第101話 決心
「こちらはエレムですわ。こちらは異常はありませんわ」
「こちらも異常ありません。旦那様」
「ありがとう。エレム、ミレン。何かあったら直ぐに連絡して」
「「はい!」」
僕が乗っている4WD車のスピーカーから二人の声と交信する僕。
◇◇◇◇
「今からどの様な配置にするか説明する」
アルベルが言うとその場に居た全員が頷きます。
で、この配置はと言うと、
まずはアルベルとデーブルが指揮をとり兵を動かし、ホクトリアとホクトリア近辺の住民を安全なトコまで移動させます。総指揮には勿論ブレイク王です。ただ、ブレイク王はまだ筋力はしっかりと戻ってないので、ミリアが側につきます。チィーユとノウスはアルベル達について行きます。まあ、アルベルとデーブルの妖精付きですからね。
「私も光様と‥‥‥」
と最初ミリアがだだをコネていましたが、こればかりはダメ、と強く言ったんです。
で、ミリアの目が潤んで今にも泣きそうに、
「ミリア、こればかりはダメだ、連れてはいけない。君に万が一の事があれば‥‥‥君はこの国のお姫様なんだよ」
「けど‥‥‥」
僕を見るミリアの目から一雫の涙が頬を流れた。
「‥‥‥だったら‥‥‥だったら、僕、いや皆んなの帰る場所を護ってもらえるかい」
「えっ?」
「必ず‥‥‥絶対に必ず帰る場所を!」
僕はミリアの肩に手を置くと力強く、そして今出来る最高の笑顔でミリアに言った。
「光様‥‥‥わかりましたわ♡、帰る場所は私が護ってみせますわ♡」
「ありがとう、ミリア」
ミリアも笑顔を見せます。けど、その瞳は潤んでいました。
そして僕は思いました。
戦時中、戦地に愛する男性を送る女性はこうも強く、こうも弱かったんだと。
そして男性も必ず戻ると固い意志を持って戦地に
今ならその気持ちが痛い程わかりますよ。
で、僕は後ろを振り向きみんなを見渡すと、頭を下げ、
「みんな、ごめん」
と。
すると全員が驚きます。そして何故? と。
「僕にもっと力があればイレイ達をこんな危険な目に合わせる事もなかった。本当にごめん」
僕が謝るとアルベルが僕の肩をポンと叩き、
「何故光が頭を下げる。下げなければいけないのは私達の方だ」
と、アルベルはイレイ達に頭を下げます。
「そうですよ、光」
とデーブルも頭を下げます。
「けど‥‥‥僕は‥‥‥イレイ達を危険な目に‥‥‥」
拳を握り悔やむ僕にイレイが言います。
「光‥‥‥覚えてます?私を助けてくれた時の事を。光はその時はこの4WD車以外なにも力は持ってなかった。けど、それでも私やメイル、ミレンを助けてくれた。そしてエレムも。そして今はガルバディも助けようと」
僕はイレイをゆっくりと顔を起こし見ます。
「光‥‥‥光がみんなを力がなくても光なりに一生懸命に助けてくれたから、こうして光の元にみんなが集まったんですよ。だから一人で無茶はしないで」
「‥‥‥イレイ‥‥‥」
僕はその言葉を聞いて天を仰いだ。そして自然と頬には涙が流れた。
「ありがとうイレイ、みんな。‥‥‥うん、必ず、命に代えても必ず『ホクトリアの悲劇』は起こさせない!」
僕が手の平を見て拳を作り、心に決心をしようとした時、
「それは駄目です! 光様!」
クリエラさんが叫びます。
「光様、命に代えても、なんて言わないで下さい! 私は兵です。命の尊さは痛い程わかってます。命があるから未来が作れるのです。命があるから皆と悲しさも嬉しさも、幸福もわかちあえるのです。だから‥‥‥命に代えても、とかは言わないで下さい」
クリエラさん、涙を流して僕に訴えて来ます。
そんなクリエラさんを見た僕は後悔をした。自分の言葉に。
「‥‥‥うん、そうだよね。ありがとうクリエラさん。命があるから未来を作れる。命があるから皆んなと未来を見る事が出来る」
僕はここで改めて決心をした。
僕はガルバディ‥‥‥いや、アレム大国、そしてプリム小国を救って、皆んなと一緒に未来を見るんだと。
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