第100話 血を引き継ぐ者

五百年前の僕が言いました。

『ホクトリアの悲劇』の再来があるまで、あと二日を切ったと‥‥‥


その『ホクトリアの悲劇』とは、ガルバディのクリスタルとプリム小国のプリム宝石が合わさって起きる爆発が原因と言うこと。つまりは核融合みたいなかんじだと、五百年前の僕がスキル【未来視】で観て教えてくれた。


そして、ホクトリアの土地がこの様な不毛の地になったのは実は、クリスタルが原因だった事。

このクリスタルは粒子状になり土と混じると食物を育てなくする事も、五百年前の僕が教えてくれた。


「だからなのか‥‥‥ホクトリアで作物が育たないのは」


アルベルは両手に拳を作ると、何かやりきれない思いがこみ上げてきた。

そんなアルベルを見たチィーユはアルベルの両手の拳をそっと優しく自分の手を重ねると‥‥‥


「アルベル‥‥‥」


と心配そうに見つめます。

そして、ポツリとアルベルは、覇気を無くしたように呟きます


「私達のあの数年間のホクトリアの調査はなんだったんだろうな‥‥‥」


アルベルはそう言うとなにか悲しそうな顔をしてチィーユを見ます。

そんなアルベルを見たチィーユは


「そんなことない! そんなことは‥‥‥」


チィーユはアルベルに今度は抱きつきます。

けど、アルベルの気持ちは晴れないでいた。

自分の数年間の苦労や努力が一瞬の言葉で解ってしまった事に‥‥‥。


「私もチィーユさんの言う通りです」


デーブルが言うとノウスも頷きます。



で、ですね、僕もですね、


「そうだよアルベル。それにまだわからない事があるだろう、てか、解決しないといけないことかな?」


と、まだ正座されている状態で言いますと、アルベルが何かに気づいたらしく、


「‥‥‥! そうか! そうだよ! まだ原因が解っただけだ! 結果を‥‥‥ホクトリアを元に戻す事が!」


元気を取り戻したかの様なアルベルにチィーユは、胸を撫で下ろします。



◇◇◇◇



で、ですねえ、アルベルの元気が復活しましたんですが、今度は悪亜なんですよ。


僕やブレイク王は早くホクトリアの件を何とかしたいんですが、こればかりは僕一人ではどうしようもなりません。


今現在ホクトリアの件を知っているのは、ここに居る人達だけ‥‥‥。


人を集めるにしても時間がありません。

しかもここの地下で起きた事、そしてまだ解決してない謎、などで先程合流したイレイ達四人以外は、心身共に疲れ切ってます。


そして『ホクトリアの悲劇』を防ぐ為には、どうしても今、ここにいるメンバー全員の力が必要なんです。


けど‥‥‥今のまま、気持ちが揺らいでいる時に『ホクトリアの悲劇』を起こさせない様に動けば、失敗する恐れが高まります。


( 人は気持ちに少しでも余裕がないと失敗するリスクは高まりますからね)


で、何故悪亜が必要かと言うと‥‥‥


五百年前の4WD車に悪亜がオーナー登録されていた事と、そして何より4WD車の事について少しでも詳しく知っていたからです。


で、で、ですねえ、悪亜は“光の七人目は私ね!”なんて言って僕に言ってましたが、


「七人目は暫くは現れない」


のマーのセリフに、ガクンと項垂うなだれる悪亜。


で、そこでデーブルです。

何故そこでデーブルがでてくるの?の、疑問なんですが‥‥‥

デーブルに取り憑いていた時の悪亜は、悪亜の行動にはしては度が過ぎていたんです。


まあ、あの休眠していた場所を護りたい気持ちがそうさせたんでしょうけど。


けど‥‥‥それでも、度が過ぎたんです。


で、ここでマーの出番です。

実はマーは過去を少しだけ遡って見る事が出来るそうです。


で、どの位?


「そうだねぇー、二十年前ぐらいは‥‥‥」


で、僕はマーにデーブルを診てもらったら‥‥‥なんと! 悪亜と五百年前の僕の子供の子孫だとわかったんですよ。


何故わかったかって?


マーが見た過去のビジョンの一部を他人に見せる事もマーは可能なんだとか。


で、デーブルの実家にある先祖の肖像画があるんですが、そのビジョンを悪亜に見させると、


「この子は‥‥‥マイ‥‥‥じゃあ、貴方は私の‥‥‥」


悪亜はデーブルの前に立つと、

何か懐かしい感じがしたみたいで、


「‥‥‥貴方を見てると‥‥‥何故かしら?‥‥‥何か、懐かしい様な気持ちになるわ」


そう言うと悪亜はデーブルを優しく抱きしめます。

ノウスは最初はビックリして、硬直してましたが‥‥‥。


「ちょ、ちょっと! ディに何しているんですか!」

顔の頬をプクッと膨らまして、ヤキモチを焼いてますよ。


「ノウス‥‥‥私はいいよ。‥‥‥けど‥‥‥なんだろう? 何か懐かしい感じがする‥‥‥」


「ディ‥‥‥」


デーブルのその言葉にノウスは少し気落ちしてしまいます。


それを見た悪亜は、


「‥‥‥わかったわ、私がデーブルに憑いて変わってしまった理由‥‥‥。そしてノウス、貴女はデーブルの事を心から愛しているのね」


ノウスの方を向いて、優しい‥‥‥そう、母親の様な優しい笑顔でノウスに言った。


悪亜がデーブルに取り憑いて変わってしまった理由‥‥‥それは、

『血』だと。

マイから代々受け継がれた『血』が、そうさせたんだと。


多分、僕はこう思いますよ。


デーブルも悪亜も護りたい‥‥‥その思いが‥‥‥デーブルに流れるマイの、五百年前の僕、光の思いが流れる『血』がそうさせたんじゃないかと‥‥‥。


悪亜は気落ちしているノウスに言います。


「ノウス‥‥‥デーブルの事をお願い出来るかしら?私の血も混じっているけど‥‥‥」


ノウスは悪亜の顔を見ると‥‥‥その顔は子供を思う、まるで‥‥‥優しい笑顔の女神の様に思え、


「貴女は‥‥‥本当に悪魔だったんですか?」


ノウスの問いに悪亜は


「ええ‥‥‥けど‥‥‥悪魔だった頃の記憶なんて、当の昔に忘れたわ」


そして悪亜はもう一度言います。


「ノウス、デーブルの事を頼める?」


と。


ノウスは黙ったまま頷きます。

けどですね、その時のノウスの顔は迷いも何もない‥‥‥ただ純粋にデーブルだけを思う笑顔をしていました。



で、で、で、漸く『ホクトリアの悲劇』を再び起こさない為の作戦会議が話し合いましたよ。


てか、これで本当に間に合うのかあかな?かなあ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る