怪しい者ではありません!!!!僕はその馬車を助けたいんです!!!」


と大声で言ったもんだから執事、御者、女性の兵の3人はビックリしたと思ったら急に笑い出した。


「ま、まあ確かにそんな‥大声で言う奴に怪しい奴は‥‥あははは(笑)」


「あははは、確かに(笑)」


「き、貴様‥‥あははは、悪かったな(笑)」


と女性の兵に肩をポンポンと叩かれた。

と、とにかく怪しい者の誤解は解けたかな?てとこかな。けど‥‥‥何故あんなに笑われたのか?‥‥‥これは後で聞いた話だけど、僕が大声を出した時裏声を出したらしい。つまり女みたいな声で、‥‥‥て、あんな場面緊張し過ぎて自分の声なんてわかんないよ(泣き)。


「‥‥‥で、この馬車を何とか窪みから出せばいいんですね」と


「あ、ああそうだ。馬二頭ではこれだけ深い窪みからは出せれなかったからな。あと馬四頭ほどいれば何とかなると思うが‥‥‥」


御者がそう言う。

確かに馬六頭いれば何とか脱出できるだろうが、馬車をよく見ると


「後輪の車輪のシャフトを固定している金具が取れかかっている」と僕が言うと


「しゃふと?」と御者。


「えっ!あ、ああ車軸ですね。」


「うん?」


「あははは、と、とにかくこれくらいなら何とかなりそうです」


「本当か?」


「ええ、ちょっと待っていて下さい」


と言うと4WD車の所まで走って行った。


急いで戻り運転席に着くとイレイが


「光、どうでした?」


「うん、今からこいつ(4WD車)で馬車を引き上げます」


「うん?これで馬車を引き上げる事が出来るのかね」


後部座席に居るアレク王が聞いてきたので、


「ええ、出来ます。フロントウインチをつかいます」


「「ふろんとういんち?」」

アレク王とチーが同時に。チーは興味津々。


「ええ、まあ、とりあえずは」

と僕は4WD車をゆっくりと馬車に近づけた。


が、やはりあの3人はビックリして、

「なあ、なんなんだあれは?」

もう何回も聞いたよこのセリフ。


「き、奇怪な。なんなんだこの乗り物は」


奇怪じゃないですよ。


「こんな乗り物は見た事ない!」


でしょうね。


4WD車を馬車に横付けすると車から降りようとしたらイレイが


「私もどうやって馬車を引き上げるか見たいのですが」


「えっ?‥‥‥う、うん。いいですよ」

イレイと車を降りると近くの木陰で休んでいる女性がイレイに気づくと


「イレイ!」


の声にイレイは


「えっ?‥‥‥あっ!」


とその女性に気づいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る