第6話 多分無理だろう

また山道を走り出した4WD車。


「アイ、道のデーターを収集後、ドライビングのサポートに回して」


「リョウカイ。データーシュウシュゴ、サポートニマワシマス」


暫く前と(ナビのない状態の)同じスピードで走っていたが、アイのサポートを受け徐々にスピードを上げる4WD車。


因みに4WD車のタイヤはオフロード専用のタイヤだ。流石にアスファルトの道では普通のノーマルタイヤの方が速度は出るが、ここは異世界、アスファルトなんて道はない。あっても石畳の道みたいな物だろう。それを考えると、このオフロード専用は理にかなっている。

こう言ったぬかるんだ道なんかはなんの苦もなく走り切る。

そしてアイのサポートもある。おまけに死んだオヤジがエンジンをチューンしたから約300馬力越えのバケモノエンジンになっている。だからそれ相応のチューンを各所にしてある。唯一してないのが運転席がノーマルのまま、ぐらいか。


そんな僕とアイのやり取りを聞いていた後部座席に座るアレク王とイレイとイレイに抱きかかえながらのチー。


「光、先程からアイと何か話してますけど、ドライ‥‥‥なんですの?」


イレイが聞いてきたので


「ドライビングのサポートなんだけど‥‥‥う〜ん、運転がし易いように‥‥‥アイが調整してくれるんだよ」


「うんてん?調整?」


「え〜と、え〜と、う〜ん‥‥‥」


ほんと、なんて言えば分かってもらえるかな。(泣き)

僕は説明するのも苦手だし‥‥‥。


「‥‥‥え〜と、今よりも速く車が走ります」


で、わかるのかあ?


「そうなんですね。わかりましたわ、光」


あああ、分かってもらえたあ(安堵のため息)


「そ、それでは車をもう少し速く走らせますね」

「‥‥‥ああ、頼む」


アレク王が少し不安そうな顔をしながら僕に言ったと同時に、


「‥‥‥じゃあ」


と車のアクセルを踏んだ。

車の速度が上がる。40、50、60と徐々に。


「こ、このような道を‥‥‥こんなに速く走るとは‥‥」

強張りながら話すアレク王。


「本当に。けどお父様、馬車に比べれば遥かに乗り心地はいいですわ。こんなに速く走っているのに」


とイレイ。


イレイてもしかして車とか大丈夫なんでは?

車の速度を上げても怖がるどころかチーと一緒に興味津々で外を見てるから。

けどアレク王様 は‥‥‥やっぱり強張っているよなあ。


「ヒカリ、コノサキ300デミギ90ドカーブ。ケイシャハ5パ」


「了解!」


4WD車は90度カーブに入ると砂煙を立てながら軽やかに抜けていく。

「ガガガ、ザザアーッ!」


「ツヅイテ、ヒダリSジカーブ。ケイシャ5パデス」


「了解、アイ」


「ザザザザアー、ガガガガッ!ザザアー!ザバアーン!」


山道のS字カーブも軽やかに抜けて水溜りも難なくこなす4WD車。

しかしその度に後部座席のアレク王が


「クウッ!ワアアッ!オオオッ!」と騒がしいの何の。


イレイは「キャアアッ!」と言っているわりには顔が喜んでいる。


チーは‥‥‥イレイに抱きかかえながらいるのでカーブに入る度


「グェッ!グオッ!‥ひ、光助けて」とイレイがチーを締め上げるので。チー、山道が終わる頃には生きてないかも。ホント哀れだなチー。


で、3時間ほど山道を走り終えると‥‥‥

イレイを除く1人と一匹?、撃沈‥‥‥。


まあ、3時間もジェットコースターに乗っている様な物だもんな。


イレイは、もう終わり?てな顔をしてたし。

やはりこの様な物はいつの時代も(異世界でも)女性のが強いのかな?


僕は運転に集中してるので、て、この手の道は慣れているので然程苦にはならなかった。


「ずっと光とアイのやり取りを聞いていましたが‥‥‥正直何を言っているのか分からなかったですが、息はぴったり合ってましたね」

そんなとこまで見ていたとは。流石イレイ。

けど、そのイレイに抱きかかえながら伸びてる一匹?は何とかしてくださいね、イレイ。

さあて、問題はここからだ。


平坦な道に出ればスピードは上げれる。けど街中に進むに連れて人や馬車などが歩いたり走ったりしている。


これが元の世界なら歩道や右通行、左通行などが別れているので走り易いが‥‥‥

ここは異世界、どこをどう歩いてたり走ったりしてるか分からない。


「その辺りはアイがいるから大丈夫だろうけど‥‥‥」


「ええ、アレムの城壁内に入れてもらえるかですね」

イレイが言う。


そう、この4WD車が城壁の門をすんなり通してくれるかだ。


「多分無理だろうな‥‥‥」


ここまで来たのに、あと少しなのに‥‥‥どうしたら。


そう思っていたら

「ゼンポウ700メートルサキニバシャガトマッテイマス」

とアイ。


あと少しで城壁の門の所で馬車が止まっていた。

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